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【71〜72ページ】
未熟ということをプラスの面に突きあげることが人間的であり、素晴らしいことだと思はなければいけない。
よく世間一般では完成された人は素晴らしいというが、この世の中には、完成なんてことは存在しないんだ。完成なんてことは他人が勝手にそう思うだけだ。世の中を支配している“基準”という、意味のない目安で他人が勝手に判断しているだけだ。
ほんとうに生きるということは、いつも自分は未熟なんだという前提のもとに平気で生きることだ。それを忘れちゃいけないと思う。
【78ページ】
ところでゴッホだが、彼ばピストルを胸に撃ち込んで、まる一日生きつづけた。
しらせを受けて弟のテオやドクトル・ガッシェが駆けつけた。その時、ゴッホは「煙草をくれ」といって、静かにひとり紫煙をくゆらせた。死はそうするうちにも刻々と迫ってくる。
[ken] 「完成なんてことは存在しない」「いつも自分は未熟なんだという前提のもとに平気で生きること」ってパワー全開ですね。なんと、未熟を受け入れて平気で生きるって、これまた簡単なようで至難の技だと思います。78ページは、末期の水ならぬゴッホの「末期の一服」ですね。私も一時的に禁煙をすることはあるでしょうが、末期の一服だけは逃したくない、と思っています。