石油と中東

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BPエネルギー統計2017年版解説シリーズ:天然ガス篇 (12)

2017-08-18 | BP統計

 

2017.8.18

前田 高行

 

(5)主要6カ国の生産・消費ギャップおよび自給率

 世界の主要な天然ガスの生産国と消費国を並べると、日本やドイツを除く多くの国が天然ガスの消費国であると同時に生産国であることがわかる。例えば米国とロシアはそれぞれ世界1位と2位の生産国であり同時に消費国でもある(本稿2-(2)および3-(2)参照)。カナダは生産国としては世界5位、消費国としても世界7位であり、また中国も生産量世界6位、消費量世界3位である。中東の有力産油国であるUAEも天然ガスに関しては生産量世界15位、消費量は世界11位である。また近年天然ガス輸出国として頭角を現しているオーストラリアは生産量世界10位、消費量は世界31位である。

 ここではこれら6カ国について生産量と消費量のギャップ(需給ギャップ)の推移を見ると共に、米国、中国、UAE、英国、インド及びクウェイトの6カ国について天然ガス自給率を検証してみる。

 

(過去10年間1,800億㎥前後の余裕を維持するロシア!)

(5-1)各国の生産量と消費量のギャップ

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-3-G04.pdf 参照)

 6カ国のうちで2016年の生産量が消費量を上回っているのはロシア、カナダ、オーストラリアの3カ国であり、米国、中国及びUAEの3か国は消費量が生産量を上回っている。つまり前3カ国は天然ガスの輸出余力があり、後者の3カ国は天然ガスを輸入する必要があることを示している。

 

 6カ国の過去11年間(2006~2016年)の需給ギャップを見ると、2006年のロシアは生産量5,952億㎥に対し消費量は4,150億㎥であり、差し引き1,801億㎥の生産超過(輸出余力)となり、ヨーロッパ諸国に輸出されたことになる。ロシアの需給ギャップは2009年に一時1,500億㎥を割ったが、その後は再び上昇して2013年の需給ギャップは過去10年で最大の1,913億㎥に達し、2016年は1,885億㎥となっている。このことは2008年にリーマンショックのためヨーロッパの消費が一時的に減ったものの、その後の世界景気の回復と新たな国内ガス田の開発及び極東向けのLNG輸出開始により2013年には国内消費の伸びを上回る生産が行われたことを示している。

 

 カナダもロシアと同様生産量が消費量を上回っているが、ロシアとは対照的に2006年以降は需給ギャップが縮小している。同国の2006年の生産量は1,717億㎥、消費量は969億㎥で差し引き747億㎥の余剰生産であったが、その後余剰生産量は減少し続け2013年には半分の375億㎥に縮小している。2013年の国内消費量は1,039億㎥であったからこの間の消費の増加は7%に過ぎない。2016年は生産量1,520億㎥に対し消費量は999億㎥であり余剰生産量は521億㎥まで回復している。

 

 2006年に米国は905億㎥の消費超過であった(生産5,240億㎥、消費6,144億㎥)。2010年まではほぼこのような状況が続いたが、同年以降はギャップが急速に小さくなり、2015年のギャップは70億㎥にまで下がった。このギャップは2016年には再び294億㎥に広がっているが、10年前に比べると大幅に縮小している。これは言うまでもなくシェールガスの開発によるものである。

 

 中国の場合、2006年は生産量606億㎥、消費量593億㎥で天然ガスの完全自給国であった。しかし2007年には消費量が生産量を上回るようになり、その後需給ギャップは年々大きくなっている。2016年は生産量1,384億㎥に対し消費量は2,103億㎥に達し、正味719億㎥が輸入されたことになる。この傾向は今後も続くことはほぼ間違いないであろう。

 

 オーストラリアは新規ガス田の開発により2016年の生産量は2006年の2.3倍に増加している。これに対して同じ期間の消費の伸びは1.6倍であり余剰生産量は141億㎥から500億㎥に拡大、LNGとして輸出に回されている。UAEにおける天然ガスの用途は発電及び海水淡水化用燃料であり、かつては油田の随伴ガスで賄っていたが、電力・水の需要が急増し2008年以降は国産のガスだけでは足らなくなり、隣国のカタールからパイプラインで輸入している状況である。2016年の輸入量は148億㎥に達している。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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