(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0599WorldRank4.pdf
(世界ランクシリーズ その4 2023-24年版)
(改善著しい中国とUAE!)
2.1990~2022年のHDI指数の推移(図http://rank.maeda1.jp/4-G01.pdf )
世界トップのスイスと日本、中国及びUAE、サウジアラビア、イランの中東3カ国に全世界平均、アラブ諸国平均それぞれの開発指数について1990年から2022年までの推移を追ってみる。
スイスのHDI(人間開発指数)は1990年ですでに高々度開発国(VHHD)であり、2000年代前半にHDIが0.900を超え、2022年のHDIは0.967に達している。日本の1990年の指数は 0.846で、2010年に0.900を超え、2022年は0.920となっている。
UAEとサウジアラビアを比べると、1990年のHDIはそれぞれ0.717及び0.699であり、UAEはすでに高度人間開発(HHD)段階に達していた。サウジアラビアは中位度開発(MHD)に留まっていたが、1990年代にHHDに仲間入りし、2010年には両国ともVHHDグループになっている。両国は2010年まではほぼ平行線をたどって向上してきたが、2010年以降、UAEのHDIは急速に改善し、2020年にはついに日本を上回った。これに対してサウジラビアは改善の足取りが鈍り、2022年のIndexは0.875にとどまり、UAE(同0.937)との格差が拡大している。
イランと中国の1990年のHDIはそれぞれ0.613及び0.482であり、イランは中緯度開発国(MHD)であったのに対し中国は低度人間開発(LHD)にとどまっていた。しかし両国のHDIはその後大幅に改善されている。特に中国のHDIは0.586(2000年)→0.698(2010年)→0.781(2020年)と、20年間でLHD(低度開発)からHHD(高度開発)に伸長、全世界平均を上回り、イランを凌ぐまでに改善されている。
以上
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(17)
131うっぷん晴らしとしっぺ返しの悲劇(3/4)
イスラエルに対するイラクのミサイル攻撃を大歓迎したのはイスラエル占領地のパレスチナ人であり或いはヨルダンに住むパレスチナ難民たちであった。アラブ各国の首脳は口を開けば「イスラエルを地中海に追い落とせ」と威勢の良いことを言うが、実際に行動に踏み切った為政者はイラクのフセインただ一人だった。フセインなら本当に自分たちの夢を実現してくれるかもしれないという幻想にパレスチナ人たちが取りつかれたのも無理のないことだった。彼らはフセイン支持を声高に叫び日頃のうっ憤を晴らしたのであった。
声に出さないまでも心の中で快哉を叫んだパレスチナ人もいた。クウェイトに出稼ぎに来ていた者たちである。まともに仕事もできずただ傲慢なだけのクウェイト人に奴隷のようにこき使われていた出稼ぎの彼らは、イラク軍に攻め込まれ、慌てふためいて隣国サウジアラビアに逃げ込んだクウェイト人たちを見て留飲を下げた。そして次にイスラエルがミサイル攻撃を受けたとき、米国に押しとどめられてイスラエルが反撃できないことを知り、ひょっとすればフセインが自分たちの祖国を取り戻してくれるのではないかという期待に胸を膨らませたのであった。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com
(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0599WorldRank4.pdf
(世界ランクシリーズ その4 2023-24年版)
国連などの国際機関あるいは世界の著名な研究機関により各国の経済・社会に関するランク付け調査が行われている。これらの調査について日米中など世界の主要国及びトルコ、エジプト、イランなど中東の主要国のランクを取り上げて解説するのが「世界ランクシリーズ」である。
第4回のランキングは国連開発計画(UNDP)が発表した「Human Development Report 2023-24」により世界及び中東主要国について人間開発指数の世界ランクを比較した。
「Human Development Report 2023-24」について
UNDPの「Human Development Report 2023-24」(以下「HDR2023-24」)では、(1)193の国及び地域の人間開発指数(Human Development Index, HDI)の値と順位が公表されている。
UNDP駐日代表事務所のホームページによれば、人間開発指数(HDI)は、保健、教育、所得という人間開発の3つの側面に関して、ある国における平均達成度を測るための簡便な指標である[1]。
レポート全文(英文):
https://www.undp.org/turkiye/publications/human-development-report-2023
UNDP駐日代表事務所プレスリリース:
(日本は世界24位、韓国、米国より下位!)
1. 世界と中東主要国の2023-24年人間開発指数
(表http://rank.maeda1.jp/4-T01.pdf 参照)
2023-24年の人間開発指数の世界ランクトップはスイスでIndexは0.967である。2位以下5位まではノルウェー、アイスランド、香港及びデンマークである。上位5カ国のうち香港を除く4カ国はヨーロッパの国々であり、また上位3カ国の顔触れと順位は前回(2021-22年)と変わらない。非西欧圏では唯一香港が2回連続して4位に入っている。
日本は世界24位(Index 0.920)であり、前回の19位から5ランク落ちている。日本の順位は韓国(世界19位)及び米国(同21位)より低く、また後述するように中東のUAE(17位)より下位である。このほかロシアは世界56位(Index 0.821)、中国は75位(同0.788)、インドは134位(同0.644)である。これら3か国の前回順位はそれぞれ52位、79位及び132位であり、ロシアとインドは前回より順位を下げたのに対し、中国は逆に順位を上げている。
中東の主要国ではUAEが世界17位(Index0.937)で米国或いは日本を上回っている。同国の前回世界順位は26位、Index0.911であったが今回はIndexが大きく上昇しており、世界の上位20傑に入っている。UAEに次ぐのがイスラエルで同国の世界ランクは25位、続いてサウジアラビアが世界40位とされ、トルコは世界45位である。中東アラブの大国であるイラン及びエジプトの世界順位はそれぞれ78位及び105位である。
また世界193カ国中の最下位はソマリアで同国のIndexは0.380である。ソマリアに次いで指数が低いのは南スーダン、中央アフリカ、ニジェール、チャドといずれもアフリカの国々である。
なお、レポートではHDI Indexが0.800以上をVery High Human Development(VHHD、高々度人間開発)、Index 0.700以上をHigh Human Development(HHD、高度人間開発)、0.700未満0.550以上をMedium Human Development(MHD、中位度人間開発)、0.550未満をLow Human Development (LHD、低度人間開発)に分類している。日本、米国、韓国、ロシアはVHHD国家群に属し、中国はHDD、インドはMHDに属する。
HDIの世界平均は0.739であり、ここで取り上げた国の中ではインド、及びエジプトが平均を下回っている。またアラブ諸国の平均値は0.704である
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
[1] ホームページ:https://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/library/human_development/human_development1/hdr_2011/QA_HDR1.html
(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(16)
130うっぷん晴らしとしっぺ返しの悲劇(2/4)
それこそフセインの思う壺だった。イスラエルが参戦すれば過去の4度にわたる中東戦争の図式が再現され、イラクの一方的な侵略戦争はアラブ・イスラーム対ユダヤという民族戦争に一変する。この戦争でサウジアラビアは米国など西欧キリスト教諸国を中心とする多国籍軍に駐留を認めており国内外のイスラーム宗教勢力から批判を受けていた。もしイスラエルが参戦すればサウジアラビアを含むアラブ諸国は苦しい立場に立たされることになるのであった。
米国は必死になってイスラエルを説得し反撃を思いとどまらせた。もし(歴史に「もし」は禁句であるが)イスラエルが参戦していればフセイン政権は間違いなく倒れていたであろう。敵の息の根を止めるまで戦いを止めないのがイスラエルの戦略である。その結果中東は大混乱に陥ることも間違いない。しかし当時の米国はサウジアラビアなどの湾岸アラブ産油国を自陣営に引き留めておく必要があった。イランに加えてアラブ諸国まで敵に回すのは何としても避けたかった。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com
(石油関連ニュース)
原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil
・原油価格、前週より3%上昇。Brent $84.83, WTI $80.70。
・サウジアラムコ、NY上場をCitigroup等と協議中:Bloomberg報道。
(中東関連ニュース)
・ガザ戦闘でパレスチナを嘲笑するイスラエル兵の写真がSNSに投稿。
・イエメンフーシ派にマッハ8の超音速ミサイル:ロシア国営メディア報道。
・シリア内戦、14年目に突入。民間人16万人含め死者総数34万人。
3/10 Saudi Aramco
Aramco announces full-year 2023 results
https://www.aramco.com/en/news-media/news/2024/aramco-announces-full-year-2023-results
3/12 出光興産
第33回出光音楽賞 受賞者決定
https://www.idemitsu.com/jp/news/2023/240312.html
3/13 出光興産
豪州 SAF製造のJet Zero Australia社へ出資 ~原材料の安定確保やサプライチェーン構築で協力~
https://www.idemitsu.com/jp/news/2023/240313.html
3/14 Shell
Shell publishes Energy Transition Strategy 2024
https://www.shell.com/news-and-insights/newsroom/news-and-media-releases/2024/shell-publishes-energy-transition-strategy-2024.html
(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(15)
129うっぷん晴らしとしっぺ返しの悲劇(1/4)
イラクはクウェイト進攻により全世界を敵に回したが、厳密に言えば進攻直後に開催されたアラブ首脳会議でヨルダンを含むいくつかの国はイラク寄りの姿勢を採ったのである。「イスラエルのパレスチナ侵略を容認しながら、イラクのクウェイト併合を非難するのは矛盾している」とするフセイン大統領の主張、いわゆるリンケージ論が一部のアラブ諸国の琴線に触れたのである。ヨルダンの場合、市場価格を大幅に下回る価格でイラクから石油の供給を受けており貧乏な小国ヨルダンはイラクに頭が上がらなかったと言う事情もあった。
巧妙なフセイン大統領はイスラエルに対して18回にわたりミサイル攻撃を仕掛けた。イラン・イラク戦争のどさくさにイスラエルが自国のオシラク原子力発電所を爆撃したことに対する報復措置というのが国民に対する説明であったが、イスラエルを挑発して戦争に巻き込もうとするのが彼の狙いであった。自衛のためなら先制攻撃も辞さないイスラエルがイラクのミサイル攻撃に黙っているわけはない。実際イスラエル世論は対イラク戦争への参戦一色に染まった。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com