相鉄の長年の悲願であった都心直通プロジェクトとして、2019年11月19日に新横浜線の第一期区間である西谷〜羽沢横浜国大間が開通してJR東日本との直通運転を開始したことは記憶に新しい出来事ですが、今後は更に2022年の開通を目指して新横浜駅までの延伸と同時に東急・東京メトロ・東京都交通局への相互直通運転が控えており、また新たな一大ネットワークが形成されようとしています。
直通運転の決定を受けて登場したのがこの20000系で、相鉄ブランドアッププロジェクト発足後の新造車になった為、YOKOHAMA NAVYBLUE塗装で新製された初の車両になりました。また、本形式は日立製作所のA-train規格で製造されており、相鉄では8000系の最終増備編成以来となる久々の日立製作所の車両でもあります。相鉄と日立製作所の関係は深く初の自社開発による高性能電車5000系を発注したことから始まり、初の大型4扉車の6000系ではモハ6021をアルミ試作車とし、その実績を踏まえて後に増備される形式も全て日立製作所製になり、エレベーターやエスカレーター、蛍光灯などもほぼ日立の製品で統一されていた時期もある程でした。なお、8000系と交互に増備されていた9000系が当時の東急車輌に発注されたのは廃車発生品を転用する為、部品を運ぶのに至近距離だったという事情だそうです。
正面はグリルのような飾りが目を引きますが、これは本系列のデザインに関わったアートディレクターの水野学氏が少年時代に見たブルートレインを牽引する機関車にヒントを得て、現代風にアレンジしたとの事です。2022年頃の開通になる東急直通対応車が何故JR直通用の12000系より先に登場したのかですが、JR直通車ではE233系と走行機器を共通化することが決まっていた為、慣らしも兼ねて全く新設計の東急直通車を量産先行車として先に導入する方針になったようです。この斬新なデザインや設備で鉄道友の会より2019年度ローレル賞を相鉄で初めて受賞していますが、都心直通用の新機軸を盛り込み初のローレル賞受賞車両がかつての伝統だった日立製アルミ車両とは不思議な縁ですね。
グレーを基調に高級感と落ち着きを感じさせるデザインに仕立てられた車内。袖仕切りや貫通扉にガラスを多用し、車体幅は2770mmと狭くなったものの開放感もある空間です。照明装置はLEDで時間帯により変化し朝〜日中は白色、夜間は暖色となり車両情報装置Synaptraより自動設定されます。優先席(写真左下に見える赤い座席)はユニバーサルデザインシートで、一般席より座面を若干高くし、手摺りを設置して立ち上がりを容易にしました。戸閉装置はナブテスコが2012年に新開発したROCK☆STARで、半自動機能を備えるこれまた初採用の設備です。新しい設備が目立つ一方で、窓にはカーテンが設置され、相鉄車の伝統だった鏡も復活するなど新旧の設備が入り混じっているのが面白いところ。
車内案内表示・動画広告用の液晶画面は21.5インチのワイドサイズを採用し、ドア上と天井に設置しました。量産車に当たる第2編成から天井のディスプレイは廃止され、代わりにドア上が2画面に変更されました。
今後は新横浜線全通までに10両編成6本、8両編成9本が増備され最終的にトップナンバーを加えた142両の陣容になるとのことで新7000系と8000系・9000系の未更新初期車が順次置き換えられて行きます。独自の色合いが非常に濃かった1980〜1990年代の車両が一部とは言え消えてしまうのは残念ですが、再来年以降大量増備された20000系列が都心を闊歩する日が来ることを楽しみに待ちたいと思います。