① 石灰三号釉をベースに他の基礎釉を作る。(前回の続きです。)
ⅰ) 結晶釉を作る。
結晶釉とは、釉の内部又は表面に目に見える程の大きさの結晶が現れた釉です。
小さ過ぎて目に見えなくとも、顕微鏡などで確認できる程度の結晶の場合、艶消し
(マット)釉になります。大きな結晶を作る一般的な酸化物は、亜鉛、チタン、鉄、
ルチールなどがあります。酸化物の種類によって発色も変化します。
a) 亜鉛結晶釉: 酸化亜鉛は亜鉛華(あえんか)と呼ばれて市販されています。
石灰釉に含まれる珪酸と結合して、珪酸亜鉛と呼ばれる大きい扇状の結晶と
なります。結晶釉の中で最大の結晶を作るとも言われています。
石灰三号透明釉:酸化亜鉛(亜鉛華) = 100:20~25
他の結晶釉と比べ、亜鉛華の添加量は格段に多くします。
尚、酸化ニッケルを1%(1g)添加すると、緑色の釉になります。
・ 一般に、作品の何処に結晶が出るか、を予め予想する事はできません。
出た所勝負になります。
・ 亜鉛華を10%程度添加した場合は、結晶釉には成りませんが、融点を下げる
働きがあります。釉の熔ける温度を下げる一般的な方法です。
b) チタン結晶釉: 酸化チタンは安定した強力な結晶剤です。
白濁した(または少しマット化した)パール状に輝く細かい結晶釉です。
石灰三号透明釉:酸化チタン = 100:10
c) 鉄結晶釉(鉄赤釉): 茶色地に赤色の結晶が出る釉です。
石灰三号透明釉:酸化鉄:マグネサイト :骨灰 = 100:15:7:12
酸化鉄は弁柄を使う事が多いです。
d) ルチール結晶釉: ルチール結晶釉は朱金地釉と呼ばれる、朱赤の地に金色の
結晶が生ずる釉です。酸化ルチールは、「金紅石(きんこうせき)」と呼ばれ、
鉄分を含むルチール鉱物です。酸化チタンと同様な結晶を作りますが、
鉄分が含まれる為、酸化焼成では乳濁したクリーム色に、還元焼成では青味
掛かった乳濁釉になります。
石灰三号透明釉:酸化ルチール = 100:10
e) 茶金石結晶釉:茶褐色の地に金色の砂鉄の様な細かな結晶がキラキラと輝く
結晶釉です。
石灰三号:酸化鉄:酸化チタン:マグネサイト:亜鉛華 =100:10:11:13
酸化鉄を黒浜(砂鉄)に置き換えると、更に変化に富んだ結晶が得られます。
尚、結晶を成長させる為には、徐冷をすると良いと言われています。徐冷の方法は
結晶釉によって若干の違いがありますが、おおよそ焼成温度より100~200℃
程度低い温度で数時間保持すると良いとの事です。
但し、上記調合例は、窯の焚き方など色々な条件で、結晶の出具合も変化しますので、
一つの参考として読んで下さい。
(必ずしも、結晶が出来る事を保障するものではありません。)
以下次回に続きます。