音階のような独特の磁励音を発し歌う電車、ドレミファインバーターとして親しまれて来た京急新1000形の1033編成ですが2021年7月20日を以って定期運用を離脱し機器更新のために入場しました。これにて1998年登場の2100形から始まった23年に渡る歌う電車の歴史が幕を閉じました。
最後まで歌う電車として残存した1033編成。以前にも記事にしていますが、この編成は2次車に区分されるグループで1次車と比較すると側面窓が大型ガラスの固定式になり、窓の中央部にあった分割するピラーが廃されているのが特徴です。1次車同様ドイツのシーメンス社が製造したGTOサイリスタによるVVVFインバーター制御装置を搭載していますが、次期増備車(3次車)からは半導体素子がIGBT化された為、音階調の磁励音を発する最後のグループになりました。
シーメンス社のVVVFは踏襲しつつ半導体素子と機器構成を大幅に見直した3次車。1・2次車では8両が4M4T、4両が2M2Tでしたが空転・滑走対策として6M2T、3M1Tに変更されている他、2004年12月より国土交通省の地下鉄道の火災対策が改正された為それらの基準にも対応しています。ドレミファ音階は聞かれなくなりましたが、日本国内のメーカー製品では聞かれない甲高い独特な磁励音を発します。これらもアフターサービス終了に伴い順次国内生産品に換装が計画されており、シーメンスの制御装置は近い内に消滅する見込みです。
線内普通列車や快特の増結、4両+4両で羽田空港〜逗子・葉山間のエアポート急行に使用される4両編成。GTO-VVVFの1・2次車と併結した際は音階調のドレミ音と慌ただしく変化するIGBTによる音が混じり合い独特なハーモニーを奏でました。
ロングシート主体で車端部をボックスシートにした車内。扉間の座席には珍しく中仕切りを備え、ピラーの無い大きな窓と相まって少々贅沢さすら感じさせます。
独特なサウンドで鉄道マニア以外からも注目されメディア露出も多く、ロックバンド「くるり」の赤い電車の歌詞の一節にもなるなど平成時代の京急を象徴する存在でしたが、遂に今年7月に幕引きとなりました。今後は同じく歌わないIGBT-VVVF制御装置の国内生産品への換装が進められると思いますが、こうした車両が活躍した事はずっと記憶に留めておきたいですね。