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【163ページ】
息子や娘について絶望している親たちはかなり多いようだ。みんな、外に知られて嬉しいことでもないので、口をつぐんでいるけれど、一見平穏で幸福そうに多くの家庭に、言いようのない秘められた悩みがあるのではないか。
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考えてみれば、両親とぼく。一家三人の関係は特異だったのかもしれない。ぼくは幼い頃から、子どものくせに、と言われたことは一度もない。
【165ページ】
人間の辛さというのは、つまらぬことでも覚えていること、忘れられないことだと思う。
[ken] 昨今の世情をみると、岡本太郎さんの「一見平穏で幸福そうに多くの家庭に、言いようのない秘められた悩みがある」との認識は、誰がみても明らかになってきました。そして、「ぼくは幼い頃から、子どものくせに、と言われたことは一度もない」という、母である岡本かの子との暮らしで培った贅沢な時間が、確信を持って言い切る根拠担っているのですね。また、165ページの「人間の辛さ」って、まさにその通りですね。岡本太郎さんの優しい視線には、まったく感服するしかありません。