◇大洗海岸の夏
耳の状態がはかばかしくなく、この気鬱は海でも見れば多少軽くなるか
などと話していた矢先、お得意様向けに超割安プランを企画しましたが
いかが?というハガキが舞い込んだ。渡りに船とはこのこと、友人夫婦
が相乗りし4人で大洗海岸を訪ねた。
昼近くにデパ地下でお弁当と酒を買い込んで、常磐線の升席で、と勢
い込んで乗ったらば、何のこと、最近の中距離電車もすっかり通勤モード
になっていて、ボックス席は先頭車両の4つだけ。取手を過ぎてやっと4人
席を見つけて食事が出来た。
窓の外を見れば曇りながら、稲田と蓮田が風にうねっている。埒もない
話に笑い興じているうちに「あれっ もう着いたの?」。わずか2時間足ら
ずで勝田駅に着く。
そこで「ひたちなか海浜鉄道」湊線というローカル電車に乗って那珂湊駅へ。
今でこそたった1両で、乗客は学校帰りの高校生グループと買い物帰りの
おばさん数人という寂しさではあるが、昔は海産物・農産物・石炭などの
重要な輸送路線だったようだ。海水浴場で有名な阿字ヶ浦が終点。創設
95年の歴史があり、今は第3セクターで運行されている。
那珂湊駅は市民ギャラリーにもなっているらしく、そううまくはないが一生
懸命描いた跡が窺われる絵が沢山掲げてあった。
電車はのんびりと、江ノ電や箱根登山鉄道の感じで運んでいく。
宿では海辺の旅館ならではの食事を堪能した。食材が新鮮ならば奇をて
らった工夫は要らない。
朋ありてまた酒あらば海の幸何の肴のまよひ哉
翌日は予報も外れてそよ風の吹く曇り空。那珂川沿いに遊歩道を歩いて
「アクアワールド・大洗」へ。もう栗が大きくなって、道にはクルミが落ちていた。
秋なのだ。
川の土手にはハマナスの赤い実が生っていた。
「アクアワールド・大洗」は巨大水槽とサメ、エイ、マンボウ、らっこなどが人気で、
いるかショウは夏休み中とあって家族連れで超満員だった。
水族館のあとは那珂湊おさかな市場を訪ね、海の幸の詰まった昼食と生
ビール。市場をそぞろ歩きながら見学した。乾物などよく見ると中国産の帆立
貝柱があったりして油断が出来ない。
1枚600円の岩牡蠣を食べさせていたが、さすがにこれは本物だろう。
潮の香りがする風が心地良かった。