俳誌「雲取」NO.280(通巻328)2023年1・2月号より
物江里人 句集・俳書存門
永田満徳句集
『肥後の城』 (文學の森刊)
作者は昭和二十九年生まれ。昭和六十二年 「未来図」
入会、平成八年同人。 平成七年 「未来図」新人賞、令和
元年 「未来図賞」受賞。 平成二十四年から令和二年まで
の三四四句を収めた第二句集。
阿蘇越ゆる春満月を迎へけり
不知火や太古の舟の見えてきし
左義長の余熱に力ありにけり
教へ子に白髪のありぬ秋初め
新涼や妻へ真珠のイヤリング
大景を詠い上げた一句目の他、阿蘇を詠んだ作品多数。
己を育んでくれた家郷への思いは深い。二句目、まつろわ
ぬ民への幻想。三句目は作者の昂ぶりの余韻でもあろう。
四句目、月日の速さへの感慨。五句目は奥様の誕生日か。
骨といふ骨の響くや朱夏の地震
本震のあとの空白夏つばめ
一夜にて全市水没梅雨激し
平成二十八年四月熊本地震発生。 一、二句目からは作
者の衝撃の大きさが伝わってくる。令和二年七月には故
郷人吉市が豪雨に襲われた(三句目)。集中 「むごかぞ
と兄の一言梅雨出水」は痛切な叫びだ。