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『本を読む女』の中のたばこについて

2020年10月10日 | 小説・映画等に出てくる「たばこ」
林真理子さんの『本を読む女』の中で、たばこに関する記述を、以下のとおり紹介します。ちなみに、たばこは今月から次表のとおり値上げになりました。



【29ページ】
(父の隆吉が脳溢血で倒れ、危篤で親戚一同が集まっている場面)
大好きな窪谷の伯父さんもその中にいたが、怖い顔をしてキセルを吸っているので、とても話しかけることはできなかった。
【77ページ】
そう言われると万亀の不安はつのる。小田切校長は、いったいどんな用事で来たのだろうか。校長は煙草喫みらしく、芙美の用意した茶や、店でいちばん上等の生菓子には手を出さない。ひたすら敷島をうまそうにふかしている。よく手入れされた髪が、時々紫色の煙でかすかに揺れた。
【96ページ】
英子のところの方がまだ居心地がいい。美貌を見込まれた英子は、四谷の材木屋の長男のところへ嫁いだのだ。夫は商業高校を出た後、父親の仕事を手伝っているが、あまり身を入れている様子はなかった。大きな瀬戸火鉢の前で、いつも青白い顔をして煙草を吸っている。
【244ページ】
秋次に家長の座を譲っても、まだ60を過ぎたばかりの母親には隠然たる勢力があり、この家に万亀親子が暖かく迎えられたのは、ひとえに芙美のおかげだ。
とはいうものの、小川屋にはもう売るものなど何もない。砂糖や煙草、水飴など配給品を分ける手数料が入ってくるだけだ。菓子屋に育っても、秋次の子どもたちも、この何年甘いものなど口にしたことがなく、芙美も兄嫁も近くの畑に通う毎日だ。
【249ページ】
滋養のあるものは、万亀の乳が出るようにと最優先される。販売店をしていた頃のルートでまだいくらかは手に入る煙草は、重太郎の牛乳と交換するために、すぐに芙美が持っていってしまう。
秋次が時々抗議をしているのも、自分も育ち盛りの子どもを持った兄嫁が泣いているのも万亀は知っている。
【274ページ】
万亀のボストンバッグの中身は煙草だ。小川屋で配給するのを上手に別にしておいた。もちろん悪いことだというのは百も承知だ。けれど他にどんな方法があるというだろう。
【277ページ】
差し出した「みのり」を女はひったくった。あっと止めるひまもなく、女は封を切る。
「煙草はよくごまかすからね。中を開けてちゃんと確かめないとね」
女は親指とひとさし指とで、少量つかみ出し、陽に透かしてみながら尋ねた。
「いくら欲しいのかね」
「あの、30円」
女はあっさりと10個分、300円を払ってくれた。1箱60銭の煙草が50倍になり、万亀は狐につつまれたような思いだ。金鵄20円、みのりは30円で売れると遠藤から聞いても、万亀は信じられなかったのだ。それなのに女は、手の切れるような新しい札で払ってくれたうえ、米でも煙草でも、何でも持ってくれば買ってやるよと言い足した。
【280ページ】
試しに本棚の中から吉川英治や尾崎士郎といった人気作家を選び出し店先に置いたところ、またたく間に売れてしまった。古い本なんか売って外聞が悪いと芙美は嘆くけれど万亀は平気だ。煙草を横流ししたり、闇屋をやったりと、人に言えないようなことをいくらでもしている身ではないか。本を売る方がはるかに気持ちがよい。
【283ページ】
暮れの寒さに身震いしながらも、万亀は列に加わった。兵隊のコートを着た男が二人、煙草を吸いながら今日の稼ぎを話している。方言から察すると、どうやら信州からやってきた担ぎ屋らしい。
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久しぶりに三田界隈のお散歩

2020年10月10日 | 三田だより
先日のお散歩は、コロナ対策で一般の来校者を制限している慶応大学正門を右に見て、ゆるい坂を下って左に曲がり、伊皿子方面に数あるお寺の二つ三つに立ちよって、掲示されているお言葉やお地蔵様の写真を撮ってきました。





久しぶりに、白粉を塗りたくったような装いのお地蔵様は、他にあるのでしょうか?





そんなお化粧延命地蔵を眺め、このお寺、実は2.26事件で命をおとした高橋是清さんが、檀信徒総代だったことがあるのです。由緒あるお寺なのですね。
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