埼玉高速鉄道は営団地下鉄(東京メトロ)南北線の終点である赤羽岩淵を起点とし、埼玉県川口市方面に延長する形で埼玉スタジアム2002の最寄り駅である浦和美園に至る路線を運営する第三セクター事業者で、沿線自治体の川口市・鳩ヶ谷市(2011年10月11日で川口市に編入)・浦和市(2001年5月1日に周辺の市と合併し、さいたま市浦和区)と営団地下鉄、国際興業・東武鉄道・西武鉄道の出資のもとで1992年に設立されました。路線開通は2001年で、開通と同時に営団南北線・東急目黒線への相互直通運転を開始しており、路線バスへの依存度が高かった川口市東部・北部と旧鳩ヶ谷市域の交通状況を一気に改善しています。2023年3月18日からは東急・相鉄新横浜線開通に伴い相模鉄道との直通運転(直通運転への充当車両は東急・相鉄車のみ)も開始した他、将来的には浦和美園から東武野田線の岩槻駅を経て、東北本線(宇都宮線)の蓮田駅までの延伸も計画されています。
開通に備えて導入され現在も運用されているのがこの2000系で、営団地下鉄に検査業務を委託する前提で計画された為、「埼玉高速線の車両に係わる業務受委託契約(新造車両)」が1996年に締結され南北線9000系の技術情報の提供を受けて製造されました。初代車両でありながら形式が2000系とされたのは、登場年と路線の完成した年(西暦2000年)に由来します。ベースになった南北線の9000系は流線形に近い形状の前頭部でしたが、本系列では対照的に側面に周り込む曲面ガラスを用いながらも平面スタイルになり、新造時からスカートを設置してシャープさ、力強さを感じさせるデザインとしています。2000年代の新造車両ながらパンタグラフにシングルアーム式を採用せず従来からの菱形を搭載しているのも今となっては珍しくなりました。
先頭部形状の他にもアルミ車体を採用しつつ側扉がヘアライン仕上げのステンレス製標準品になり中央部の側窓がピラーを廃した一枚窓とされ、電気的にもIGBT素子を用いたIPM2レベル方式のVVVFインバーター制御で、ノイズのような独特の磁励音を発する三菱電機製の装置を搭載し、編成が電動車と付随車でユニットを組むMT組成(9000系では三菱電機IGBT-VVVFは14・15編成のみの他、電動車同士がユニットを組んでいます)など、基礎的な部分は設計を共通化しながらも非常に独自の色合いが濃くなっています。
車内は白の化粧板に石畳をイメージした灰色の床面で清潔感のある配色です。座席はバケットシートではない平板タイプで、埼玉県の県花であるサクラソウの花びらのイラストを入れて人数区分としています。ドア上の大きな画面が目を引きますが、これは2020年から新設されたダイナミックビークルスクリーンと称されるデジタルサイネージで、筐体内部にカメラとIoT機器が搭載され混雑状況や室内の温度をAIが解析し、環境の変化に応じて表示する内容を変更できる鉄道車両では世界初の事例になりました。
新造時から設置されているドア上の2段式LEDによる車内案内表示器。千鳥配置とされ、これが設置されていない側には2006年度より動画広告用の液晶画面が設置され、「SaiNet Vision」として配信を開始し現在は先述のダイナミックビークルスクリーンに置き換えられています。この為、LED表示とデジタルサイネージが同居する珍しい配置になりました。
今後の埼玉高速鉄道では乗り入れ先である南北線・東急目黒線に合わせて8両編成化が計画されており、8両1編成を先ずは新造導入し2000系は6両編成のまま運用を継続することが明らかにされています。2021年4月30日には埼玉県・さいたま市は岩槻延伸に向けて部局長会議を設置したことを発表しました。実現の頃には2000系も登場から30年を超え、南北線の9000系共々置き換え計画が浮上してくるかと思いますが、色々と注目に値する路線です。