BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2020」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。
*BPホームページ:
http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html
2.世界の天然ガスの生産量
(他を圧倒する米国とロシアの生産量!)
(1)国別生産量
(表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-2-T01.pdf 参照)
天然ガス生産量第1位は米国の9,209億㎥/年(891億立法フィート/日)で全世界の生産量に占める割合は23%である。第2位はロシア(6,790億㎥、シェア17%)であり、両国の生産量が飛び抜けて多く、2カ国だけで世界の4割を占めている。
米露に続くのがイラン(2,442億㎥)で、カタール(1,781億㎥)、中国(1,776億㎥)及びカナダ(1,731億㎥)が僅差で並んでいる。これら3か国の生産量は米国の5分の1である。7位から9位はオーストラリア (1,535億㎥)、ノルウェー(1,144億㎥)、サウジアラビア(1,136億㎥)で、以上9カ国が年間生産量1千億㎥を超えている。10位はアルジェリア(862億㎥)である。
これら上位各国の生産量を前年と比較するとオーストラリアが対前年比18%と顕著な増加を示している。同国は近年大型のLNGプロジェクトが次々と稼働を始めており、近い将来現在のカタールをしのぐ世界最大のLNG輸出国になると予測されている。米国も前年比10%の増加であり、シェールガスの生産が拡大していることをうかがわせる。中国も対前年比9.9%増加している。因みに2019年の全世界の生産量は2018年の3.8兆㎥から3.4%増加している。
これに対してロシアの伸び率は1.5%にとどまっており、カタールの場合は0.9%増とほとんど増加していない。カタールは増産を久しく凍結していたが、この間も天然ガスの需要は着実に増加しており(次章「消費量」参照)、オーストラリア等の新興勢力が追い上げている。このためカタールは最近増産凍結(モラトリアム)を撤回、年間生産能力を現行の7,800万トンから1.2億トンに引き上げるプロジェクトに着手したばかりである。
一方上位10か国の中でカナダ、ノルウェー及びアルジェリアの3か国の生産量は前年を下回っている。カナダは対前年比3.3%減である。同国は生産量のかなりの部分を米国にパイプラインで輸出しているが、米国内のシェールガスの生産が急増した結果、対米輸出が減少したためとみられる。ノルウェー及びアルジェリアの減少幅はそれぞれ▲5.7%、▲8.1%である。ノルウェーは北海ガス田の生産が減退し、またアルジェリアは政情不安定によるなどそれぞれの国内事情があると考えられるが、ロシア・ドイツ間のバルト海パイプラインが本格稼働するなどロシアの西欧向け輸出圧力にさらされていることも一因であろう。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
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2.世界の天然ガスの生産量
(他を圧倒する米国とロシアの生産量!)
(1)国別生産量
(表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-2-T01.pdf 参照)
天然ガス生産量第1位は米国の9,209億㎥/年(891億立法フィート/日)で全世界の生産量に占める割合は23%である。第2位はロシア(6,790億㎥、シェア17%)であり、両国の生産量が飛び抜けて多く、2カ国だけで世界の4割を占めている。
米露に続くのがイラン(2,442億㎥)で、カタール(1,781億㎥)、中国(1,776億㎥)及びカナダ(1,731億㎥)が僅差で並んでいる。これら3か国の生産量は米国の5分の1である。7位から9位はオーストラリア (1,535億㎥)、ノルウェー(1,144億㎥)、サウジアラビア(1,136億㎥)で、以上9カ国が年間生産量1千億㎥を超えている。10位はアルジェリア(862億㎥)である。
これら上位各国の生産量を前年と比較するとオーストラリアが対前年比18%と顕著な増加を示している。同国は近年大型のLNGプロジェクトが次々と稼働を始めており、近い将来現在のカタールをしのぐ世界最大のLNG輸出国になると予測されている。米国も前年比10%の増加であり、シェールガスの生産が拡大していることをうかがわせる。中国も対前年比9.9%増加している。因みに2019年の全世界の生産量は2018年の3.8兆㎥から3.4%増加している。
これに対してロシアの伸び率は1.5%にとどまっており、カタールの場合は0.9%増とほとんど増加していない。カタールは増産を久しく凍結していたが、この間も天然ガスの需要は着実に増加しており(次章「消費量」参照)、オーストラリア等の新興勢力が追い上げている。このためカタールは最近増産凍結(モラトリアム)を撤回、年間生産能力を現行の7,800万トンから1.2億トンに引き上げるプロジェクトに着手したばかりである。
一方上位10か国の中でカナダ、ノルウェー及びアルジェリアの3か国の生産量は前年を下回っている。カナダは対前年比3.3%減である。同国は生産量のかなりの部分を米国にパイプラインで輸出しているが、米国内のシェールガスの生産が急増した結果、対米輸出が減少したためとみられる。ノルウェー及びアルジェリアの減少幅はそれぞれ▲5.7%、▲8.1%である。ノルウェーは北海ガス田の生産が減退し、またアルジェリアは政情不安定によるなどそれぞれの国内事情があると考えられるが、ロシア・ドイツ間のバルト海パイプラインが本格稼働するなどロシアの西欧向け輸出圧力にさらされていることも一因であろう。
(続く)
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