鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

リチャードⅢ世②*科白の上手さが、明暗を分ける

2009-01-25 20:58:48 | Weblog
よく晴れた寒い日曜日。

昨日の続き。

この舞台、嘆き悲しみ呪いのセリフしかない女優陣が、ほんとに上手な方ばかり。
まず、ヨーク公夫人の三田和代さん。
そんなに高い声ではないのに、あのセリフの抑揚、通りのよさは、さすが、モト劇団・四季の看板女優さんで、久々にお目にかかったのだけれど、上品なお美しさは、変らない。
ヨーク公夫人の死の迫った深く静かな悲しみを抜群の演技力で演じきっていた。
80歳の老婆役だが、そんな姿には、全く見えないのに、何故か違和感がない・・・。
紫色を基調としたお衣装もとてもよい雰囲気だった。
対照的なのが、ランカスター家のマーガレット元王妃役の銀粉蝶さん。
この人の吐き続ける呪いの言葉も凄まじい・・・あの長セリフを淀むことなく言い続けられる技量は凄い。
オドロオドロシさも抜群だった。
久世星佳さんのエリザベスは、朱色の着物調の衣装と髪の色を合わせ、したたかな王妃をよく通るお声で演じられていた。

・・・この三人を相手に、どうしても見劣りがしてしまったのが、アン役の安田成美さん・・・。
痛々しいまでに悲劇のヒロインを演じなければならないのに、控えめすぎた・・・いや、まわりの女優陣が凄すぎたのか・・・。生彩に欠けたアンになってしまっていた。
やはり、添え物程度か・・・と少し残念。あんなに繊細で、綺麗なのに・・・演技で引いてしまっていた。
私見だが、アン役は、新感線の高田聖子さんでも充分いけたのでは・・・と思うのだけれども・・・。

女優さんは、愁嘆場での見せ所の多いドラマけれど、男優さんも、あの難しいセリフに振り回されず、流石・・・と思われるのが、エドワード四世役の久保酎吉さん。普段は、善良なお父さんや、頑固な職人さんといった役が多いけれど、奇抜な衣装もまた不思議な雰囲気。
若松武史さんも独特の雰囲気で、善良なクラレンス役を演じられていた。
榎木孝明さんのスタンリー卿役も後半、舞台の空気を登場するだけで変えてしまう技量は凄い。
前半、あまり登場がなかっただけに、よけいそう思えるのか・・・。

昨日のブログで、新感線色の少ない舞台・・・と評してしまったけれども、やはり、シェイクスピアは、セリフが、きちんと言える役者さんでないと勤まらないということがよくわかったような気がする。
特に、現代風になどの脚色がなく、原本を忠実にドラマ化するのには、まず、正確な発音、抑揚ができないと問題外なのだろう・・・。
それが出来ないと、演技がついていかない。
膨大なセリフだし、ある程度、スピードを出さないと、上演時間内におさまらないということもあるのだろう思う。


演劇は、シェイクスピア以前、ベケット以降・・・(これでよかったかな???或いは逆?シェイクスピア以降、ベケット以前だったか・・・???)と言われているけれど、お客さんも少し勉強していかないと楽しめないか・・・。古典は・・・。

明日もまだ、続きます。