1994年、113系グループ置き換え用の新系列近郊型電車として登場以来、長らく横須賀線〜総武線快速の主力車両だったE217系は2020年よりE235系1000番台の導入で置き換えられる事になっており、同系は既に2021年4月現在では基本編成11両9本・付属編成4両10本が新製配置されました。引き換えに運用離脱〜廃車となる編成が続出し、離脱した編成は長野総合車両センター、東京総合車両センターで順次解体されています。京浜東北線に導入されていた209系をベースにした平成生まれの新系列電車第一世代ですが、209系の時のように他線への転用改造はなく全編成が廃車になる見込みです。
総武本線の複々線区間を走行するE217系。本形式が登場するまでは、首都圏でも通勤型は4扉車、近郊型は3扉と明確に分かれていました。しかし、混雑が激しい首都圏に於いての運用状況を踏まえて2950ミリの幅広車体に4扉と、通勤型に近いスタイルで登場します。ここで後のE231系とそれ以降に続く一般形電車の仕様の基礎が出来上がり、また中距離路線では初となる4ドア車15両運転を実施することになりました。手前から付属編成4両+グリーン車組み込み基本編成11両の組み合わせは逗子駅の留置線の関係によるものです。
内房線快速で君津までロングランするE217系。横須賀線〜総武線快速での運用が中心ですが、総武本線千葉〜成東間や成田線香取・成田空港方面、内房線君津と外房線上総一ノ宮まで広範囲に足を伸ばします。かつては2001年〜2004年まで湘南新宿ラインの新宿〜横須賀線系統の列車の他、2006年〜2015年には帯を湘南色に改め編成を10両+5両に組み替えた上で東海道本線東京〜熱海間で運用された事もありました。2007〜2012年に掛けて機器更新が実施され、GTOサイリスタによるVVVF制御装置SC41BからIGBT素子のSC89型に換装し磁励音が変わった他、補助電源装置と保安装置、戸閉装置も交換され外装は横須賀色の帯から青色を明るくし正面のロゴマークも変更した為、外観の印象も変化を見せました。強化型スカートへの換装は2009年より機器更新に関係無く施工しています。
ボリューム感のあるフロントマスクが顔を突き合わせる基本編成と付属編成の連結部。正面の貫通扉は錦糸町〜品川間の地下区間の為に設置されましたが、法令改正で設置基準が緩和され後期車からは非貫通化され筋彫りだけが残されています。また、高運転台・衝撃吸収構造の乗務員室周りは新系列電車の標準設計になりました。
編成内で主体となるロングシート仕様の車内。通勤型と近郊型との境界が曖昧になり、次期新系列のE231系からは一般型電車という区分になりました。側面窓は3分割で真ん中が開閉式の構造ですが、後期に製造された基本編成は2分割になり中央部を固定式としています。ドアチャイムとLED表示器はベースになった209系から踏襲しました。
JR東日本では初の登場となる4扉セミクロスシート仕様の車内。観光輸送を想定して設けられた設備ですが、設計に当たり相鉄8000系・9000系のレイアウトを参考にしたのは有名ですね。
回転式リクライニングシートが並ぶグリーン車車内(2階席)。当初はグレー系のモケットでしたが、E231系のグリーン車と同じモケットに交換され、1階と2階で色が違っています。
赤系モケットが並ぶ1階席。座席は全て壁面側から支える片持ち式です。2006年より全座席の荷物棚にはグリーン車Suicaシステムに対応する為、読み取り部も新設されました。
首都圏に於ける4扉化が推進される中で登場した第一世代のE217系ですが、後のE231系に続く一般型電車の基本構造を確立した他、ダブルデッカー型グリーン車はJR四国5000系マリンライナーのパノラマグリーン車のベースになるなど、他社にも影響を与え、やや地味ながらも大変画期的な車両でした。
一時期、205系を始めとした日本製車両が活躍するインドネシア・ジャカルタへの譲渡計画が持ち上がったものの、残念ながら予算の都合やグリーン車の車両限界で立ち消えになってしまい、今後は全車廃車になって行くものと思いますが、現在の千葉支社管内にはこのE217系の他、209系(2100番台・500番台)・E231系(0・500番台)・E233系(5000番台)・E235系(1000番台)・E131系と、第一世代から最新世代の新系列電車が共存しています。最後の活躍を見せるE217系の記録と共に、新系列電車の進化の過程を乗車・撮影を通して体感するのも一興ではないでしょうか。