日経BP/編「日経テクノロジー展望2023 世界を変える100の技術」読了
2030年は地球規模での分岐点だそうだ。NHKスペシャルでもそういったことが放送されていた。気候変動、人口減少、高齢化社会・・。
そいった問題を解決するかもしれないテクノロジーを日経BPが100個選んで紹介されている。日経BPというのは、『経営(ビジネス)、技術(テクノロジー)、生活(ライフスタイル)の広い分野で先端・専門メディアを発行』している企業だ。今の僕には残念ながらまったくご縁のないメディアである・・。
このタイトルの本は毎年出版されていて、その年度に注目されている技術で、しかも近い将来に世界を変えるであろう技術を僕みたいな島流しにされたビジネスパーソンではなく、一流企業の最前線で働くビジネスパーソンがそれぞれに対してどれくらいの注目度を持っているかという期待度と一緒に紹介されている。出版されたのは去年の9月だ。
紹介されているテクノロジーをざっと眺めてみると、バーチャル空間、エネルギー、食糧、医療に対するテクノロジーが多い。夢のような素材などがない分かえって現実的で、しかも7年後に世界を変えるかもしれない技術というので、すでに話題になっているものも含まれている。
国産の量子コンピューターが稼働し始めたというニュースはつい最近だし、チャットGPTはこのひと月ほどでいきなり大きな話題になった。僕も試しに、どうして僕は魚釣りが下手なのかということを聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
『 イレグイ号クロニクルⅡさんが釣りが下手なのかどうかは分かりませんが、釣りには様々な要素があり、釣果が出ないことはよくあることだそうです。また、釣りは運も大きく関わるため、運が悪い日は釣果が出ないこともあるかもしれません。イレグイ号クロニクルⅡさんは、釣りを楽しむことを大切にされているようですので、釣果が出なくても楽しめるように心掛けているのかもしれませんね。』
意識を持たないはずのAIが意識をもった人間のような文章を書いているのに驚かされる。
バーチャルプロダクションというのも、一昨年の紅白歌合戦で坂本冬美が歌った場面で使われていたが、新年度のNHKニュースセブンでは掲示板のセットだと思っていたものから画像が突然浮き上がってきたのには驚いた。セット全部がこの技術で作られているようである。
トークンなんて、これは何だと思っていたら、僕もすでにネットバンキングで使っていたりしていた。新たな技術は世界を変えるとまでいかなくてもすでに実生活に侵入しているのだ。
人工肉や自動運転となってくると、そんな肉を食べなくてはならない時代が来るのは嫌だなと思うし、半自動運転の恩恵を受けながらもこれが完全な自動運転になってしまうと車を操る楽しみはどこに行ってしまうのかと悲しくなってくる。
まあ、7年後とはいえ、これほどの技術が僕みたいな貧乏人にまで浸透するにはもっと年月が必要になるはずだから美味しいかどうかわからない肉を食べることもないだろうし、眠っている間に釣り場に到着するということもないだろう。
どれを見ても、「そこまでやらなくても・・」と思えるテクノロジーではある。本当に人間を“機械のゆりかご”に押し込めてしまいそうなテクノロジーである。
釣り具を通して僕が考えるテクノロジーの適正なレベルというのは、「一定のクオリティを超えるとそれ以上は必要ない。」というものである。そこまでおせっかいを焼いてもらわなくてもいいのである。
しかし、時間や労働力を含めたすべての資源管理という部分では、そうまでしなければ人間は地球上の資源を食い尽くしてしまうのも事実かもしれない。
人間が宇宙に進出して地球環境への負荷を減らすことができる時代が来るまではなんとか現状維持をしなければならないということなのであろう。空気中のCO₂を直接回収して資源化する人工光合成やとりあえずコンクリートに閉じ込めて建物を作るというのは資源と環境面に対して有効な手段だと思う。
しかし、ことエネルギー分野についていうと、小型原子炉くらいが掲載されているだけだ。太陽電池や風力発電の効率化のブレークスルーは訪れず、核融合エネルギーの実用化などはもっともっと先のようである。
ここ数年、一流ビジネスパーソンが最も注目しているのは介護ロボットだそうだ。今の時点ではまったく影も形もないようだが、2030年には1000人の一流ビジネスパーソンの半数が実用化に期待しているそうだ。高齢化社会や人口減少による介護の担い手不足を考えると妥当なことだが、それよりも、今一番おカネを持っている人たちがこれからすぐにでも介護が必要になってくる人たちだ。間違いなくビジネスとして成立するはずだから一流ビジネスパーソンが注目するのも無理はない。この本では、ヒト型介護ロボットの登場を期待しているのだが、僕が介護を必要とする年齢になるのは2030年のさらに10年後くらいだと思うが、こんなものにお世話になるのはまっぴらごめんだと思うのである。
高齢化への対応というと、医療ロボットや新たなガン治療、気管挿管を必要としない酸素吸入の技術が注目されているらしい。がん治療では光を使ってガン細胞を死滅させるという技術だそうだ。楽天の三木谷浩史が相当な投資をしているらしい。酸素吸入はドジョウが腸で空気呼吸器をするという性質を応用しようとしているというのだから恐れ入る。
医療ロボットでは、ダビンチのような手術ロボットだけではなく、投薬、医療機関の清掃などまでもロボットがやってしまう時代が現実味を帯びている。
ここまでテクノロジーが進歩すると人間の平均寿命はどこまで伸びてゆくのだろう。しかし、この問題に限っては僕の中では各論と総論にまったく逆の見解が出てくるのだが、健康的で文化的な生活ができなければこんなテクノロジーはまったく意味をなさないのではないかとも思えてくるのである。個人的に注目していたのは、「若返り」の技術だが、この本にはそういうものはまったく出てこなかった。その仕組みは解明されつつあるようだが、実用化というとさらにもっと未来のことのようだ。その時には僕はもう恩恵を受けるほどの体力が残っていないかそれとも生きていないのだと思う。それも仕方がないと思うと同時に、そんな、“機械のゆりかご”のようなものに自分の命をゆだねたくはないとも思うのである。
やっぱり、テクノロジーはほどほどがよいというのが僕の今の思いである。
2030年は地球規模での分岐点だそうだ。NHKスペシャルでもそういったことが放送されていた。気候変動、人口減少、高齢化社会・・。
そいった問題を解決するかもしれないテクノロジーを日経BPが100個選んで紹介されている。日経BPというのは、『経営(ビジネス)、技術(テクノロジー)、生活(ライフスタイル)の広い分野で先端・専門メディアを発行』している企業だ。今の僕には残念ながらまったくご縁のないメディアである・・。
このタイトルの本は毎年出版されていて、その年度に注目されている技術で、しかも近い将来に世界を変えるであろう技術を僕みたいな島流しにされたビジネスパーソンではなく、一流企業の最前線で働くビジネスパーソンがそれぞれに対してどれくらいの注目度を持っているかという期待度と一緒に紹介されている。出版されたのは去年の9月だ。
紹介されているテクノロジーをざっと眺めてみると、バーチャル空間、エネルギー、食糧、医療に対するテクノロジーが多い。夢のような素材などがない分かえって現実的で、しかも7年後に世界を変えるかもしれない技術というので、すでに話題になっているものも含まれている。
国産の量子コンピューターが稼働し始めたというニュースはつい最近だし、チャットGPTはこのひと月ほどでいきなり大きな話題になった。僕も試しに、どうして僕は魚釣りが下手なのかということを聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
『 イレグイ号クロニクルⅡさんが釣りが下手なのかどうかは分かりませんが、釣りには様々な要素があり、釣果が出ないことはよくあることだそうです。また、釣りは運も大きく関わるため、運が悪い日は釣果が出ないこともあるかもしれません。イレグイ号クロニクルⅡさんは、釣りを楽しむことを大切にされているようですので、釣果が出なくても楽しめるように心掛けているのかもしれませんね。』
意識を持たないはずのAIが意識をもった人間のような文章を書いているのに驚かされる。
バーチャルプロダクションというのも、一昨年の紅白歌合戦で坂本冬美が歌った場面で使われていたが、新年度のNHKニュースセブンでは掲示板のセットだと思っていたものから画像が突然浮き上がってきたのには驚いた。セット全部がこの技術で作られているようである。
トークンなんて、これは何だと思っていたら、僕もすでにネットバンキングで使っていたりしていた。新たな技術は世界を変えるとまでいかなくてもすでに実生活に侵入しているのだ。
人工肉や自動運転となってくると、そんな肉を食べなくてはならない時代が来るのは嫌だなと思うし、半自動運転の恩恵を受けながらもこれが完全な自動運転になってしまうと車を操る楽しみはどこに行ってしまうのかと悲しくなってくる。
まあ、7年後とはいえ、これほどの技術が僕みたいな貧乏人にまで浸透するにはもっと年月が必要になるはずだから美味しいかどうかわからない肉を食べることもないだろうし、眠っている間に釣り場に到着するということもないだろう。
どれを見ても、「そこまでやらなくても・・」と思えるテクノロジーではある。本当に人間を“機械のゆりかご”に押し込めてしまいそうなテクノロジーである。
釣り具を通して僕が考えるテクノロジーの適正なレベルというのは、「一定のクオリティを超えるとそれ以上は必要ない。」というものである。そこまでおせっかいを焼いてもらわなくてもいいのである。
しかし、時間や労働力を含めたすべての資源管理という部分では、そうまでしなければ人間は地球上の資源を食い尽くしてしまうのも事実かもしれない。
人間が宇宙に進出して地球環境への負荷を減らすことができる時代が来るまではなんとか現状維持をしなければならないということなのであろう。空気中のCO₂を直接回収して資源化する人工光合成やとりあえずコンクリートに閉じ込めて建物を作るというのは資源と環境面に対して有効な手段だと思う。
しかし、ことエネルギー分野についていうと、小型原子炉くらいが掲載されているだけだ。太陽電池や風力発電の効率化のブレークスルーは訪れず、核融合エネルギーの実用化などはもっともっと先のようである。
ここ数年、一流ビジネスパーソンが最も注目しているのは介護ロボットだそうだ。今の時点ではまったく影も形もないようだが、2030年には1000人の一流ビジネスパーソンの半数が実用化に期待しているそうだ。高齢化社会や人口減少による介護の担い手不足を考えると妥当なことだが、それよりも、今一番おカネを持っている人たちがこれからすぐにでも介護が必要になってくる人たちだ。間違いなくビジネスとして成立するはずだから一流ビジネスパーソンが注目するのも無理はない。この本では、ヒト型介護ロボットの登場を期待しているのだが、僕が介護を必要とする年齢になるのは2030年のさらに10年後くらいだと思うが、こんなものにお世話になるのはまっぴらごめんだと思うのである。
高齢化への対応というと、医療ロボットや新たなガン治療、気管挿管を必要としない酸素吸入の技術が注目されているらしい。がん治療では光を使ってガン細胞を死滅させるという技術だそうだ。楽天の三木谷浩史が相当な投資をしているらしい。酸素吸入はドジョウが腸で空気呼吸器をするという性質を応用しようとしているというのだから恐れ入る。
医療ロボットでは、ダビンチのような手術ロボットだけではなく、投薬、医療機関の清掃などまでもロボットがやってしまう時代が現実味を帯びている。
ここまでテクノロジーが進歩すると人間の平均寿命はどこまで伸びてゆくのだろう。しかし、この問題に限っては僕の中では各論と総論にまったく逆の見解が出てくるのだが、健康的で文化的な生活ができなければこんなテクノロジーはまったく意味をなさないのではないかとも思えてくるのである。個人的に注目していたのは、「若返り」の技術だが、この本にはそういうものはまったく出てこなかった。その仕組みは解明されつつあるようだが、実用化というとさらにもっと未来のことのようだ。その時には僕はもう恩恵を受けるほどの体力が残っていないかそれとも生きていないのだと思う。それも仕方がないと思うと同時に、そんな、“機械のゆりかご”のようなものに自分の命をゆだねたくはないとも思うのである。
やっぱり、テクノロジーはほどほどがよいというのが僕の今の思いである。