2017.8.3
前田 高行
1. 世界の天然ガスの埋蔵量と可採年数(続き)
(埋蔵量を食いつぶし始めたカタール、シェールガス開発が頭打ちになった米国!)
(5)主な天然ガス資源国の過去16年間の埋蔵量の変化
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-G04.pdf 参照)
2016年末の天然ガス埋蔵量上位7カ国(イラン、ロシア、カタール、トルクメニスタン、米国、サウジアラビアおよびUAE)について2000年~2016年までの埋蔵量の推移を見ると、イランの場合2007年までは埋蔵量27tcm(兆立方メートル)前後を上下していたが、2010年に30tcmを突破してロシアを追い越し2016年末の埋蔵量は世界一の34tcmである。ロシアは2000年から2009年まで世界一の埋蔵量(31tcm)を誇っていたが現在は世界2位である。しかし両国の差は5%程度とわずかである。
世界第3位の埋蔵量を誇るカタールは2001年に埋蔵量を14tcmから26tcmに大幅に上方修正したが、その後は新規開発を凍結するモラトリアム宣言を行った。その結果、ここ数年は埋蔵量が徐々に減少し始めた。このため同国は今年4月にノース・ガス田の開発再開を宣言している。
イラン、ロシア、カタール3カ国の埋蔵量はその他の国を圧倒しているが、近年トルクメニスタンの伸長が著しい。同国の埋蔵量は2007年まで2tcmにとどまっていたが、2008年の7tcmから2010年には10tcmを突破、2016年末の埋蔵量は18tcmに達し過去8年間で9倍に増加しており、比較した7カ国の中では飛び抜けた増加率である。
イランとトルクメニスタンは2007年以降共に埋蔵量が急増している。しかしイランは米国の経済制裁により国際石油企業との協同事業が進まず自前の技術で探鉱開発を行っており同国の技術が時代遅れのものであることは周知の事実である。このような状況下で埋蔵量が増加しているのは石油篇で述べたと同様、イラン政府が政策的に埋蔵量の水増しを行っている可能性が否定できない。これに対してトルクメニスタンの場合は外国民間企業との全面的なタイアップにより国内で探鉱作業を行った成果であり埋蔵量の数値は信頼性が高いと考えられる。
米国も2006年以降埋蔵量が増加する傾向にあり2010年には2006年比1.4倍の8.6tcmに達し、サウジアラビア(7.9tcm)を上回り、2015年は10.4tcmと過去最高の水準に達している。その後2015年、2016年の埋蔵量は8.7tcmに低下している。このことは2014年まではシェールガス開発が盛んに行われていたが、その後価格の下落により消費が伸びる一方、開発意欲が停滞していることを示している。
(天然ガス篇埋蔵量完)
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