◇ 『裏切り』 著者:カーリン・アルヴテーゲン(KARIN ALVTEGEN)
訳者:柳沢由実子
2006.9 小学館 刊 (小学館文庫)
北欧の新進気鋭のミステリー作家カーリン・アルヴテーゲンが2003年に発表した三部作第3作目
である。デビュー作が『罪』、第2作が『喪失』である。いずれも傑作で、心理サスペンスの女王マーガ
レット・ミラーやパトリシア・ハイスミスの後を継ぐ作家と高い評価を受けた。
物語は一組の夫婦を軸に展開するが、そこに登場する一人の男が重要なカギを握る。題名通りこ
の作品の主題は人の裏切りである。
登場人物のだれもが裏切りの経験がある。
妻を裏切って愛人を作った男、夫の裏切りに仕返しをしようと若い男を求め裏切りを果たす妻、愛人
を裏切った男と裏切られた愛人、最愛の女に裏切られて究極の裏切りを図る若者。
裏切りを克明にかつ生々しく描いて物語が進む。女性らしい視点からする心理描写と会話が、恐ろ
しいほどリアルに迫って来る。妻を裏切った男が、妻に裏切られていたことを知ったときに生まれた身
勝手な感情・心理が妙にリアルで真に迫る。
(以上この項終わり)