町田営業所業務日報

地元周辺の鉄道・バス車両について気紛れに綴ります。

消え行く平成の象徴5扉車・東武20050系

2019年06月01日 | 東武鉄道

1990年代に入ると、増加の一途を辿る沿線人口への対応に追われる一方、列車密度や車両数からも限界が見え始めました。その為、1両辺りの扉を増設した多扉車と、扉数はそのままに開口部の幅を拡げたワイドドア車が登場するようになります。前者の多扉車両が初めて登場したのは1990年のことで、営団地下鉄日比谷線の03系で編成の前後を5扉車としたグループが登場し、翌年の1991年にはJR東日本の山手線11両編成化の為、6扉車サハ204が登場、以降は京王6000系にも5扉車編成が加わり、最混雑時間帯に一定の効果を発揮しました。

東武鉄道に5扉車が登場したのは1992年度で、20000系をベースに03系に倣い編成の前後2両を5扉化した構成になりました。車体以外にも制御方式がチョッパ制御からGTOサイリスタを用いたVVVFインバータ制御に変更され、乗客向けサービス機器には車内案内表示・自動放送装置の設置で更に進化した設備を持ち、形式も20050系として区別されるようになっています。これらの変更点は、東上線所属の有楽町線直通対応車9000系にも反映され、1994年の増備車は20050系と同じVVVFインバータ制御の9050系として登場しました。

2番目と4番目のドア横には締切表示を示すランプが確認出来ますが、始発駅では整列乗車の為に車端部と中央の3ヶ所のドアだけを開閉させ、2・4番目のドアは締切扱いにすることも可能にしています。

側面全てがドアだらけな5扉車車内。扉間の窓は戸袋窓を兼ねており、座席は3人掛けを基本にしています。東上線の9050系と同じく座席を茶色系モケットにしたため、若干20000系とはイメージが変化しました。

2010年頃に設置されたLEDによる車内案内表示器。登場からしばらくはSHARP製の液晶画面による案内表示で、当時は大変意欲的な設備でしたが液晶の劣化が早くに進行した為1999年頃には9050系と共に使用停止〜撤去され、長らく紙の広告掲出スペースになっていました。自動放送も2011年までは関東の通勤電車では珍しい男性アナウンサーが担当していましたが、こちらも更新され東武各線でお馴染みの水谷ケイ子さんに交代し英語放送が新たに追加されています。

混雑の激化した平成時代に、一定の成果を示した多扉車ですが、時代が変化し少子高齢化による人口減少やホームドア設置が半ば義務になり始めた現在では、邪魔な存在へと立場が変わってしまいました。他社では廃車にされてしまう形式もありますが、幸いにしてこの20050系は中間車に加え、5扉車両に関しても3扉化・ワンマン対応改造で宇都宮線や南栗橋以北の日光線で再度活躍することが決定しており、既に3扉化改造車の一部は運用を開始して宇都宮線では在来の8000系置き換えを達成しました。間も無く東京都心部からはその姿を消す5扉車ですが、スムーズな旅客輸送に向けて苦心していた平成初期を象徴する車両として記憶に留めて置きたい存在です。

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