読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

娘の成長の陰で慄く女心

2009年07月02日 | 読書

「フィレンツェに消えた女」(原題:MAPPING THE EDGE)
  SaraDunant著
  小西敦子訳 講談社文庫 (2003.6刊)

  子供は今6歳。次第に自我が出てきたようだ。子供が大きくなった時の自分の
 生活を想像したしたとき、自分の生活はこのままでいいのか不安になる。娘に
 取り残され老いた自分の姿。まだ女としてのロマンスも望めるのではないか?
 子供を抱えながら気丈に働く女の心にふと不安と揺らぎがよぎる。

  物語の中心人物はロンドン在住の39歳のフリージャーナリスト。6歳の女児の未婚
 の母。その彼女はイタリアへ行くといって家を出たまま音信が途絶える。
  誘拐なのか、家出なのか。取り残された女児と友人たちが真相を求め右往
 左往する。
  面白いのは彼女のイタリアに向けた旅立ち以降、二つのストーリーが交互に進行
 する。自立したキャリアウーマンとしての彼女と、「女」としての自分にしがみつこうと
 する彼女の行動が綴られ、人が叶わぬ人生に対し持つ願望とこれに対抗する
 自我との二面的心理背景が暗示されている。

  著者サラ・デュナントはもともと女私立探偵ハンナを主人公にしたシリーズ作品
 を著してきた。この「Mapping The Edge」で心理サスペンスの新境地を開い
 たというが、余り成功したとは思われない。「瀬戸際の足跡」にしてはこの手法
 はいささか紛らわしいし、娘と友人たち、本人の三つの世界がやや独立的に扱
 われていて心理サスペンスらしくない。

       

    (この項終わり)


 

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