石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (6)

2017-08-06 | 中東諸国の動向

 

2017.8.6

前田 高行

 

(46年間で生産量はアフリカ70倍、中東60倍、北米はわずか1.4倍!)

(3)地域別生産量の推移(1970~2016年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-2-G02.pdf 参照)

 1970年に1兆㎥弱であった天然ガスの生産量はその後一貫して上昇を続け、1991年に2兆㎥、そして2008年には3兆㎥を突破し、2016年の生産量は3.6兆㎥弱を記録した。1兆㎥から2兆㎥になるまでは20年かかったが、次の3兆㎥に達するには17年しかかかっていない。このように天然ガスの生産は近年飛躍的に増加しているのであ る。石油の場合、第二次オイルショック後しばらく需要が前年を下回りオイルショック前の水準に戻るまで10年以上の歳月を要していることと比べ(前章石油篇「生産量推移」参照)天然ガスの生産拡大には目を見張るものがある。

 

 地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス生産は北米と欧州・ユーラシアの二つの地域で全世界の95%を占めており、残る5%をアジア・大洋州、中東、中南米及びアフリカで分け合っていた。しかし北米は1970年に6,590億㎥であった生産量がその後は微増にとどまり、世界に占めるシェアも67%(1970年)から27%(2016年)に低下している。欧州・ユーラシア地域の生産量は1970年の2,816億㎥から急速に伸び、1981年に北米を追い抜き、1980年代後半には全世界の生産量の半分を占めるまでになった。しかし同地域の生産量も90年代以降伸び悩んでおり、2016年の世界シェアは28%にとどまっている。現在も北米と欧州・ユーラシアの二地域が世界の天然ガスの主要生産地であることに変わりは無いが、その合計シェアは55%であり、1970年の95%から大きく後退している。

 

 この二地域に代わりシェアを伸ばしているのがアジア・大洋州と中東である。アジア・大洋州の場合、1970年の生産量は158億㎥でシェアもわずか2%しかなかったが、2016年の生産量は37倍の5,800億㎥に増加、シェアも16%に上昇している。また中東も生産量は1970年の107億㎥から2016年には59倍の6,378億㎥、シェアは18%に上がっている。アジア・大洋州或いは中東の生産量は1990年以降急速に増大しているが、特に中東ではここ数年加速された感がある。その理由としては生活水準の向上により地域内で発電用或いは家庭用燃料の需要が増加したことに加え、これまで先進国市場から遠いため困難であった輸出が、液化天然ガス(LNG)として市場を獲得しつつあることをあげることができる。

 

 過去45年間の伸び率で言えばアフリカ地域が最も大きい。同地域の1970年の生産量は31億㎥に過ぎず世界の生産量に占める比率は1%以下であったが、1990年代には1千億㎥を突破、2016年の生産量は1970年の70倍弱の2,083億㎥に達し、全世界に占める比率も6%に拡大している。

 

 世界的にみると天然ガスの年間増加率は平均3%前後と石油生産の伸び率を上回っており、石油から天然ガスへのシフトが進んでいる。天然ガスは石油よりもCO2の排出量が少なく地球温暖化対策に適うものと言えよう。この点では今後クリーンエネルギーである原子力或いは再生エネルギーとの競合が厳しくなると考えられる。但し原子力は安全性の問題を抱え、再生エネルギーもコストと安定供給が弱点である。その意味で天然ガスは今後世界のエネルギー市場でますます重要な地位を占めるものと考えられる。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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