1990年以降、上毛電気鉄道では親会社である東武鉄道から3000系を譲受し300型として運用していました。その後、3050系改造の350型が加わり300型を置き換えますが、これら両形式は昭和初期に製造された車両に対し、後に登場した新形式との設備の格差を改善する目的で登場した機器流用車でした。そのため車体は比較的新しい一方、走行機器は旧来の吊り掛け駆動方式のままで1990年時点でも老朽化が進行しており、台車にも荷重制限があり冷房化も不可能となっていたためサービス改善上や保守面からも問題になっていました。そこで導入されることになったのが1996年より廃車が始まっていた京王3000系で、1998年より700型として2両編成8本を導入し元東武鉄道の350型を置き換え、2000年からはワンマン運転を開始しています。
上電初の高性能車で冷房車となった700型。Mc+Tcの2両編成を組成しますが、当時3000系は北陸鉄道・岳南鉄道へも譲渡されていたため、元々の先頭車に京王6000系抵抗制御車の廃車発生品を組み合わせて電装化した編成(711〜714編成・718編成)と、中間車のデハ3000・3050+デハ3100に先頭車化改造を実施し種車の機器を活用(715〜717編成)したグループがあり、正面の7色のカラーマスクは種車の色に関係なくフィヨルドグリーン塗装とされました。マスコンは京王5000系や都営地下鉄車の廃車発生品を用いています。
2005年11月からは711F以外の編成に対しカラーマスクの塗装変更が実施され、8編成全てが異なる色になり京王井の頭線時代同様にレインボーカラーと称されるようになり(ただし京王時代と色は違います)、完成時には記念乗車券も販売されました。写真は712編成のロイヤルブルーで、群馬県みどり市に本社を置く株式会社スナガのラッピング電車とされ車体に同社のマスコットキャラクター「コップン」が配されています。
フェニックスレッドの713編成は2020年4月より群馬ディスティネーションキャンペーンが実施され、群馬県のマスコットキャラクターを「ぐんまちゃん列車」に抜擢されました。ラッピング編成はイラストを描くだけでなく、京王時代は急行板を掲げていた位置にヘッドマークを掲出しています。
サンライトイエローの714編成。当初は塗装変更のみでしたが、群馬県内に展開する不動産会社であるオネスティー石田屋の協賛で「走る水族館」になり、正面のみならず車内にも海をイメージしたラッピングを施工しており、海洋生物の紹介もされている楽しいデザインです。上電ではたびたび季節に合わせたイベント列車が運転されますが、通年運用されるラッピング車では一番気合いが入った編成と言えるでしょう。
クリーム色の化粧板と臙脂色の座席の組み合わせで京王井の頭線時代の雰囲気を色濃く残している車内。登場時は非冷房車であった為、天井には送風装置としてファンデリアが設置され、改造で冷房を新設した後も残存しているのが特徴です。一番前寄りの座席はワンマン運転で料金機を設置するため、撤去されました。近年は座席シートモケットを交換した編成も出ています。
さすがに新造から50年、改造からも26年が経過し老朽化も進行していることから置き換え計画が立てられており、03系改造の800形を導入し3編成を置き換える予定で最初にパステルブルーの716編成が離脱しています。他社譲渡分の元3000系も置き換えが発表されている為、東京から一番近いところを走り京王時代の面影も濃い700型の活躍を末永く期待したいですね。