かつて江ノ電には、現在の東急世田谷線の前身である玉川線で長年主流だったデハ80形電車を譲受し改造した600形が4両在籍していました。現在も世田谷線宮の坂駅前に保存車があることや、江ノ電の併用軌道区間にある和菓子の扇屋に前頭部が据えられている為、若い世代でも比較的馴染み深い存在かと思われますが、老朽化が進み他形式との連結運転が不可能で弾力的な運用が組めなくなっていた600形の代替の為に1990年に登場したのが2000形電車で、同形式の登場により在籍する全ての旅客車両が相互に併結可能な連接車になりました。
3編成が在籍する内、先陣を切って登場した2001編成。1000形グループのリニューアル完了後は2000形にも及ぶことになり、現在は3編成全てが施行済みで登場時とは大幅に印象を変えています。主要な走行機器は1501編成で採用したものを踏襲していますが眺望を考慮し拡大した正面・側面窓に加えて、乗客向けにはドア上には営団01系・02系に類似した路線図式車内案内表示や、初代500形以来となる自動放送装置(テープ式)も搭載され、登場〜営業運転開始した1990年度グッドデザイン賞を受賞しています。
江ノ電のスターと化した古豪の305編成と併結運転中の姿。1000形のリニューアル時には菱形パンタからシングルアームパンタへの換装が実施されましたが、2000形にもこれが及び唯一の下枠交差形を搭載する編成でしたが、リニューアル工事でシングルアーム化され特徴が失われてしまいました。これで、菱形の形状のパンタを搭載する編成は300形305編成のみとなっています。なお正面の行先表示は窓下部分に幕式を設置していましたが、リニューアルで1000形グループと同じフルカラーLED式表示を上部に設置しました。新年の挨拶や花など様々な内容を表示出来るのは周知の通りですが、下の写真でも分かるように最近は300形と高徳院の大仏様の顔を季節の花などのイラストと交互表示しているようで、遊び心たっぷりの演出には脱帽です。
車内の様子。扉の幅は他形式が1000mm幅に対し、通勤電車の片開きドアとしては標準的な1200mmに拡大されています。車端部はボックスシートを配置していましたが、混雑緩和の為にリニューアルで撤去され、オールロングシート化し座席モケットは“えのんくん”の柄が入った青になりました。化粧板や床材も新品に交換され、新型車と見間違う雰囲気です。
路線図式案内表示に代わり新設された液晶画面。他社で標準的な17インチより僅かに大きい17.5インチです。多言語表示も行っており、情報量が格段に向上しました。陳腐化・劣化も無く、大規模なリニューアル工事も施行されたことから今後も主力として長きに渡り活躍するでしょう。