ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

45年目の大失敗

2023年11月12日 | ひとりごと
こんなこと恥ずかしくて書けないと思ったけど、こんなことだからこそ書かないとって思う。

今日は生徒たちの発表会が行われるはずの日だった。
いや、正確に言うと、わたしがそう思い込んでいた日だった。

10月の中旬に提出した契約書に書いたとおりの時間に、会場であるユダヤ教のお寺に行った。
けれどもなんだか様子がおかしい。
やけにしんとしていて、人っ子ひとりいない。
ユダヤ教では金曜日の日没から土曜日の日没はシャバスと呼ばれる安息日なので、もしかしたらそれで来ないのかも、などと夫が言う。
いや、そんなことを今頃言われても…それに去年もここでやったけど、その時も11月の土曜日だったのだ。
しかも、契約書にも、10月にやり取りしたメールでも、わたしは一貫して11日と記入してきた。
ほら見て、と夫の目の前に携帯のメール画面を突きつける。
なるほど、じゃあ遅れてるのかもな。

とりあえず、うちから持ってきた高さを調節できるピアノ椅子とペダル台を車から下ろした。
休憩時用の飲み物とスナック、それから記念トロフィーや花束なども入り口近くに運び終え、もうあとは中に入るのみ。
けれどもいくらブザーを押しても返事が無い。
モヤモヤと嫌な予感がわいてきた。
前に一度だけ、うちから歩いて行けるところにある教会を借りた時、事務局と当日の係の人たちとの連絡がうまくついていなくて、もう少しで中止になりそうだったことがあったのだけど、その時はその教会の前をたまたま通りかかった内輪の人が、慌てて連絡をしてくれて事なきを得た。
今回の場所は、そんなふうに内輪の人がたまたま前を通りかかるような場所ではなく、とにかく誰かが来てくれないことには始まらない。
生徒や親御さんたちがどんどんとやって来る駐車場の一角で、夫とわたしはなんとかして責任者と連絡をつけようと足掻いていた。
結局、リサイタルは明日という予定を組んであるので今日は無理です、と言われてしまい、わたしは動転するやら腹が立つやら。
でも仕方がないから、来る人来る人に謝りながら明日への延期を伝えた。
今日のために都合をつけたのだから、明日は来られなくなる人が当然出てくる。
今日のために本当に頑張って練習してきたのに、明日になっちゃったから弾けない人が数人いる。
ものすごく遠いところから、友人や家族を乗せてやって来てくれた人たちがいる。
猛烈に申し訳なくて、猛烈に腹が立って、猛烈に悲しくて、頭がどうにかなってしまいそうだった。

ようやく連絡がついたオフィスマネージャーに、だからわたしは噛みついた。
どうしてくれるんだと猛烈に抗議した。
そしたらなんと、6月に日時を決めた時は、12日になっていたと言う。
そのメールのやり取りが送られてきて、わたしはそれらを唖然として読みながら、それでは一体いつ、わたしの頭の中で11日にすり替わっていたのかを知りたかったのだが、どこをどう探しても見つからない。
でも、先月の18日にお寺に送った、契約書の提出についてのメールは、そもそもタイトルからして『11月11日のリサイタル』だったし、メール中の文章にも一貫して11日と書いてあった。
そしてその後に提出した契約書にも、当然11月11日と記入した。
その時に、何言ってんですか、こちらのスケジュールには12日となっていますよ、と言ってくれてたら…というのは責任転嫁なのだろう。
悪いのはわたしだ。

というわけで、ピアノ教師を生業にしてから45回目の発表会で、わたしは大失敗をやらかしてしまった。
もう本当に穴があったら入りたい気分だけど、明日は今日の分も頑張らねば、わたしの大ボケのために大変な目に遭った人たちに申し訳が立たない。
出られなくなった人たちには申し訳なんて全く立たない。
その人たちは来週末にうちでサロンコンサートを開いて、今日のために用意したドレスを着て弾いてもらうことにしたけど、それを考えただけで涙ぐんでしまう。

生徒の親御さんたちから続々とメールが送られてきて、帰りにアイスクリームを食べに行って楽しく過ごした、練習する時間が増えてよかった、時にはこんなことが起こるのが人生だ、わたしたちよりまうみが辛い思いをしているはずだ、明日はめっちゃ楽しもう、今日より以上に応援する、などと優しい言葉をかけてくれて、またまた涙ぐんでしまう。
ごめんねみんな。
コメント
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