底冷えのする灰色の雪雲。
美術館には、学芸員という職業のひとがいる。
展覧会の企画や作品のレイアウト、展示資料の作成など美術品に関するエキスパートな職業だと思う。そして、もうひとつの職業として、展示物の監視員という仕事もあるようだ。
コレは、学芸員の仕事なのか、或いは、パートタイムやアルバイトなのか・・・そのへんのところは、よくわかないけれど、決まった時間、部屋の隅の椅子に座っている職業だ。
・・・たぶん・・・ものすごく、退屈だろうと思う。
展示品などに関する質問などもあるだろうから、知識も必要になってくるから、事前の研修などもあるのかも?
そして、たぶん、私には、絶対に勤まらない職業だと思っている。
美術館などで、騒ぐのは、せいぜい小学校の低学年くらいだろうし、美術館は、本来、静かなものだから、たぶん15分くらい座っていたら、眠くなるに決まっている。
以前、東京芸術大学に併設されている美術館を訪れたことがあるが、一緒に同行した家人は、ガムを噛んでいた。
監視員の方は、ティッシュペーパーを差出し、口の中のガムを撤去するよう注意をした。不届きなギャラリーが、作品にガムや飴などを付着させることもあったのだろう。
収蔵品が、ガラスケースの中にある場合には、問題ないが、直に見られる展示物に関しては、神経を使うところだろう。
ボールペン、万年筆などの持ち込みは、ご遠慮下さいとチケットの裏面に記載されているから、模写などは、館員の許可がいるのかもしれない。
作品をガードする・・・作品毀損の抑止力という意味で・・・という点からも、この監視員の職業は不可欠なものなのだろうけれど。
私は、どうも、見られているようで、イヤなのだ(こういうところが、自意識過剰なのね。見てないよ。アンタのことなんか・・・みたいな顔をされているような気がする)
ギャラリーが、同行者にちょっと冗談を言っても、聞いていないふりをする。
可笑しくても顔に出さない・・・。
無表情で、空間の中にいる。
けれども、美術館の備品には、なりえない。
どうしても気になる存在で、特に、監視員の近くにある展示物を見るときには、こっちが気を使ってしまう。
一流の監視員とは、美術館の一部(或いは空気)になってしまえる人なのだと思う。
気配を消すには、忍者並みのものすごい修行が必要な職業なのだ(たぶん・・・)。
私が監視員なら、仕事始めの最初の15分は、夕食の献立を考える。
それから、買い出しの手順を考えて、それから、昼食に何を食べようかと考える・・・そして・・・他にもう考えることが無いから、ギャラリーの観察をする・・・美形のお客さんがいたら、嬉しいかもしないなんて思うあたり、もう監視員としては、失格なのだろう・・・たぶん・・・。