まつや清の日記 マツキヨ通信

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韓国ピョンチャン 生物多様性国際会議COP12 リニア・巨大トンネルテーマに8日~11日滞在

2014年10月07日 | ニュース・関心事


明日から3泊4日の韓国ピョンチャン生物多様性COP12に「巨大トンネルから森林を守る市民グループCOP12提言チーム」として「世界に例のない山岳トンネル工事をともなうリニア中央新幹線計画―愛知ターゲット達成に逆行する日本の巨大開発―」をかかげて乗り込みます。

どのような展開となるのか、現地ですべて判断するという、行ってみなければ何ができるか、わからない、おそろしく不定型なキャンペーン活動です。まさに闘いです。すでに坂田さん、久保田さんらは6日前から現地入りです。私も明日、通訳のMさんと12:20羽田フライトです。


世界に例のない山岳トンネル工事をともなうリニア中央新幹線計画
       ―愛知ターゲット達成に逆行する日本の巨大開発―

■リニア中央新幹線計画とは
日本の環境NGOは、JR東海と日本政府によるリニア中央新幹線計画に大きな衝撃を受けている。リニア新幹線は、超伝導磁気浮上方式で地面から10cm浮上して走行し、全長438km、東京―大阪間を時速500kmで走る計画だ。2027年までに東京―名古屋間、2045年には大阪までつながる予定で、総額工事費9兆円の予算だ。現在、東京―名古屋間286kmの事業が申請中であり、事業主であるJR東海は、この秋にも着工しようとしている。
日本は、山国だ。森林率は、フィンランドに次ぐ世界第二位で、国土の約70%が森林に覆われている。森林は水瓶であり、豊かで美しい湧水を生み出し、様々な生きものの命を育み、わたしたちの暮らしを支えている。さらに生物多様性に富んだ森林の豊富な栄養分は、川を流れ海にたどり着き、世界で最も生きものの種類が多いと言われる日本の海の生物多様性を作り出している。
この生物多様性を育む山々は、リニア新幹線工事計画によって何本もの地下トンネルで貫通される。東京―名古屋間286kmの内、なんとトンネル区間は、246kmもあり全体の86%にのぼる。この区間には、ユネスコによりエコパーク(生物圏保存地域)に登録された自然の宝庫である南アルプスも含まれており、22kmのトンネルが貫通しようとしている。
現代の科学的知見では、地下水の動きを完全に予測することは不可能である。したがって、地下水への影響が懸念される所は、地下水の漏水を防ぐのに適しているとされるシールド工法によるトンネル工事がこれまで行われてきた。しかし、かつて日本で行われた数々のトンネル工事では、異常出水の発生や地下水脈の遮断による湧水枯れ、河川の流量の減少を各地で引き起している。南アルプスの水を集める静岡県大井川は、トンネルが南アルプスを貫通するならば、毎秒2tもの減水が予想され、地域住民が深刻な水不足に陥ることは、事業者も認めている。
リニア新幹線によるトンネル工事は、車両の走行にためのトンネルだけでなく、約5km~10kmごとに非常口も兼ねた換気用の立坑も掘られる。残土の量は、6200万㎥にものぼり、具体的な処分場が未定のまま、工事が開始されようとしている。これまでの経緯から、沢や谷を残土によって埋められてしまうことが予測され、生態系の激変が懸念されている。

■生物多様性への影響

特に懸念されるのは、南アルプス地域である。南アルプス地域は、2014年6月にユネスコのエコパーク(生物圏保存地域)に登録された。ユネスコエコパークは、生物多様性保全上重要な地域の保全を大原則として指定されるものである。リニア新幹線の環境影響評価書には、南アルプスエコパークについての保全措置が極めて不十分であり、環境省から十分な保全を求める意見書が出たにもかかわらず、補正評価書に反映されていない。このような生物多様性の保全地域指定を無視したやり方は認められるものではない。
さらに評価書に対して、環境省から希少猛禽類の保全措置は回避が原則であることが意見として提出された。しかし、JR東海は、これについては完全に無視し、コンディショニングや代替巣の設置を保全措置としている。南アルプスはイヌワシやクマタカなど希少猛禽類の良好な生息地だが、これでは絶滅の一途をたどるばかりである。
トンネル工事による地下水脈破壊による植生の変化、環境の変化に弱い脆弱な生態系である高山地帯の生態系に対する影響、川の減水による淡水魚類への影響、電磁波による鳥類への影響などリニア新幹線は、大きな土地改変をともなうため生物多様性の破壊は、計り知れない。

■住民への説明不足と安全性への不安

これほどの自然環境の激変を起こすにもかかわらず、各地域で開催された住民説明会では、再質問が制限され事業者の一方通行の説明会となっている。地域住民の疑問には答えず、計画内容を一方的に通知するようなやり方に地域住民は不信感を募らせている。合意形成をするつもりがないとしか言えない状況だ。
リニア新幹線は、時速500kmを維持するため、カーブをできる限り少なくしている。そのため、活断層や中央構造線などを横切る。南アルプスでは2つの活断層が横切るが、地震大国日本では、トンネル破壊の可能性が高い。時速500kmで活断層を横切り、大深度を走るリニア新幹線に乗車するには、この恐怖に打ち勝つかなりの勇気が必要だ。
さらに、南アルプスのふもとの村である大鹿村は、地滑り地帯であるにもかかわらず、坑口の建設が予定されている。南アルプスは隆起し続けている山岳であり、1960年代に多数の死者を出した大鹿村では、この一帯が地滑りをひき起こしやすい地質であることは一般常識であるにもかかわらず、JR東海は、科学的根拠のない安全性を喧伝している。

■愛知目標を無視

リニア中央新幹線着工を強引に進めようとするJR東海と日本政府は、生物多様性条約を締結する国々の約束事を無視しようとしているとしか思えない。

【愛知目標2】
生物多様性の価値が、国家や自治体の開発や計画のプロセスに組み込まれることを促す目標だが、リニア中央新幹線計画には、生物多様性の価値についてなんら考慮されていない。
特に問題があるのは、事業主であるJR東海が提出した環境影響評価書である。事業者に有利なように描かれ、不利なことには触れないものとなっている。環境省や各自治体から厳しい意見が出たにもかかわらず、補正評価書はゼロ回答だった。
計画の内容を固める前の意思決定段階で、環境に影響を及ぼす影響を調査、予測、評価する戦略的環境アセスメントを実施すべきだが、日本では事業計画の決定が前提となっており、環境アセスメントが本来の役割を担えない。このような現状を改革すべきである。

【愛知目標5】
「2020年までに、森林を含む自然生息地の損失の速度を少なくとも半減、また可能な場合はゼロに」という目標は、リニア中央新幹線計画においては、徹底して無視されている。トンネル工事による山岳そのものの破壊、工事関連の道路拡張とダンプの走行(多い所では一日1700台通過の予想)、残土による沢や谷の埋立てなどによって、自然生息域は深刻なダメージを受ける。

【愛知目標10】
環境の変化に弱い脆弱な生態系の保護が目的とされているが、サンゴ礁と並び高山地帯における生態系は、非常に脆弱である。南アルプス一帯は、3000m級の山々が並び固有の高山生態系を維持している。南アルプスに計画されている深度1400mの地下トンネルは、水環境、地形の変化によって深刻な環境の変化をもたらす。

【愛知目標11】
保護地域の拡大、特に生物多様性にとって特別な地域が効果的に管理され、保全されることを目的としているが、ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)登録の意義を無視している。いくら保護地域に登録されても、適正な管理や保全がされなければ意味をなさない。

【愛知目標12】
絶滅危惧種の絶滅の防止、保全状況の改善が目標とされているが、南アルプスをはじめ、長大なトンネルによる水環境の破壊は、生き物の絶滅のスピードを顕著に早め、生物多様性を失わせる。ウヌワシ、クマタカ、ミゾゴイ、ヤマトイワナ、ギフチョウなど工事予定区間には、希少種、絶滅危惧種が多い。鳥類、淡水魚類、昆虫類、植物全般の絶滅危惧種は深刻な事態に陥ると思われる。

■CBD COP12への期待

リニア中央新幹線が完成されるとされている2045年頃には、シミュレーションによれば日本の人口は8000万~9000万人まで減少すると言われている。右肩上がりの経済成長を前提にしたリニア新幹線は、そんな未来にそぐわない。東京―名古屋間が開通しても、現存する東海道新幹線より約15分早くなるだけだ。たった15分のために、森林はどれほどの損失を被るだろうか。
トンネル工事は、一度掘ってしまうと取り返しがつかない。失敗したと分かったとしても、埋め戻したところで元には戻らない。地球が何億年もかけて作り上げた地層を作り直すことはできない。
これまでの開発で、わたしたちは数々の貴重な自然環境を失ってきた。しかし、これほどまでの自然破壊は日本の歴史上存在しない。また、これほどのトンネルによる森林破壊は、世界に例がない。今、時代の転換点にたち、残された自然を守り、少しでも再生して行こうとするのが世界の潮流だとわたしたちは考えている。日本では、リニア中央新幹線計画の中止なくして愛知目標の達成は不可能である。
CBD COP12は、2020年愛知目標達成に向けて、世界が真剣に現状を検証し、改善するための方法を模索する場所であるとわたしたちは信じている。達成年までわずか6年しかないにもかかわらず、さらなる環境破壊をひき起こす巨大開発は、世界から非難されるべき愚行だ。
日本政府とJR東海が、推進しようとしているリニア中央新幹線が、新しい科学技術が自然を守ることでなく自然を破壊することに使われ、自然と共に暮らすライフスタイルよりスピード重視の経済活動を優先するようなあり方が、世界の厳しい目にさらされることをわたしたちは期待している。

巨大トンネルから森林を守る市民グループCOP12提言チーム
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