俳句大学投句欄よりお知らせ!
〜季語で一句 32 〜
◆『くまがわ春秋』7月号が発行されました。
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永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R4.7月号)
梅雨晴(つゆばれ) 「春-天文」
大工原一彦
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ベートーヴェンのやうなモップや梅雨晴間
【永田満徳評】
梅雨の合間の貴重な晴れを利用して拭き掃除をしているのである。「モップ」がぼさぼさの髪の毛をしていた「ベートーヴェン」のようだという表現はユーモアがあり、「梅雨晴間」の気分をうまく捉えている。
【季語の説明】
「梅雨晴間」は梅雨の合間の晴れ間のこと。五月(さつき)は旧暦の5月のことであり、梅雨の最中である。長く晴れない時だけにちょっとした晴れ間はありがたい。梅雨は別名「黴雨(つゆ・ばいう)」といい、黴が生えやすい時季。噎せ返る暑さに近いものがある。現在では、新暦5月の晴れを〈五月晴れ〉として使う。
鵜飼(うかひ) 「夏-生活」
西村楊子
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生業の命綱なり鵜縄引く
【永田満徳評】
鵜匠が持つ綱は鵜の首に繋がっていて、鵜が口に入れた鮎を吐き出させて、魚を捕る。「命綱」という措辞には、「生業」のすべてが「鵜縄」の一本に掛かっている鵜飼の厳しさを詠んでいて、心惹かれる。
【季語の説明】
「鵜飼」は飼いならした鵜を使って鮎などを獲る伝統的な漁法。逃げるときには丸のみして、喉にためた魚を吐き出す鵜の習性を生かしたもの。鵜飼を行う漁師を、鵜匠(うしょう・うじょう)と呼ぶ。篝火には照明としての役割だけではなく、鮎を驚かす役割がある。長良川、肱川、三隈川の鵜飼は三大鵜飼と呼ばれる。
蟻(あり) 「夏-動物」
西村楊子
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行列を外るる蟻のゐやせぬか
【永田満徳評】
「蟻」の姿は働き者の模範。アウトロー的な存在を許さない管理社会に生きる現代人にとって、はみ出す者もいてもいいと思い、「行列を外るる」ことへの憧れを怠け者の蟻に見ているところがおもしろい。
【季語の説明】
「蟻」はアリ科に属する昆虫。人家の近くにも多く、身近な昆虫のひとつ。繁殖のために産卵を担う女王蟻、育児や食事調達を担う働き蟻、餌を得るための狩りや巣の防衛を担う兵隊蟻がいて、大きな群れを形成してくらす社会性がある。怠け者もいて、働き蟻が動けなくなった時に働きだし、コロニーを保っている。