俳句大学投句欄よりお知らせ!
〜 季語で一句 (50】 〜
◆『くまがわ春秋』2024年1月号(第94号)が発行されました。
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永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R6.1月号)
炭(すみ) 「冬-生活」
中野千秋
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子に託すものの幾つか炭をつぐ
【永田満徳評】
炭起こし、炭つぎのある生活は丁寧に暮らす日本文化そのものだった。ご先祖が「炭をつぐ」ように、家風を代々引き続きながら、次に「子に託すものの幾つか」をしみじみと考えているところがいい。
【季語の説明】
「炭」は木炭のことで、木材から水蒸気やガスが抜けて炭素のみが残ったもの。炭を起こすことを〈つぐ〉という。火の種が途切れないように継ぐのである。石油や都市ガスなどが普及するまでは木炭・練炭・炭団などが火鉢・炬燵などの暖房火源であった。上質炭が用いられる茶道の炭には枝炭、花炭などがある。
おでん(おでん) 「冬-生活」
古賀寛昭
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ぶるるんとほろほろと食ぶおでんかな
【永田満徳評】
「おでん」はおでん屋や屋台が独自の味付けで人気を競っている。「ぶるるん」「ほろほろ」のオノマトペを有効に使って、大根やこんにゃく、ゆで卵などの具材をおいしく食べている様子がうまく表現されている。
【季語の説明】
「おでん」は日本料理のうち、煮物の一種で、鍋料理にも分類される 。鰹節と昆布でとった出汁、種と呼ばれる様々な具材を入れて長時間煮込む。おでん種としては薩摩揚げ、はんぺん、焼きちくわ、つみれ、こんにゃく、大根、芋、がんもどき 、牛すじ、ゆで卵、厚揚げなどの他、地域の特色のあるおでん種、味付けがある。
冬木(ふゆき) 「冬―植物」
Anikó Papp(ハンガリー)
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親密な静寂の中に冬木かな
【永田満徳評】
「冬木」と言ったら、葉の落ちた木のほうが冬木の感じが色濃い。葉を落ち尽くし、錯綜とした枝だらけの状態は「親密」であり、物音の途絶えた森閑とした冬木立の周辺の様子は「静寂」そのものである。
【季語の説明】
「冬木」とは常緑樹、落葉樹を問わず、樹木の冬の景。しんと静まりかえった冬木立だけの世界は冬ならではの風景である。俳句ではどちらの樹木でも冬木、冬木立として詠む。葉をすべて落とした落葉樹は寒々しくもあり、淋しくもある。葉をつけたままの常緑樹は鬱蒼とした姿で冬を乗り切る姿が凛々しく見える。