用事で支笏湖を通ったら、カヌーやサップに乗っている方々がいた。
ちなみにサップとは、イカダのようなボードの上に立ち、バトルで漕ぎながら水の上を進むもので、最近はカヌーより人気なのだとか。
波のない穏やかな水面を進んでいくのを見ていると、気持ちがいいだろうなあと思う。
カヌーを見て思い出したのは、いつも髪を切ってもらう美容師さん。
60代の男性だが、思わず二度見するほど派手で、背中まで伸ばした長い髪を真っ赤に染めて、いつもロックンローラーかと思うような奇抜なファッションをしている。
でも話してみると、ごく普通のおじさんで趣味はカヌーと一人キャンプと言っていた。
姿から想像すると、絶対に音楽(ロックンロール)とかをやっていそうで、アウトドアから一番遠いところにいる人という感じだが、人は見かけによらないものだと思う。
「趣味がキャンプとカヌーだなんて言うと、お金かかりそうだと思うでしょ?でもね、そんなにかからないんです」
そう言って、以前髪を切りに行った時に色々なことを教えてくれた。
美容師さん曰くカヌーと救命胴衣は、必ず買わないといけないけど、今は安いカヌーでも安全性は高いのだとか。
またキャンプもお金を少しでもかけないように、キャンプ場ではない場所でキャンプをするという徹底ぶり。
キャンプをする条件は近くにトイレがある所で、テントを張っても良い場所かどうかということ。場所によっては(公園など)テント禁止だったり火気厳禁ということもあるので、これはよく確認するのだとか。
そして、美容師さんが一番ゆずれない条件は水辺が近いこと。
てっきりそこでカヌーをするのかと思ったら、そうではなくて釣りをするそうだ。
釣った魚はもちろん夕飯のおかずになるし、釣れなくても趣味として楽しめたので良いそうだ。
「じゃあカヌーはどこでするんですか?」と聞くと「カヌーは支笏湖でしか乗りません」とおっしゃった。
よく川や海でカヌーをしている人がいるが、波があったり流れが早かったりするので、安全第一に考えて支笏湖でしか乗らないそうだ。
でもたまに天候によっては支笏湖でも波がある。
そういう日は、見知らぬ者同士が、今日はやめておいた方がいいねとなって、みんな乗らずに帰るのだという。
「ところがみんなが帰ろうと言っているのに、一人だけカヌーに乗って沖に出て行った人がいたんです。そうしたら、今度は誰一人帰ろうとしないんですよ。一人で出て行った人に、もしものことがあったら救助に向おうとして、みんな待機しているんです。いやーすごいなあと思いましたよ。こういうことも含めてカヌーが好きなんですよ」とおっしゃった。
色々なお話を聞きながら、きっとこういう人は非常事態には強いだろうなあと思う。
寝る場所さえあれば、生き延びて行くのではないだろうか。
「今度、孫と一緒にカヌーに乗ろうと思って、二人乗りのカヌー買ったんですよ」
そうおっしゃた美容師さんの顔が、ロックンローラーから優しいおじいちゃんの顔に変わっていた。
支笏湖でカヌーに乗る人。気持ちが良さそう、、、(美容師さんではありません)