IV. 2022―23年四半期業績推移の比較
ここでは2022年1-3月期から2023年10-12月期までの2年間、8四半期の各社業績の推移を比較概観する。
(ExxonMobilとShellが他の3社を引き離し2強3弱状況!)
- 売上高の推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-61.pdf 参照)
2022年1-3月期売上高が最も多いのはExxonMobilの905億ドルであり、Shellがこれに次いで842億ドルであった。その他3社はTotalEnergies686億ドル、Chevron及びbpは520億ドル前後であり、ExxonMobilとShellが他の3社を引き離している。この傾向は現在まで続いており、売上高に関しては2強3弱の状況である。
この間のブレント原油価格の動きは、2022年1-3月期平均は102ドルであり、同4-6月期114ドル、7-9月期101ドルと3期連続で100ドルを超えている。しかし同年10-12月期以降は89ドル、2023年1-3月期81ドル、さらに4-6月期には78ドルまで下落した。7-9月期は4四半期ぶりに反転して87ドルに回復、2023年10-12月期も80ドル台を維持している。
各社の売上高は原油価格の変動にほぼ比例しており、ExxonMobilの売上高は、905億ドル(2022.1-3月期)→1,157億ドル(2022.4-6月期)→1,121億ドル(2022.7-9月期)→954億ドル(2022.10-12月期)→866億ドル(2023.1-3月期)→829億ドル(2023.4-6月期) →954億ドル(2023.7-9月期) →843億ドル(2023.10-12月期)と変化している。同社の四半期売上高の変化は上記原油価格の変化と極めて近似している。
他社の売上高の推移は以下の通りであるが、ExxonMobilとほぼ同様の傾向を示している。
(単位:億ドル)
2022年 2023年
1-3月 4-6月 7-9月 10-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
Shell 842→ 1,001→ 957→ 1,013→ 870→ 746→ 764→ 787
bp 512→ 695→ 578→ 704→ 570→ 495→ 540→ 526
TotalEnergies 686→ 748→ 690→ 686→ 626→ 563→ 590→ 592
Chevron 523→ 654→ 635→ 545→ 488→ 472→ 545→ 489
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(11)
125イラクのクウェイト進攻と湾岸戦争(2/5)
対外的にもイラクはクウェイトやサウジアラビアに多額の負債を抱え財政破たんの状態であったが、フセインは両国からの借金返済要求も無視した。彼に言わせれば、今回の戦争はスンニ派を代表してシーア派のイランと戦ったのであり、イラクは兵力を供出し、スンニ派産油国が戦費を負担するのは当然である、ということになる。
過去の歴史を見ても戦争に費やした金は常に戦勝国が敗戦国から搾り取るものであって同盟国が他の同盟国に戦費の返還を求めた例は無い。それが国際外交で通用しなくなったのは第二次世界大戦後、豊かで鷹揚な米国が敗戦国を搾取することを禁じたからである。そこには第一次世界大戦で戦勝国フランスが敗戦国ドイツを搾り取り、その結果がナチスの台頭を許し第二次世界大戦につながったという苦い経験もあった。フセインの言い分は無茶苦茶なものではあるが、それなりの理屈が無くはない。「盗人にも三分の理」とでも言うべきであろうか。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com
III. 5カ年(2019-2023年) 業績推移の比較(続き)
(2020/21年を底に上向いた設備投資!)
4.設備投資[1]
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-23.pdf 参照)
2019年の設備投資額はExxonMobilが311億ドルで最も多く、次いでShell(230億ドル)、Chevron(210億ドル)の3社が年間投資額200億ドル以上であった。その他2社はTotalEnergiesが174億ドル、bpは154億ドルであった。
2020年には各社とも設備投資は前年度を割り込み、ExxonMobilは▲100億ドル減の214億ドルに、Chevronも▲75億ドル減の135億ドル、Shellは▲60億ドル減の166億ドルに急減した。2021年はShellが前年より増加、TotalEnergiesは横ばいであったものの、ExxonMobil、bp、Chevronの3社は2年連続で減少した。
2022年に入り漸く各社とも投資増額に意欲を示しており、ExxonMobil及びShellが220億ドル台で並び、bp、TotalEnergiesの投資額は共に163億ドルであり、最も少ないChevronも120億ドルであった。
2023年はExxonMobilが5社の中で最も多い263億ドル、次いでShellが230億ドルであったがその他の3社はいずれも150億ドル台であり、TotalEnergiesおよびbpは前年横ばいであった。
(続く)
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前田 高行
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[1] 「設備投資」は各社決算資料から下記項目を抽出している。
ExxonMobil: Capital and Exploration Expenditures
Shell: Capital expenditure, Consolidated Statement of Cash Flow
bp: Capital expenditure
TotalEnergies: 12. Net investments
Chevron: Capital & Exploratory Expenditure, Worldwide
(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(10)
124イラクのクウェイト進攻と湾岸戦争(1/5)
ヒジュラ暦1400年、西暦1980年に始まったイラン・イラク戦争は、地上戦では一進一退の消耗戦の様相を呈し、またペルシャ(アラビア)湾では互いが相手の石油積出施設を空爆、さらにイランがペルシャ湾を航行する石油タンカーを攻撃し、ペルシャ湾の入口であるホルムズ海峡の封鎖をほのめかすなど事態はエスカレートしていった。しかしようやく1988年になって両国は国連の調停案を呑み停戦にこぎつけた。この時、イランのホメイニ師が停戦の受諾は「毒を呑むよりつらい」と語ったのは有名である。
イラン・イラク戦争はイラクにも大きな犠牲を強いた。内政は崩壊の一歩手前であった。しかしフセインは一筋縄ではいかぬ独裁者である。彼は災いを逆手にとって権力保持に突っ走った。国内では強権的手法を一層強め、二人の息子を使って部下には忠誠を強要し、南部のシーア派、北部のクルド族それぞれの住民を弾圧した。フセインと彼の忠実な部下たちは国内では少数派のスンニ派である。彼らは権力を失うと過酷な報復が待っていることを自覚している。だから部下たちはフセインの命令に絶対服従を誓い、反政府勢力を弾圧した。絶対的独裁政権が意外と強固なのはそれなりの理由があると言えよう。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com
2/27 出光興産
人事異動に関するお知らせ
https://www.idemitsu.com/jp/content/100044881.pdf
2/27 出光興産
米国レイクチャールズにおけるクリーンアンモニア製造プロジェクト検討について
https://www.idemitsu.com/jp/news/2023/240227.html
2/28 ENEOSホールディングス
ENEOSホールディングス株式会社および主要な事業会社の社長人事について (代表取締役の異動)
https://www.hd.eneos.co.jp/newsrelease/20240228_02_01_2003128.pdf
2/28 ENEOSホールディングス
ENEOSグループの運営体制の見直しについて
https://www.hd.eneos.co.jp/newsrelease/20240228_01_01_2003128.pdf
2/28 ENEOSホールディングス
コンプライアンスに関する取組みの再徹底に係る進捗について
https://www.hd.eneos.co.jp/newsrelease/20240228_03_01_2003128.pdf
2/28 ENEOSホールディングス
役員等の人事異動について
https://www.hd.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20240228_07_01_2003128.pdf
2/28 ENEOSホールディングス
組織の改正について
https://www.hd.eneos.co.jp/newsrelease/2003128_08_01_2003128.pdf
2/29 TotalEnergies
Singapore: TotalEnergies to Supply Sembcorp with 0.8 Mtpa of LNG for 16 Years
https://totalenergies.com/media/news/press-releases/singapore-totalenergies-supply-sembcorp-08-mtpa-lng-16-years
2/29 Chevron
chevron announces its first solar-to-hydrogen production project in california’s central valley
https://www.chevron.com/newsroom/2024/q1/chevron-announces-its-first-solar-to-hydrogen-production-project-in-californias-central-valley
3/1 JOGMEC
理事の交代について
https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_00167.html
3/1 JOGMEC
岩手県で新たな地熱発電所が稼働~安比地熱発電所が営業運転開始~
https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_00168.html
(英語版)
(アラビア語版)
(目次)
第5章:二つのこよみ(西暦とヒジュラ暦)(9)
123 ヒジュラ暦1400年(西暦1980年)前後(5/5)
このようにヒジュラ暦という尺度で歴史的事件を並べてみると、ヒジュラ暦1400年前後は中東イスラーム世界の大きな地殻変動、パラダイムシフトの時代であったと言えよう。その原動力はイスラームという宗教である。ヒジュラ15世紀の最初の10年の間(西暦1980~1989年)にムスリムたちはイスラームの教えに反する敵対勢力、背教者たちとの闘いを開始した。最初の敵が無神論の共産主義者アフガニスタン中央政府との闘いであった。その後現在に至るヒジュラ15世紀前半は、ムスリムの戦いはスンニ派対シーア派というイスラーム二大勢力の対立からイスラーム穏健勢力と原理主義が対立する構図となり、さらにイスラム国(IS)と呼ばれるカリフ制の仮想国家が既存の世俗国家に戦いを挑んだことは周知のとおりである。
日本の一向一揆のように宗教の鎧をまとった運動は始まったが最後どんどん過激化して行くものである。現代のイスラーム運動もその様相を色濃く帯びている。この運動は過激の極に達し、大衆の支持を失ったときに自滅して終焉する。仏教思想では「盛者必滅」ということになる。ただ争いがいつ終焉するかはわからない。まさに「神(アッラー)のみぞ知る」である。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com
III. 5カ年(2019-2023年) 業績推移の比較(続き)
(コロナ禍で2020年に激しい落ち込み、そして2022年は史上最高の利益!)
2.利益[1]
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-21.pdf 参照)
2019年から2023年までの5年間の5社の利益の推移を見ると、2019年はShellが158億ドル、次いでExxonMobilが143億ドルと続き、bp及びChevronの利益は3社を大幅に下回る40億ドルおよび29億ドルであった。
しかしコロナ禍が本格化した2020年には全社が赤字に転落、特にExxonMobil、Shell、bp3社は▲200億ドルを超す巨額の損失を計上、TotalEnergies、Chevronもそれぞれ▲72億ドル、▲55億ドルの赤字を余儀なくされた。2021年には一転して各社とも業績が急回復しExxonMobilの230億ドルを筆頭に全社が利益を計上、利益額は2019年の水準に戻った。
2022年には前年にも増して利益が急騰、ExxonMobilは史上最高の557億ドルの利益を達成し、その他各社もShell 423億ドル、Chevron 355億ドル、TotalEnergies 205億ドルの利益を確保している。但しbp1社のみはロシアプロジェクトの特別損失により▲25億ドルの欠損であった。2023年は世界経済の減速により業績は再び低下した。しかしExxonMobilの360億ドルをはじめ、各社の利益は軒並み高い水準を維持し、前期赤字であったbpも152億ドルの利益を計上している。
(2020年にマイナスに落ち込んだが過去3年は軒並み高い利益率を確保!)
3.売上高利益率
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-22.pdf 参照)
2019年は全社がプラスの利益率であったが、トップのTotalEnergies、ExxonMobilが5%台にとどまり、最も低かったbpは1.4%であった。そして2020年には全社の業績が赤字に転落、損失率もbpの▲19%を筆頭にExxonMobil及びShellが▲12%、Chevron及びTotalEnergiesが▲5%であった。
2021年は各社とも業績がV字型に回復し、Chevronの10.0%を筆頭に、ExxonMobil8.1%、TotalEnergies7.8%、Shell7.7%、bp4.6%といずれもプラスに転じた。2022年は各社の収益格差が拡大し、Chevron、ExxonMobil及びShellは二桁台の利益率を確保している。これに対して、bpは5社の中でただ1社▲1%のマイナスに転落している。
2023年も業績は順調に推移し、Chevron及びExxonMobilは共に10%台の利益率を確保した。他の3社も押しなべて好調でTotalEnergies9.0%、bp7.2%、最も低いShellも6.1%の利益率であった。5年間を通じて見るとChevronが高い利益率を維持しているのに対してbpは5社の中で最低水準にとどまっていることが特徴である。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行
〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
[1] 「利益」は各社決算資料から下記項目を抽出している。
ExxonMobil: Net income attributable to ExxonMobil (U.S. GAAP)
Shell: Incom/loss attributabel to shareholders
bp: Profit (loss) for the period; Attributable to BP shareholders
TotalEnergies: Netincome (TotalEnergies share)
Chevron: Net income