4) 蓋物のトラブル。
① 器と蓋の寸法が合致しない。
良く起きるトラブルですので、注意が必要です。
不都合なのは、器と蓋の接合部(合わせ目)がピッタリ合わない事です。
蓋が大き過ぎ閉まらない事も多いです。但し蓋が小さくて隙間が大きくガタガタ
しても、使用上は問題に成りません。当然、この様に成らない様に、一個作りの
際には、現物合わせで隙間を調整する事になります。
合わせ目が円形の場合には一か所だけでなく、どの方向でも蓋が合致する様に
します。
② 蓋が歪む為に組み合わない。
蓋の形状にもよりますが、蓋が歪む事も有ります。特に轆轤挽した直後では、一番作品
が縮みますので、狂いも大きくなり易いです。その他焼成中にも歪みます。
一般に、蓋は丸味のある凸状に成っている物が多いです。平らな物は凸状と比べて変形
する事が多いです。更に蓋の直径が大きい程、乾燥時や焼成時に歪み易いです。
器の口縁周辺を若干高くし、落とし蓋にすると納まりの良い形になります。
③ 焼成で起こるトラブルは、釉が合わせ目に入り込み、溶着してしまう事です。
その為、蓋を開ける事が出来なくなります。この場合の解決策は、溶着部分を物理的
方法で剥がす事になります。具体的には、溶着部分が一か所の場合で、溶着範囲が比較
的狭い時には、溶着部分を根気よくハンマー等で軽く叩き続ける事です。
但し、溶着部分を破壊する恐れも大きいですので、クッション材を利用して慎重に
作業します。ある程度蓋が動き始めたら、テコの応用で先の細い金属類で、こじ開け
ます。更に細工用のダイヤモンドヤスリの先端が、蓋と本体の隙間に入る事が出来る
場合には、その隙間にこじ入れて徐々に削り取る方法もあります。
④ 上記の状態に成らない為には、施釉の際接合部分に釉が付着させない事です。
蓋側と本体側の両方共必要です。若し、釉が掛かった場合には、水で濡らした
スポンジ等で綺麗に拭き取ります。更に、水で溶いだ水酸化アルミナ等の溶着
防止剤を筆等で塗っておきます。
基本的には、蓋をした状態で、本焼きしますが、蓋と本体を別々に焼成する
事もあります。前者で有れば、例え形が狂っても、その位置でなら蓋が出来る
事に成りますが、後者であれば、溶着する恐れは在りませんが、形が狂った
場合には、何処でも合わない事になります。別焼きの場合、施釉する範囲は
若干広くなりますが、施釉の為肉厚が大きく成りますので、釉の厚みにも注意
が必要です。又、蓋に蒸気抜きの為に小さな孔を開ける場合があります。
この場合も施釉後に、息を吹き掛けて釉を飛ばします。
⑤ 溶着部分が広い場合には、残念ながら蓋が取れず諦める事になります。
蓋物の場合、蓋の取れない作品は、ほとんど使いものに成りません。
最初から作り直す方が、肝銘です。
⑥ 蓋物で注意する点は、器内部の物(食品、料理等)を取り出す際に、器側の
口縁が邪魔になり易いですので、成るべく簡単な構造にする事です。
特に内側に反り返る蓋受けでは、器側の口径を狭くしますので、出来るだけ狭く
するか、無くす構造にした方がより実用的になります。