わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 125 釉薬の性質を変えるには7?

2015-04-27 20:28:28 | 素朴な疑問

① 石灰三号釉をベースに他の基礎釉を作る。(前回の続きです。)

 ⅰ) 結晶釉を作る。

   結晶釉とは、釉の内部又は表面に目に見える程の大きさの結晶が現れた釉です。

   小さ過ぎて目に見えなくとも、顕微鏡などで確認できる程度の結晶の場合、艶消し

  (マット)釉になります。大きな結晶を作る一般的な酸化物は、亜鉛、チタン、鉄、

   ルチールなどがあります。酸化物の種類によって発色も変化します。

   a) 亜鉛結晶釉: 酸化亜鉛は亜鉛華(あえんか)と呼ばれて市販されています。

    石灰釉に含まれる珪酸と結合して、珪酸亜鉛と呼ばれる大きい扇状の結晶と

    なります。結晶釉の中で最大の結晶を作るとも言われています。

     石灰三号透明釉:酸化亜鉛(亜鉛華) = 100:20~25

    他の結晶釉と比べ、亜鉛華の添加量は格段に多くします。

    尚、酸化ニッケルを1%(1g)添加すると、緑色の釉になります。

   ・ 一般に、作品の何処に結晶が出るか、を予め予想する事はできません。

    出た所勝負になります。

   ・ 亜鉛華を10%程度添加した場合は、結晶釉には成りませんが、融点を下げる

    働きがあります。釉の熔ける温度を下げる一般的な方法です。

   b) チタン結晶釉: 酸化チタンは安定した強力な結晶剤です。

    白濁した(または少しマット化した)パール状に輝く細かい結晶釉です。

     石灰三号透明釉:酸化チタン = 100:10

   c) 鉄結晶釉(鉄赤釉): 茶色地に赤色の結晶が出る釉です。

     石灰三号透明釉:酸化鉄:マグネサイト :骨灰 = 100:15:7:12

     酸化鉄は弁柄を使う事が多いです。

   d) ルチール結晶釉: ルチール結晶釉は朱金地釉と呼ばれる、朱赤の地に金色の

    結晶が生ずる釉です。酸化ルチールは、「金紅石(きんこうせき)」と呼ばれ、

    鉄分を含むルチール鉱物です。酸化チタンと同様な結晶を作りますが、

    鉄分が含まれる為、酸化焼成では乳濁したクリーム色に、還元焼成では青味

    掛かった乳濁釉になります。

     石灰三号透明釉:酸化ルチール = 100:10

   e) 茶金石結晶釉:茶褐色の地に金色の砂鉄の様な細かな結晶がキラキラと輝く

    結晶釉です。

    石灰三号:酸化鉄:酸化チタン:マグネサイト:亜鉛華  =100:10:11:13

     酸化鉄を黒浜(砂鉄)に置き換えると、更に変化に富んだ結晶が得られます。

   尚、結晶を成長させる為には、徐冷をすると良いと言われています。徐冷の方法は

   結晶釉によって若干の違いがありますが、おおよそ焼成温度より100~200℃

   程度低い温度で数時間保持すると良いとの事です。

   但し、上記調合例は、窯の焚き方など色々な条件で、結晶の出具合も変化しますので、

   一つの参考として読んで下さい。

   (必ずしも、結晶が出来る事を保障するものではありません。)

以下次回に続きます。

コメント (2)
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