町田営業所業務日報

地元周辺の鉄道・バス車両について気紛れに綴ります。

首都圏と甲斐・信濃を結ぶ俊足ランナー、JR東日本E353系

2023年02月21日 | JR東日本

中央本線の特急「あずさ」「かいじ」では、長らく国鉄時代からの183189系が充当されて来ましたが、JR東日本発足後の1994123日から競合する高速バス路線に対抗すべく開発された振り子式機構を備えるE351系を充当する「スーパーあずさ」が新設され、2001121日からは183189系を完全に置き換えるべくE257系が停車駅の多い「あずさ」「かいじ」で運転を開始し、長らくこの2形式による体制が続きました。しかしE351系の老朽化による代替とE257系の東海道本線への転用が計画され2014年度にE353系の導入が発表、2015725日に量産先行車が落成し2017年まで約2年余りの各種性能試験を実施し同年1223日より定期の営業運転を開始しました。2019316日ダイヤ改正で「あずさ」「かいじ」の全列車がE353系で統一され、同時にスーパーあずさの愛称は廃止されましたが、先代E351系に続いて車体傾斜機構を備えており、山岳地帯を走行しながら新宿〜松本間の225.1キロを2時間半で走破する列車が設定されています。

未来的なフォルムが目を引くE353系。外観デザインは「伝統の継承」「未来への躍動」をコンセプトにしており、アルミニウム合金製車体に特徴的な先頭部はFRP成形品を組み合わせ、基本9両編成のクハE353-0と付属3両編成のクモハE352-0は貫通構造で自動幌装置を搭載し連結時は車両間の移動を可能にしました。カラーリングは前頭部にストリームブラック、南アルプスの雪を表すアルパインホワイト地に、あずさ号のイメージカラーであるバイオレットの細帯、窓周りには松本城の青味がかった黒をイメージしたキャッスルグレーを配しています。先述のように車体傾斜機構を搭載していますが、先代E351系が制御付き自然振り子装置だったのに対して空気バネへ圧縮空気を吸排気して車体を傾斜させる方式に改められています。

写真は何も基本編成のみの身軽な運用ですが、9両+3両での12両編成での運転もあり、特に20181214日からは3両編成が富士急行線河口湖まで定期で直通する「富士回遊」が設定され、新宿〜大月間は「あずさ・かいじ」と併結し、大月駅で分割併合を行うなど機動性をフルに発揮した運用に就いています。

普通車車内。右に見えるのは大型荷物置き場のパーテーションです。インテリアは「活動的で明るい寒色」をコンセプトにしたグレー系に座席は沿線を流れる梓川の清らかな水面をイメージしたブルー系パターンが盛り込まれました。

グリーン車車内。車椅子対応座席以外はシートピッチを拡大して2列+2列の設置になっています。天井や妻面に配された赤色は沿線の特産品である葡萄の色をイメージしているとのこと。

瞬く間に中央本線の特急列車を全て置き換え主力に躍り出たE353系ですが、2023320日より新設される塩尻〜松本〜長野間の特急「信州」にも充当されることが発表され、地方都市間を結ぶ特急にも進出することになりました。今後とも長く主力車両として活躍が見られそうです。

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東西線初の量産型VVVF編成、05系6・7次車

2023年02月19日 | 首都圏の地下鉄

1988年より営団地下鉄(東京メトロ)東西線の主力として増備が続いた05系は、4次車の最終増備分からドア幅を拡大したワイドドア仕様になり外観に大きな変化が生じましたが、67次車である1924編成では再び通常の1300mm扉に戻されました。しかし6次車では千代田線の06系・有楽町線(当時)07系同様に座席配置が4-6-7-6-4人掛けになり、窓割が不均等になった他、電動車がユニットを組まない1M方式に変更されました。メカニズム面ではIGBT素子を用いたVVVFインバーター制御装置を本格採用するなど先頭部形状は在来の編成と同一の形態ながら中身は別物と言える仕様になりました。2018年からはB修繕工事が開始されています。

6次車に当たる0521編成。67次車の中では一番最初にB修繕が20189月〜20194月に掛けて施行され、運用復帰は73日のことでした。工事内容は主電動機のPMSM(永久磁石同期電動機)化とそれに対応するVVVFインバーター制御装置への更新、外観の帯色配置変更、先頭車へのスカート新設、行先表示のフルカラーLEDへの換装、灯火類のLED化など非常に多岐に渡ります。更新後は千代田線向けの16000系に近い性能になり、制御装置が発する磁励音も同一となりました。

行先表示には直通先の路線名を表示するようになりました。外観の印象がかなり変化し、最新世代の走行機器で固められる一方で、屋根状の集電装置はシングルアーム化されず旧来の菱形を継続使用しているのが面白いところです。

修繕により白系の化粧板に更新され明るさが増した車内。バリアフリー対応の為、車椅子・ベビーカー利用者の為のフリースペース新設や袖仕切り大型化、更にドア上のLED表示の液晶画面化で令和世代の車両と比較しても遜色ない設備になりました。しかし座席が片持ち式ではなく蹴込板が存在する構造のままなど、時代を感じる部分も見受けられます。

ドア上の液晶画面は、もうすっかり首都圏で御馴染みの扉開閉表示灯を備えた17インチ画面の三菱電機セサミクロを採用し情報量が格段に向上しました。セキリュティ面から防犯カメラも併設されています。

現在はアルミリサイクルカーの24編成が未だ修繕を受けていないのが少々気になりますが、しばらくの間は安定した活躍を見せることと思います。

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廃車が進行する新常磐交通の元小田急7Eボディー車

2023年02月07日 | 東北地方の地下鉄・路線バス

2006(平成18)年より導入されるようになった新常磐交通の元小田急車両ですが、当初は富士重工17E(通称7E)ボディー+いすゞ自動車製シャーシのU-LV324Lと高出力エンジン搭載のU-LV318Lが移籍し非冷房モノコック車を置き換え大幅なサービス向上に貢献しました。その後は大型ノンステップバスのいすゞエルガとその中型車であるエルガミオ、更に導入例が無かった三菱ふそうノンステップ車も加わり全国でも類を見ない程に小田急車が勢力を誇っていました。しかし、小田急バスの方針転換で置き換えサイクルが17年程度に伸びた為、廃車のペースが緩くなり現在は都営バスからの移籍車も幅を利かせるようになり、元小田急バスの7Eボディー車の廃車が進められています。今回は、福島県いわき市に鎮座する金刀比羅神社の例大祭に伴い運行される湯本駅〜21世紀の森公園間シャトルバス運用に就く元小田急7Eの姿を捉えました。

新常磐交通の中でも異彩を放つニューステップ仕様のいわき200243。こちらも元は武蔵境に在籍していたC8168です。1995年式で、前扉〜中扉付近までをワンステップ仕様とし、中扉はグライドスライド方式で可動式ステップ(現在は機能停止)を搭載するなど、小田急バスの低床化・バリアフリー化の先駆車とも言える存在でした。

元小田急バス7Eの中では唯一福島ナンバーとなっている福島200914。小田急時代はC8162(元武蔵境車)でした。北営業所原町車庫に在籍していましたが東日本大震災の影響で原町車庫が閉鎖された関係で、いわき中央営業所に転属し、いわき市内の路線に充当されるようになりました。

湯本駅から戻って来たいわき200243を非公式側から。反対側から見ると通常のツーステップ仕様車と特に変わりはありません。駐停車中に自動でエンジンを停止させるアイドリングストップ機構も本車が最初で、小田急時代はリア窓に「環境に優しいアイドリングストップバス」の文言が表記されていました。特殊な機構が嫌われたのか、このタイプは移籍が少数に留まり、西日本に偏っており(高出力仕様車の旧生田・町田車が九州産交バス・松江市交通局への移籍例があるのみ)東日本で現存する唯一の事例です。本来は定期路線バスが走らない区間で撮影出来たのは大きな収穫になりました。

中扉までをワンステップエリアとした独特な車内設備。小田急在籍時は中扉の窓と正面にハートマークと家族のシルエットのイラストに「乗り降りが楽なニューステップバス・環境に優しいアイドリングストップバス」と表記した円形ステッカーが貼られ、乗客にもアピールしていました。

登場から28年目に入り、既にメーカーによるアフターケアが打ち切られた現在も、こうした特殊な車両が稼働しているのは奇跡的なことですが、いよいよその活躍も最終ステージに入ろうとしています。恐らく自社発注車とは違い保存されることは無いと思いますが、乗ることも見ることも出来なくなる前に記録・乗車を楽しんでおきたいですね。

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京急最後の白い細帯を纏う1500形・VVVF編成も置き換え開始へ

2023年02月05日 | 京浜急行電鉄

2019年3月、標準塗装で最後まで残存していた800形827編成が運用離脱し、長年標準塗装だった赤い車体に白の細帯を纏う塗装は1500形のみとなってしまいました。同時に京急最古参車両となり、2021年には新1000形による置き換えも正式発表され普通鋼製車体・界磁チョッパ制御の4両編成から廃車が始まりましたが、2023年度からは14両の廃車計画(6両編成1本・4両編成2本と思われます)が明らかになっており、VVVFインバーター制御編成の置き換えも開始されることになりました。

エアポート急行で運用中の1500形アルミ車(駅名改称前に撮影)。6両編成は現在全編成がVVVFインバータ制御ですが、元々は界磁チョッパ制御の8両・4両の編成として製造されたものが2代目1000形の導入開始で不足していた6両編成に組み替えられることになり登場しました。全電動車編成と4M2T編成の2種類の組成がありましたが、性能向上の為に2006年からIGBT素子を用いたVVVFインバーター制御に改造され、現在に至ります。その後1600番台の電動車を1500番台に改番を実施した為、非常に複雑な組み替え工事になりました。写真は旧1619編成を改番した1573編成で、三菱電機のVVVFインバーター制御装置を搭載しています。

1600番台の車号は新1000形6両編成に充てる為、2013年から改番が開始され、2016年8月の旧1625編成→1577編成を最後に完了しました。写真は逗子・葉山駅に改称後に撮影した1581編成で、改番前は1631編成を名乗っていました。こちらは東洋電機のVVVFインバーター制御装置で、発する磁励音が異なっています。

末期になると大師線専用車になっていた感がある界磁チョッパ制御・普通鋼製車4両編成。登場当初は戸袋窓を設けていましたが、アルミ車に合わせて閉鎖され差異が小さくなりました。若干丸みを帯びている正面が識別点です。
鋼製車は先述の通り120キロ運転対応改造を受けていない為、ほぼ大師線か、ごく稀に本線普通列車で運用されますがアルミ車体の4両編成は優等列車の増結にも使用され、1000形初期車と組んだ異形式8両編成でエアポート急行運用に就いた姿も確認されています。写真の1505編成は2022年3月15日に久里浜工場へ回送され、廃車となりました。

2001年からの更新改造でクリーム系の配色にバケットタイプの座席になった車内。写真はアルミ車編成で、乗務員室直後の2人掛け座席以外は片持ち式に改造されていますが、普通鋼製車では通常タイプのままシート交換・袖仕切設置を行った為、座席の下に蹴込みがあり容易に識別可能です。改造VVVF車は主電動機点検蓋は必要無くなったものの、写真のように埋められず残されました。ドア上には更新時に2100形が以前設置していたのと同じLED表示器とドアチャイムを設置しましたが、チャイムの導入は京急の車両ではこれが初めての事例でした。

各種改造のお陰で新1000形と遜色無い水準の1500形ですが、既に登場から38年の月日が経過し、アルミ車両も35年、VVVFインバーター制御の1700番台車は更新を受けないまま31年(1990年度導入の1701編成は事故廃車済み)も走り続けており、遂に本格的な置き換えが始まることになりました。他方で、京急から多数の車両譲渡を受けている高松琴平電気鉄道では2024年からバリアフリー対応車両を導入する計画を発表しており、それがこの1500形になるのか今後が非常に気になるところです。

※2019年の記事を加筆

 

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