俳句大学投句欄よりお知らせ!
〜季語で一句 ㉕〜
◆『くまがわ春秋』12月号が発行されました。
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【季語で一句】(R3・12月号)
永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R3.12月号)
暮の秋(くれのあき) 「秋-時候」
西村揚子
ふいに吐く里言葉より秋暮るる
【永田満徳評】
何かの拍子で「里言葉」が出てきて、自分でも驚くことがある。掲句は、「里言葉」を言い直そうとしても言い直せないもどかしさを、もの淋しい季語の「秋暮るる」によって描き出しているところがいい。
【季語の説明】
「暮の秋」は秋の夕暮れではなく、秋がまさに果てようとする、秋の終わりに近い頃のこと。この頃の風にもの淋しさが感じられ、木々に落葉を促しているように感じられる。晩秋よりも、より感傷にひたる意味合いがあり、心理的に訴えてくるものがある。「暮の秋」「行く秋」「秋深し」の順に秋を惜しむ気持ちが濃くなる。
酉の市(とりのいち) 「秋-行事」
大津留 直
見掛けのみ値切りてゆかし熊手市
【永田満徳評】
「熊手の商談」と呼ばれる駆け引きも酉の日の名物。掲句は値切りも名物の一つだとして、ゆきずりに「見掛け」で値切ってみるのである。風物詩となった「酉の市」という祭の楽しみ方をうまく詠んでいる。
【季語の説明】
「酉の市」は、鷲神社、酉の寺、大鳥神社など鷲や鳥にちなむ寺社の年中行事として知られる。境内に露店が出て、手締めして「縁起熊手」を売る祭の賑わいは年末の風物詩である。酉の市は11月の「酉の日」に行われ、3度行われる場合は、1度目を「一の酉」、2度目を「二の酉」、3度目を「三の酉」という。
水鳥(みずとり《みづとり》) 「冬―植物」
中野千秋
まづ風が暮色を帯びて浮寝鳥
【永田満徳評】
たそがれ時に湖面に浮かぶ「浮寝鳥」は一服の絵である。掲句は夕暮れとともに、風が吹いてくる、または、風が吹いてくると、夕暮れになるという関係を「まづ風が暮色を帯び」と表現したところがいい。
【季語の説明】
鴨・鳰・百合鷗・鴛鴦など、冬に水上、または水辺で生活する鳥を総称して、「水鳥」という。指の間に水かきを持ち、水上、水中での行動に適した体形に進化しており、陸上や樹上では敏捷性に欠けるものが多い。羽毛は断熱と撥水のため、多くの空気を含むことから、防寒着や寝袋などの中綿に利用されている。
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