町田営業所業務日報

地元周辺の鉄道・バス車両について気紛れに綴ります。

伝統復活へ向けての序章・・・京急1000形15次車・16次車

2024年03月17日 | 京浜急行電鉄

2007年より1000形ステンレス車の増備を開始してから8年目となる2015年には、15次車として6両と4両が2編成ずつ落成しました。この内の6両編成である1367編成は、車体はそのまま東芝製の永久磁石同期同期電動機(PSMS)を採用、4両編成は2本を併結した8両で都営浅草線直通を可能にするべく、正面中央に常用貫通路を設置する構造に設計変更されるなど、特異な仕様の編成として異彩を放っています。4両編成では、貫通式正面だけではなく、伝統的な赤い電車のイメージを持たせるべくカラーフィルムで紅白塗装を再現し、翌年の16次車にも反映されることとなりました。

4両編成単独で本線普通列車運用に充当中の15次車。紅白の塗装をフィルムで再現しています。丸みのある通常の1000形ステンレス車と比べると、平面的な正面スタイルが特徴で、別形式のようにも見えます。8両編成が重要部検査などの理由で不足した際など、フレキシブルな運用を実現出来るように設計され、実際に貫通路と幌を使用した2編成併結の8両で浅草線直通の他、成田スカイアクセス線の運用にも入りました。しかし、あくまで予備車ということか普段は単独で写真の普通列車や、12両快特の増結と浅草線には直通しない新逗子〜羽田空港間のエアポート急行などの運用が主体のようです。

本線特急に充当される16次車8両編成。塗装車体の17次車と比較すると、ドア周辺や窓枠などに銀の地肌が現れており、一目で判別出来ます。東京メトロなどはアルミ車体に同じ技法で昔の車両の塗装を再現しており、京急もその流れを汲んで16次車のスタイルが主流になるかと思いましたが、結局は伝統を重視し塗装車体を復活させたことには非常に驚きました。

15次車の車内は基本的に既存の無塗装ステンレス車を踏襲しており、オールロングシート配置にステンレス製ドアの仕様を受け継いでいます。変更点は主に乗務員室周り(非常用梯子の設置スペースを客室内側に確保したため旅客の店員が2名減少、仕切り扉を引き戸式に変更)に集中しており写真では変化が分からないですね(残念ながらこの日は先頭車に人がおり撮影が出来ませんでした…)

16次車車内設備。この編成から車端部ボックスシートや化粧板仕上げのドアが復活して、簡素(実際はそれなりのコストが掛かってますが)な印象があった15次車(15次車まではロングシートにメーカー標準品のステンレスドア)までの印象が払拭されました。17次車とは座席端の袖仕切にある透明な部分の形状が僅かに違い、液晶画面も通常の17インチ画面を2台と1台+紙の路線図の千鳥配置になっている点が異なります。

今や関東大手私鉄も標準化が進行して没個性化とも言われることが多くなりましたが、限られた制約の中で個性と伝統を守ろうとする姿勢は高く評価したいですね。

※2019年の記事を修正

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幸せを呼ぶ黄色い電車・京急1000形YELLOW HAPPY TRAIN

2024年01月01日 | 京浜急行電鉄

明けましておめでとうございます、2024年も鉄道界が明るい話題で盛り上がることをお祈り申し上げます。新年の記事一発目は京急から始めます。

京急では黄色い車体の電動貨車を保有しており、限られた区間での運転でダイヤも非公開ながら赤い車体に白の帯の旅客車両の中で一際目立つことから珍車として密かな人気を集めていました。その人気を受け、10001057編成に黄色塗装を施しKEIKYU YELLOW HAPPY TRAINとして201451日より運転を開始しました。既に運転開始から9年余りが経過していたKEIKYU BLUE SKY TRAINと共に、赤い車体の電車が大半の京急の車両群の中では文字通り異色の存在として現在も活躍しています。

全身が黄色くなった1057編成は2005年度増備の4次車で、SIMENS社の制御装置ながら半導体素子をIGBT化して音階は鳴らないタイプ(現在は東洋電機製に機器更新済み)になった他、行先表示に白色LED、種別表示にフルカラーLEDを本格採用しました。運用範囲は非常に広く、都営浅草線を始め京成本線・北総鉄道(成田スカイアクセス線)への乗り入れも行なっていますが、一日の運用は京急の公式HPで公開されており、姿を見ることはそれ程難しくはありません。

登場当初はドア部が銀色塗装であったことから、西武鉄道の通勤車両に類似した外観の為に両社のコラボレーション企画も実現しました。また2014年から3年程度の運転とされていましたが、好評につき期限を定めず運転を継続することなり現在の装いになったのは2017429日からのことでした。

制御装置は更新されましまが、車内設備は車内案内表示器の液晶画面化に留まっています。黄色で目立つ為か統一広告電車に起用される機会が多いようです。

換装された液晶画面は動画広告用は無く、全てが路線図や駅の構内案内図を表示するようになっており、情報量がLED表示に比べて大幅に向上しています。換装は比較的早期に行われ現在アルミ車体の1000形は全てこのタイプに改められました。

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歌わなくなって久しい京急新1000形(車体更新車)

2023年07月23日 | 京浜急行電鉄

マイナーチェンジを繰り返し現在は1500形の置き換え用として更に増備が続く新1000形ですが、かつては2100形と共に特徴的な音階調の磁励音を発するドイツ・SIMENS社製VVVFインバーター制御装置を搭載し「歌う電車」として知られるようになった初期製造の12次車から更新工事が実施されるようになり、2017917日には更新第一陣となった1001編成が公開されました。内容としては車内の化粧板・袖仕切りなど内装材の交換の他、固定式となっていた先頭車両乗務員室寄り・車端部の窓の開閉式化、屋上換気扇廃止と冷房装置更新などで外観にも変化が生じた他VVVFインバーター制御装置を三菱電機・東洋電機製造・東芝の国内生産品へ更新しており、形態差が非常に多い新1000形に更なるバリエーションが生まれています。

一番最初に更新を受けたトップナンバーの1001編成。報道公開を2017917日に実施し、営業運転には翌18日に復帰しました。この編成は三菱電機製の制御装置に換装され、16次車1177編成同様フルSiCを素子に用いたVVVF制御(MAP-194-15V296)となっています。更新前は都営浅草線・京成線・北総線への直通運用にも就いていましたが、更新後は何故か地上専用車扱いとなってしまい逗子・葉山〜羽田空港間のエアポート急行や朝夕の品川発着の列車で運用されています。

東洋電機製造IGBT-VVVFインバーター制御装置(RG6008-B-M)に換装された1009編成。2編成目となる更新車で、早くも形態差が生じることになりました。制御装置外観は2100形と酷似しており、磁励音も殆ど同じです。2019222日の出場以降、営業運転は線内運用に留まっていましたが、一ヵ月後の322日より直通運用に復帰しました。同一形式内で何故このような差が出来たのかは謎のままです。

ホームドアが設置されていなかった頃の京急川崎駅で、更新を受けたばかりの1次車とIGBT素子による歌わないSIMENS(既に更新で消滅)を搭載していた3次車イエローハッピートレイン、奥には6次車以降のステンレス車と3世代の並びです。

更新工事後の車内設備。化粧板や床材が新品に交換され、座席の袖仕切りがガラス入りの17次車に準じたものになり、やや明るい雰囲気になりました。急ぐ必要性が薄い為か、更新のペースはゆっくりですが、ゆくゆくはアルミ車全編成に及ぶのでしょうね。

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京急初のデュアルシート装備編成・新1000形1890番台(20次車)

2023年05月07日 | 京浜急行電鉄

設計変更を繰り返しながら増備が続いている2代目京急1000形は2020年度にも4両編成2本の8両が増備されますが、この編成は座席指定列車と貸切列車での運用を想定し、京急では初となるデュアルシートと中間車にトイレ設備(品川寄りサハ1000に車椅子対応型、浦賀寄りサハ1000に小用トイレをそれぞれ設置)を採用しています。この編成は愛称を一般公募しており、運用開始後の20211224日にフランス語で空を意味する「Le Ciel(ル・シエル)」と名付けられました。これは三浦半島や羽田空港の空を想起させることや、かつての週末行楽特急ラ・メール号(フランス語で海の意)への敬意を込めての命名とのことです。2022526日には、鉄道友の会よりブルーリボン賞を受賞し、2000形以来39年振りで2回目の受賞となりました。

設計のベースになった15次車と併結しエアポート急行の運用に就く1895編成。正面形状は常用貫通扉を備えた15次車を基本にする一方で、車体は雨樋が外に出ない滑らかな断面形状とされました。当初の目的通り団体臨時列車にも使用されますが、現在は平日のモーニング・ウィング号と他形式4両と併結した8両での土日祝日のエアポート急行がメインの運用になっています。

休日限定のエアポート急行運用時は常に浦賀寄りに連結位置を固定しており、貫通路を備えた15次車と連結する際も貫通幌は使用されません。日によっては1000形グループの他に600形や15004両との併結シーンも見られます。

ロングシートモードの車内。デュアルシート装備車ではありますが、クロスシートモードでの定期運用は平日のモーニング・ウィング号のみに留まっています。両先頭車は2007年のステンレス車から途絶えていた乗務員室後部の座席が復活し合わせて圧迫感を軽減する為に非常に細い側窓が設けられ話題を呼びました。

ドア上には1719次車と同一の左右一体型液晶画面と開く側の扉を示すランプを設置。クロスシート時を考慮して天井や妻面貫通扉上に設置しても良さそうですが、ロングシートモードでの運用が中心なのでドア上のみで十分用が足りているようですね。

現在は45本で定期運用も2100形の増結と停車駅の多い休日のエアポート急行の運用に留まっていますが、今後更に増備が開始されれば泉岳寺発着の快特や他社線への進出の可能性もあり、今後が非常に楽しみです。

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京急最後の白い細帯を纏う1500形・VVVF編成も置き換え開始へ

2023年02月05日 | 京浜急行電鉄

2019年3月、標準塗装で最後まで残存していた800形827編成が運用離脱し、長年標準塗装だった赤い車体に白の細帯を纏う塗装は1500形のみとなってしまいました。同時に京急最古参車両となり、2021年には新1000形による置き換えも正式発表され普通鋼製車体・界磁チョッパ制御の4両編成から廃車が始まりましたが、2023年度からは14両の廃車計画(6両編成1本・4両編成2本と思われます)が明らかになっており、VVVFインバーター制御編成の置き換えも開始されることになりました。

エアポート急行で運用中の1500形アルミ車(駅名改称前に撮影)。6両編成は現在全編成がVVVFインバータ制御ですが、元々は界磁チョッパ制御の8両・4両の編成として製造されたものが2代目1000形の導入開始で不足していた6両編成に組み替えられることになり登場しました。全電動車編成と4M2T編成の2種類の組成がありましたが、性能向上の為に2006年からIGBT素子を用いたVVVFインバーター制御に改造され、現在に至ります。その後1600番台の電動車を1500番台に改番を実施した為、非常に複雑な組み替え工事になりました。写真は旧1619編成を改番した1573編成で、三菱電機のVVVFインバーター制御装置を搭載しています。

1600番台の車号は新1000形6両編成に充てる為、2013年から改番が開始され、2016年8月の旧1625編成→1577編成を最後に完了しました。写真は逗子・葉山駅に改称後に撮影した1581編成で、改番前は1631編成を名乗っていました。こちらは東洋電機のVVVFインバーター制御装置で、発する磁励音が異なっています。

末期になると大師線専用車になっていた感がある界磁チョッパ制御・普通鋼製車4両編成。登場当初は戸袋窓を設けていましたが、アルミ車に合わせて閉鎖され差異が小さくなりました。若干丸みを帯びている正面が識別点です。
鋼製車は先述の通り120キロ運転対応改造を受けていない為、ほぼ大師線か、ごく稀に本線普通列車で運用されますがアルミ車体の4両編成は優等列車の増結にも使用され、1000形初期車と組んだ異形式8両編成でエアポート急行運用に就いた姿も確認されています。写真の1505編成は2022年3月15日に久里浜工場へ回送され、廃車となりました。

2001年からの更新改造でクリーム系の配色にバケットタイプの座席になった車内。写真はアルミ車編成で、乗務員室直後の2人掛け座席以外は片持ち式に改造されていますが、普通鋼製車では通常タイプのままシート交換・袖仕切設置を行った為、座席の下に蹴込みがあり容易に識別可能です。改造VVVF車は主電動機点検蓋は必要無くなったものの、写真のように埋められず残されました。ドア上には更新時に2100形が以前設置していたのと同じLED表示器とドアチャイムを設置しましたが、チャイムの導入は京急の車両ではこれが初めての事例でした。

各種改造のお陰で新1000形と遜色無い水準の1500形ですが、既に登場から38年の月日が経過し、アルミ車両も35年、VVVFインバーター制御の1700番台車は更新を受けないまま31年(1990年度導入の1701編成は事故廃車済み)も走り続けており、遂に本格的な置き換えが始まることになりました。他方で、京急から多数の車両譲渡を受けている高松琴平電気鉄道では2024年からバリアフリー対応車両を導入する計画を発表しており、それがこの1500形になるのか今後が非常に気になるところです。

※2019年の記事を加筆

 

コメント (2)
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