◇「黒い薔薇」(原題:Gone,But Foregoten)
PHILLIP MARGOLIN著 田口俊樹訳 ハヤカワ文庫1998.5刊
ノンストップサスペンス。とにかく面白くて読み出したらとまらない。
フィリップ・マーゴリンのデビュー作は「封印された悪夢」で本書は第三作目。一応サス
ペンス・スリラーとされているが、登場人物は検事、刑事、弁護士、私立探偵(調査
員)と役者はそろっていて、法廷場面もいくつかあるので、リーガルサスペンスの色
彩も濃い。
評論家北上次郎が解説を書いている。
前作「氷の男」で解説者折原一氏が「怒涛のようなサスペンススリラー、破天荒な
トリック、大どんでん返し、強引とも言える綱渡り的ストーリー展開」という賛辞を呈し
ているのを引いて、「プロットで読ませ、ストーリーが二転・三転する波乱万丈の展開
が、スティーブ・マルティニに並ぶ「保証つきの面白さ」と絶賛している。
導入部の第一部では四つの伏線となる出来事が紹介される。このエピソードが
第二部以降の物語展開を期待させ、わくわくする。
残忍冷酷な殺人鬼と目される実業家は、実は10年前別の地で殺人犯として
一度は囚われの身となりながら、巧妙な立ち回りで逃亡し、姿を変えて再び殺
人を重ねていた。身の危険を感じた実業家は有能な女性弁護士を言葉巧み
に取り込み罪を免れれようとする。
今度こそ逃すまいと実体を暴くために身を挺して食い下がる刑事。実業家の
妻が明かす夫の実像。実は・・・ストーリーが二転・三転しどんでん返しがあったり
してついていくのがやっと。
とにかくエンターテイメントとしては満点のサスペンススリラーである。
一読の価値がある。
(この項終わり)