石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(128)

2024-03-13 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(14

 

128イラクのクウェイト進攻と湾岸戦争(5/5)

翌1991年1月多国籍軍はバクダッドを始めイラク軍の陣地を空からミサイル攻撃した。ミサイルが標的に向かう一部始終はテレビ中継され、世界中の人々はそれをまるでテレビゲームのような感覚で眺めていた。「湾岸戦争」の始まりである。2月には地上部隊がクウェイトそしてイラクに怒涛の如く進撃した。イラク軍は潰走、100時間後には多国籍軍は戦闘行動を停止し停戦を宣言した。

 

この時多国籍軍はイラクの首都バクダッドを目前にし、あと一押しでフセイン政権を倒すことができた。敬虔なキリスト教徒であり十字軍気取りのブッシュ(父)米国大統領は異教徒の独裁者フセインを葬り去ることを強く願ったはずである。しかし国連決議はあくまでクウェイトの解放であってイラクのフセイン体制打倒を認めたものではなかった。イラクのことはイラク国民に任せるという内政不干渉の鉄則が戦闘を停止させた。付言するなら父ブッシュ大統領の悲願は10数年後に息子のブッシュ大統領が「イラク戦争」という形で実現したのであった。

 

フセインはよくよく運の強い男である。彼は湾岸戦争を生き延びてさらに10年以上イラクで独裁者として君臨することになる。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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当面続く化石エネルギーの時代:五大国際石油企業業績速報シリーズ(18完)  

2024-03-13 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0598OilMajor2023.pdf

 

IV. 過去2年間の四半期業績推移(続き)

 

(生産量が増加する米系2社、減少する英系2社!)

4.石油・天然ガス合計生産量の推移

(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-65.pdf 参照)

 2022年第1四半期から2023年第4四半期まで過去2年間の各社の原油と天然ガスの合計生産量を検証すると、2022年1-3月期の石油換算平均日量はExxonMobilが最も多い3,675千B/Dであり、これに次ぐのがChevronの3,060千B/Dであった。3,000千B/Dを超えたのはこの米系2社だけであると共に、現在に至るまでの8四半期はこの2社がトップと2位を占めている。

 

 2社に次いで生産量が多いのはTotalEnergiesであり同社の2022年1-3月期の生産量は2,843B/Dであった。しかしTotalEnergiesの生産量はその後漸減し2023年10-12月期はChevronを100万B/D近く下回る2,462B/Dにとどまっている。

 

 売上規模でExxonMobilに次ぐShellは、生産量は5社中4位にとどまっている。さらに生産量も2022年1-3月期の2,025千B/Dから2023年10-12月期には1,870千B/Dへ年を追うごとに減少している。bpは5社の中で生産量が最も少なく2022年1-3月期はトップExxonMobilの3分の1にとどまっている。その後生産量は少しづつ増加しているものの2023年10-12月期は1,421千B/Dであり5社中の最下位にとどまっている。

 

以上

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 

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石油と中東のニュース(3月12日)

2024-03-12 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・原油価格下落続く。Brent$81.53, WTI $77.44

(中東関連ニュース)

・ガザ戦争の影引きずり11日からラマダン始まる。ヨルダンなどは12日

・ガザの死者数31,045人に達する。女性/子供が72%。負傷者7万3千人

・米大統領、ネタニヤフ首相を強く非難

・イラン、中国/ロシアとインド洋で合同軍事演習実施

・イエメン:お尋ね者アルカイダ(AQAP)指導者Al-Batarfi死亡。死因は不明

・トルコ、印と緊張激化のモルディブにドローン攻撃機供与

・カタール外貨準備高、677億ドル

・サウジ国富ファンドPIF運用資産、世界5位の8,610億ドル

・サウジアラムコ決算発表。昨年度利益1,213億ドル

Aramcoプレスリリース参照。

 

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当面続く化石エネルギーの時代:五大国際石油企業業績速報シリーズ(17)  

2024-03-12 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0598OilMajor2023.pdf

 

III. 過去2年間の四半期業績推移(続き)

3.キャッシュフローの推移

(変動の激しいExxonMobil、毎期▲100億ドル前後で推移するShell!)

(3)財務キャッシュフロー(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-74.pdf 参照)

 2022年1-3月期の財務C/Fは、Shellが▲90億ドルで最も大きく、次いでExxonMobil▲67億ドル、bp▲25億ドル、Chevron▲14億ドルであり、TotalEnergiesのみは投資回収分が新規投資分を上回り50億ドルのプラスであった。翌4-6月期は各社の財務C/Fは100億ドル前後の横並びであった。

 

 2023年7-9月以降、ExxonMobilの財務C/Fは変動が激しく、50億ドルのプラスから10-12月期には一転して▲297億ドルとなり、さらに2023年も7-9期のプラス31億ドルから10-12月期には5社で最も多い▲207億ドルであった。同社がかなり大胆な投資の入れ替えを行っている様子がうかがえる。

 

 その他各社の四半期ごとの推移は以下のとおりである。

(単位:億ドル)

              2022年                      2023年

              1-3月  4-6月  7-9月  10-12月 1-3月  4-6月  7-9月  10-12月

bp            ▲25→ ▲92→ ▲92→ ▲71→ ▲36→ ▲36→ ▲42→ ▲20

TotalEnergies  50→   ▲86→ ▲91→ ▲66→ ▲40→ ▲79→ ▲48→ ▲130

Chevron       ▲14→ ▲81→ ▲90→ ▲64→ ▲66→ ▲87→ ▲86→ ▲62

 

(残高水準の高いShell!)

(4)キャッシュフロー期末残高(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-75.pdf 参照)

 2022年1-3月期以降の四半期末キャッシュフロー残高の推移を各社ごとに見る。なおChevronの決算書類では四半期ベースの残高は示されていないため、ここではその他の4社について比較検討する。

 

2022年3月末のC/F残高が最も多いのはShellの384億ドルであり、次いでbp344億ドル、TotalEnergies313億ドルと各社300億ドル台で並んでいる。ExxonMobilの残高は111億ドルで他社に比べ非常に少ない。

 

Shellの残高はその後も4社のトップを続けており、2023年6月末には451億ドルに達し、昨年末現在は388億ドルである。ExxonMobilは2022年9月末に残高をbpに並ぶ327億ドルに引き上げ、その後はTotalEnergiesを含めた3社は300億ドル前後の残高となっている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(127)

2024-03-11 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(13

 

127イラクのクウェイト進攻と湾岸戦争(4/5)

 

状況を見誤ったのはフセイン大統領も同じであった。彼はイラクがクウェイトに進攻してもアラブや欧米諸国が強硬手段をとらないと踏んだ。こうして1990年8月未明、フセインは国境に配備した部隊にクウェイト進攻を命じた。寝耳に水で慌てふためいたのはクウェイトの支配者サバーハ家である。寝込みを襲われた首長を始めとする王家一族は命からがら国境の南サウジアラビアに逃げ込んだのであった。クウェイト国内では戦闘らしい戦闘もなく、わずか半日でイラク軍に制圧された。イラクのクウェイト占領は翌年1月の湾岸戦争まで約半年間続く。この間、日本人を含むクウェイト在住の外国人はイラクに拉致され「人間の盾」とされる災難に遭うのである。

 

イラクのクウェイト進攻が国際社会の誤算だったとするなら、その後国際社会が一致してクウェイト解放を唱えたことはフセインの思わぬ誤算だったと言えよう。フセインはクウェイトがもともとイラク南部バスラ州の一部であったと主張したが、戦後半世紀が経ち世界各地に生まれた国民国家を尊重する国際社会の中にあっては力ずくの領土併合は到底認められないことであった。11月には国連安保理で武力行使を容認する決議が採択された。米国を中心とする多国籍軍が編成され、アラブ諸国からはサウジアラビアなど湾岸君主制国家やイラクと同じバース党が支配するシリアも連合軍に加わった。イラン・イラク戦争では巧妙な戦略で全世界を味方に引き込んだイラクが、今度は全世界を敵に回したのである。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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当面続く化石エネルギーの時代:五大国際石油企業業績速報シリーズ(16)  

2024-03-11 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0598OilMajor2023.pdf

 

III. 過去2年間の四半期業績推移(続き)

3.キャッシュフローの推移

(2022年には200億ドルを超えたExxonMobilとShellの営業C/F!)

(1)営業キャッシュフロー(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-72.pdf 参照)

 2022年1-3月期から2023年10-12月期までの四半期ごとの営業キャッシュフロー(以下C/F)の推移は概略以下の通りであった。

 

 営業C/Fはほぼ売上規模に比例するため売上高が大きいExxonMobil及びShellが毎期他社を上回っている。2022年1-3月期のExxonMobil、Shellの営業C/Fは148億ドルであり、他の3社は100億ドルを下回っていた。ExxonMobilは同年7-9月期に244億ドルの営業C/Fを、またShellも10-12月期に224億ドルの営業C/Fを達成している。

 

しかし2023年に入ると5社の差は徐々に縮まり同年10-12月期の営業C/FはTotalEnergiesが最も多い162億ドルであり、これに次ぐのがExxonMobil 137億ドル、Shell 126億ドル、Chevron124億ドルである。bpは5社の中で唯一100億ドルを下回っている。

 

(対照的な投資C/Fが多いShellと少ないbp!)

(2)投資キャッシュフロー(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-73.pdf 参照)

 2022年1-3月期の投資C/FはShell▲43億ドル、ExxonMobil▲39億ドル、TotalEnergies▲24億ドル、bp ▲19億ドル、Chevron▲7億ドルであった。その後Shellの四半期投資C/Fは▲62億ドル→▲50億ドル→▲69億ドル→▲42億ドル→▲30億ドル→▲48億ドルと推移し、2023年10-12月期は▲57億ドルであった。2022年度は60億ドル前後で推移し、2023年度は前年度を下回る水準に終始している。

 

 ExxonMobilの投資C/Fは各四半期とも30~40億ドル前後で推移しているが、両年とも第一四半期から第三四半期にかけて減少し、最終第4四半期で増加する傾向を示している。

 

 その他各社の四半期ごとの推移は以下のとおりである。

(単位:億ドル)

              2022年                      2023年

              1-3月  4-6月  7-9月  10-12月 1-3月  4-6月  7-9月  10-12月

bp            ▲19→ ▲25→ ▲26→ ▲67→ ▲28→ ▲42→ ▲35→ ▲44

TotalEnergies  ▲24→ ▲50→ ▲41→ ▲37→ ▲64→ ▲45→ ▲50→ ▲44

Chevron       ▲7→  ▲50→ ▲28→ ▲37→ ▲28→ ▲39→ ▲44→ ▲41

 

(続く)

 

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     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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石油と中東のニュース(3月9日)

2024-03-09 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

 

(中東関連ニュース)

・ガザ北部、緊急支援物資投下の混乱で5人死亡

・米大統領、ガザ海上からの支援物資搬入を提案。ラマダン前の停戦微妙

 

・トルコ大統領、ウクライナ大統領と会談。停戦調停の意向示す

・エジプト通貨落ち着く

・ドバイ:外銀に20%課税、金融特区内は免除

・サウジ:アラムコ株8%をPIF参加企業に移転。PIF支配率16%に

 

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今週の各社プレスリリースから(3/3-3/9)

2024-03-09 | 今週のエネルギー関連新聞発表

3/3 OPEC

Several OPEC+ countries announce extension of additional voluntary cuts of 2.2 million barrels per day for the second quarter of 2024

https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/7305.htm

 

3/8 経済産業省

岩田経済産業副大臣がオマーン国とアラブ首長国連邦に出張しました

https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240308006/20240308006.html

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(126)

2024-03-08 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(12

 

126イラクのクウェイト進攻と湾岸戦争(3/5)

 停戦の翌年イランのホメイニ師が86才で波乱の生涯を終えた。イランはその後ますます国際的孤立を深める。フセインが次に狙ったのは南の隣国クウェイトであり、さらにアラブの覇者となるための絶対条件ともいうべきイスラエル打倒であった。彼はまず手始めにクウェイトを狙った。クウェイトは貸し付けた戦費の返済をしつこく迫っており(クウェイトにすれば当然の要求だったが)、また同時に当時のOPEC(石油輸出国機構)加盟国の中で安値販売の先頭を切っていた。戦災復興を急ぐためできるだけ高値で原油を販売したいイラクにとってクウェイトは目障りな存在であった。フセインは兵力をクウェイト国境に集結し圧力をかけた。

 

しかし当のクウェイトを始め国際社会はこれを単なる脅しとみなし、フセインがまさかクウェイトに進攻するなどとは考えていなかった。アラブ連盟の緊急会議が開かれたとき、弁明に立ったイラク外相は極めて穏やな話しぶりであったと言われる。アラブ諸国は話し合いで事態が解決すると信じた。さらに当時の米国大使もフセイン大統領と面談したが、大統領の物腰は極めて紳士的であったため、大使はイラクに戦争の意思なし、と本国に誤ったシグナルを送った。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

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当面続く化石エネルギーの時代:五大国際石油企業業績速報シリーズ(15)  

2024-03-08 | 海外・国内石油企業の業績

IV. 2022―23年四半期業績推移の比較(続き)

 

(利益格差が大きかった2022年、各社安定した2023年!)

2.純利益の推移

(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-62.pdf 参照)

 

2022年1-3月期の純利益が最も多かったのはShellの71億ドルであり、これにChevron(63億ドル)、ExxonMobil(55億ドル)、TotalEnergies(49億ドル)が続き、4社はほぼ同水準の利益を計上している。これに対してbpはロシアでの合弁事業撤退による特別損失により204億ドルの巨額の欠損を計上している。

 

続く4-6月期はすべての企業が増益となりbpもプラスに転じた。しかしながら各社の収益に格差が生じ、ExxonMobilが3倍強の大幅増益となった一方、TotalEnergiesは15%の増益にとどまるなど各社間に収益格差が生まれた。そして7-9月期はShell及びbpが大幅減益、他者は横ばいとなり、10-12月期はShell、bpが増益、その他3社は減益となるなど2022年は四半期の業績が大きく変動した。

 

2023年に入り四半期の各社は安定した利益を計上し、また各社の収益変動幅も小さくなっている。2023年10-12月期の各社利益はExxonMobil 76億ドル、TotalEnergies 51億ドル、Chevron 23億ドル、Shell 5億ドル、bp 4億ドルである。8四半期を通じてExxonMobilは5社の中で安定した高い利益を確保しており、一方bpは収益構造の悪さが目立っている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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