秩父鉄道では吊り掛け駆動方式の旧性能車を置き換える為、日本国有鉄道(1987年3月よりJR東日本)より1986年から1989年に掛けて101系電車の譲渡を受け1000系として運用していました。国鉄が製造したカルダン駆動方式の通勤型電車が譲渡されるのは比較的珍しい事例で、3両編成12本を組成するため36両が渡り秩父鉄道の主力車両として運用されましたが2000年代末期になると車齢が40年を超え老朽化が目立つようになり、東急電鉄で廃車が始まった8090系により置き換えを進めることになりました。いずれも大井町線で運用されていた5両編成の内、1・4・5号車で構成される3両編成7本が7500系として導入され、新たな主力車両になっています。
東急時代の赤い帯から側面を緑帯、正面を緑と黄色のグラデーション帯に改めて印象が変わった8090改め7500系。本形式は航空機の強度解析で使用される有限要素法を用いたコンピューターによる設計で、車体強度を保ちながら1両当たりの重量を約2トンも軽量化しており、日本が独自開発した初の量産軽量ステンレス車とされる画期的な車両です。東急時代の1980年〜1988年頃までは東横線急行用に使用され、その後みなとみらい線直通を見据えた電動車比率向上の為に先頭車を非常用貫通扉を備える電動車化するためデハ8590が登場し編成組み換えが発生、非貫通正面の8090系は5両編成に統一され大井町線に集約されました。その大井町線にも副都心線直通を控えATOに対応できなくなった9000系が東横線より続々と転入し8090系の廃車が開始、秩父鉄道入りが実現することになりました。
長らく通常の緑帯仕様で運用が続きましたが、現在は沿線の観光資源PRのため3両編成7本のうち5本がフルラッピングされており、写真のオリジナル緑帯を見る機会は少なくなっています。写真の7506Fは1982年製造の8095Fは8000系13次車に当たる編成をベースにしており、前照灯の位置が低くなっているのが特徴です。
東急で運用されていた頃の面影が色濃く残る車内。連結面は三峰口寄りに両開き扉を備えた広幅貫通路を備えていますが、風の吹き抜けを防止するため羽生寄りにも片開きの狭幅貫通扉を追加で設置しています。
ドア上にはLEDスクロール式の車内案内表示器とチャイム、扉開閉表示灯を設置している他、寒冷地を走行するため車内保温対策として半自動機能も追加されました。
ついこの間来たような感覚が抜けませんが、秩父鉄道に来てから既に14年の歳月が経過してしまいました。本家の東急からは既に8000系列は全て引退し、部品の枯渇が問題になり始めている事や長野電鉄もメカニズムが殆ど同じ元東急田園都市線の8500系置き換えを表明、伊豆急行も8000系に代わる車両の導入を示していることから本形式も安泰とは言えず、近いうちに代替が表明されるか注目ですね。
※2024年6月の記事を修正・写真差し替え