写真はアルカサールの庭園にて。白い妖精のような女の子が水を飲んでいるだけなのだが、昔はイスパニアの宮殿、その前はアラブの城でもあった重層感が、不思議と女の子の雰囲気とマッチして不思議世界にいざなわれてしまった。おそらく彼女の父母の様子からみるとごく普通の観光客の女の子だろう(2019年3月8日撮影)
【コルドバにもローマ神殿】
コルドバは、世界遺産のある都市のわりには人通りが少なく、そぞろ歩きにぴったり。
セビリヤにも旧ユダヤ人街がありましたが、ここにもあり、特徴は白壁。花咲く青い小鉢が壁掛けされていてよく映えます。さらに2階の窓に植物のツルで編んだ独特な模様の浮き上がった簾がかかり、風情もひとしお。バルコニーでは気取りのない雰囲気でコルドバの人たちが窓越しに話しこんていて、普段の生活を垣間見せています。このリラックスムードはなかなか素敵です。
石畳を進んで少しにぎわった大通りでは、発掘調査中のローマ神殿の遺跡が忽然と現れていました。今も過去の発掘が進み、過去が顔をだす。散歩するだけで様々な時代をさまよえる味わい深い街なのです。
【アルカサル】
伊達政宗が派遣した1613年に日本を出発した慶長遣欧使節団が滞在した場所の一つがコルドバのアルカサル。メスキータのすぐ近くにあり、今も、建物と広いアラブ式庭園が残されています。
夕暮れ時に散策すると、庭の奥に威厳に満ちた像が夕日を背にそびえたっていました。添えられたプレートを読むと、この城でコロンブスと謁見している、資金援助を決めたカトリック両王であるイザベラとフェルナンドの像でした。少しリアルで、ちょっと不気味。
庭は噴水や人工的な滝、四角く刈り込まれた先進的な庭で、オレンジもたわわ。広い庭園に、客は数人で、かつての宮殿を独り占めしているような錯覚すら覚えます。
ぐるりと庭を一周して帰ろうとすると、黒マントに黒の帽子の威厳のあるおじさんがじっとこちらを見ていました。
なんだろう、と思いつつも、出口がそちらなので近づいていくと、
「あなたたちは、家族ですね。写真を撮ってあげましょう」
といって、我々のカメラを手に取って、厳かに写真を撮ってくれました。ただそれだけをすると、にこやかに去っていきました。
黒ずくめの風貌と、夕暮れ時の不気味さで、びくびくしてしまい、ごめんなさい。よく見ると、おじさんの周辺にはその子や孫たちもいて、ただただ人のいいおじさんだったみたいです。私もお礼にあちらの家族を撮ってあげればよかった!
(つづく)
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