《うつせみ》明治28年8月
【385ページ】
家の間数は三畳敷の玄関までを入れて五間、手狭なれども北南吹きとおしの風入りよく、庭は広々として植込の木立も茂ければ、夏の住居(すまい)にうってつけと見えて、場処も小石川の植物園に近く物静なれば、----。
【390ページ】
番町の旦那というのは口数少なき人と見えて、時たま思い出したようにはたはたと団扇(うちわ)づかいするか、巻煙草の灰を払ってはまた火をつけて手に持っているくらいなもの、----。
[Ken] 樋口一葉さんの小説には、彼女が暮らしたり、お稽古に出かけたりした街、たとえば三田や白金高輪をはじめ、今回の小石川などの家屋や路地の景色が鮮明に描かれています。小石川植物園は、半年ほど徒歩通学路の途中にあったので、何度が入園したことがある懐かしい場所です。390ページの「番町の旦那」が、時間を持て余し巻煙草を吸っている様子は、とてもコミカルで雰囲気が出ていますね。(つづく)
【385ページ】
家の間数は三畳敷の玄関までを入れて五間、手狭なれども北南吹きとおしの風入りよく、庭は広々として植込の木立も茂ければ、夏の住居(すまい)にうってつけと見えて、場処も小石川の植物園に近く物静なれば、----。
【390ページ】
番町の旦那というのは口数少なき人と見えて、時たま思い出したようにはたはたと団扇(うちわ)づかいするか、巻煙草の灰を払ってはまた火をつけて手に持っているくらいなもの、----。
[Ken] 樋口一葉さんの小説には、彼女が暮らしたり、お稽古に出かけたりした街、たとえば三田や白金高輪をはじめ、今回の小石川などの家屋や路地の景色が鮮明に描かれています。小石川植物園は、半年ほど徒歩通学路の途中にあったので、何度が入園したことがある懐かしい場所です。390ページの「番町の旦那」が、時間を持て余し巻煙草を吸っている様子は、とてもコミカルで雰囲気が出ていますね。(つづく)