石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

埋蔵量が増えても可採年数は減少:BPエネルギー統計2020年版解説シリーズ天然ガス篇 (1)

2020-07-21 | BP統計
BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2020」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量等のデータを抜粋して解説したものである。
 *BPホームページ:
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-statistical-review-of-world-energy-2020-published.html

1.世界の天然ガスの埋蔵量と可採年数
(ロシア、イラン、カタールの上位3か国で全世界の埋蔵量の48%!)
(1)国別の埋蔵量
(表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-T01.pdf 参照)
 2019年末の国別埋蔵量を見ると、ロシアが最も多い38兆立法メートル(trillion cubic meter、以下tcm)であり、第2位はイランの32tcmである。この2カ国に続き第三位がカタール(25tcm、シェア13%)であり、3か国の埋蔵量が全世界に占める割合は48%に達する。第四位トルクメニスタン(20tcm、10%)以下10位までは米国(13tcm、世界シェア6.5%)、中国(8.4tcm、3.2%)、ベネズエラ(6.3tcm、3.2%)、サウジアラビア(6.0tcm、3%)、UAE(5.9tcm、3.0%)、ナイジェリア(5.4tcm、2.7%)と続いており、上位10カ国の世界シェア合計は80%である。
 
(埋蔵量は増えても可採年数は低下!)
(2)1990~2019年の埋蔵量及び可採年数の推移
(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-G02.pdf 参照)
 1990年末の世界の埋蔵量は108tcmであったが、2019年末のそれは197tcmであり、この30年近くの間で1.8倍に増加している。この間の対前年伸び率の平均は2.2%である。このうち平均を大幅に上回る伸び率を示したのは、1991年(5.8%)、2000年(4.6%)、2001年(10.4%)、2011年(5.7%)であり、ほぼ10年ごとに埋蔵量が急増していることがわかる。その反面2010年代前半は前年より埋蔵量が減少した年が2度あり(2012年及び2015年)、2018年、19年は1%以下の増加にとどまっている。

 一方1990年に55年であった可採年数の推移をみると、2002年にはここ30年の間でも最も高い62年を記録している。しかしその後は長期減退傾向にあり、特にここ数年急激に低下し、2019年の可採年数は50年である。1990年に比べると埋蔵量は1.8倍に増えているが、可採年数は逆に短くなっているのである。

埋蔵量の増加は中央アジアのトルクメニスタン、ロシアの北極海或いは東アフリカのモザンビーク沖における大型ガス田の発見があり、また米国のシェールガスや世界各国におけるコールベッドメタンの開発などがその要因である。それにもかかわらず可採年数が低下しているのはとりもなおさず新規発見量を上回るベースで生産・消費が拡大していることを示している。(生産量・消費量については第2章、第3章参照)

(続く)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
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