◇芦野宿から白坂宿へ
昨夜は温泉に浸かっている間雨が激しくなっていたが、夕刻には上がり
夕日が差してきた。日帰り温泉館の湯殿の上からは白い湯気がもうもう
と上がり、いかにも掛け流し温泉らしい豪華な雰囲気がある。(掛け流し
でなくとも同じような湯気が上がるのだが・・・)
あくる朝も早く起きて温泉に入った。いたって温泉好きの我が局は「朝か
ら温泉なんぞに入ったら、とても歩けないわよ」と悔しそうである。
いつもは7時食事、8時出発が標準であるが、ここの宿は食事は7時半。
なぜなら最近ほとんどの宿で定着したバイキング形式はとっていないから。
コシヒカリのご飯(粥の選択もある)、実沢山の味噌汁、半熟(目玉の選
択もある)玉子、鰆の味噌漬け焼き、ひじきの煮物、漬物、梅干など食
が進む朝食だった。
結局8時10分頃に出発。サンダルとぞうりが供えられている何とか大神とい
う石碑があるところで街道に復帰する。ここは西坂といって菖蒲川を渡
り国道294号を横断すると奈良川を渡った所に大きな「座り地蔵」がある。
半跏姿の珍しいお地蔵様である。ここが宿場の南の入り口で、左に曲が
りと少し宿場らしい雰囲気が現れる。家々に屋号を記した石燈篭が立っ
ている。しかし家の造りは現代のものなのでなんともちぐはぐで、中山道
の妻籠・馬籠に見られる徹底した街道景観の保存とはなっていない。多分
一時期宿場資源の保全と活用に熱心に取り組んだ人がいたが、組織化
が不十分で、宿場全体のものに結集できなかったか、意気込みを持続
できなかったのかもしれない。なんとも残念なことである。
右手の高台は御殿山といって「芦野城」、「桜ケ城」とも呼ばれ芦野氏陣屋
跡がある(芦野宿は交代寄合旗本芦野氏の城下町)。
街道には旅籠造りの「山本屋」、蔵座敷で有名な安達家の旅籠「丁子屋」
がある。丁子屋は現在は「うなぎ屋」である。
座り地蔵 石灯籠「米屋」 安達家「丁子屋」
明治天皇御巡幸記念碑を見て、右手に折れて坂を上る。角は番所があっ
たところで「仲町の道標」がある。左手には「枝垂桜」の古木がある「平久
江家の門・構え」がある。江戸時代の武家屋敷の遺構として貴重とされる
が入れなかった。ここは芦野城大手口に当たる。道の置くには御神木の
アスナロの古木(樹齢600年)で知られた「掦源寺」がある。
さて街道に戻り進むと左手には「本陣跡」に作られたという「石の美術館」
がある。隅研吾氏設計になる当地の「芦野石」を用いた斬新なデザインの
美術館である、失礼ながら「鄙に稀なる」と形容をさせて頂こう。
枝垂桜 平久江家門・構え 道標 本陣跡・石の美術館
建中寺は芦野氏菩提寺である。この寺の墓地は杉の巨木が立ち並ぶ間
に墓石があり、珍しい墓地である。
道は枡形に曲がり、宿場のはずれ橋の袂に「新町の地蔵尊」がある。国
道を過ぎって田圃道の先に「遊行柳」、湯泉神社「上の宮の銀杏」がある。
遊行柳は謡曲「遊行柳」で知られ、西行法師、芭蕉、蕪村の句碑もある。
「上の宮の銀杏」は樹齢400年というが、その容姿は雄大端麗で感動する。
道は国道をそれて左に入り峯岸の集落となる。
芦野宿枡形道 建中寺 遊行柳 大銀杏
更に進み横岡から国道に別れ板屋の集落に入る。深い切り通し道の両
側に「板屋の一里塚跡」がある。かつては道はこの塚跡に沿ってあった
はずで、今はとんでもないところに碑が立っている。
芦野宿外れから一里ほど歩いて脇坂でまた国道を歩くことになる。更に
2キロほどで座り地蔵を見たら道を左にとり国道を離れる。間の宿「寄居」
である。公民館(廃校の小学校か。)敷地で、薪の柴を背負って本を読ん
でいる姿の懐かしい「二宮金次郎像」を発見。田舎でなければお会いで
きない。その先に「与楽寺」という風流な感じの寺がある。
板屋の一里塚跡 同左 寄居の座り地蔵 二宮金次郎像
与楽寺
再び国道に復帰した先に「泉田の一里塚跡」がある。またしばらく行くと
山中大久保というところで再び道は国道を離れ左の道に入る。ここには
「初花の清水碑」、「瓢石」がある。東海道箱根路にある鎖雲寺に「飯沼
勝五郎と初花」の墓があり、「箱根霊験いざりの仇討ち」に由緒が述べら
れているが、共通の仇滝口上野を討つ前に足の病を得た勝五郎が、夫
婦となった初花とここで養生したようだ。飯沼勝五郎はこの先の棚倉藩の
武士だったようだ。
泉田の一里塚跡 ひさご石
道は再度国道を離れ、山中の集落に入る。「明治天皇小休所跡」がある。
風もなく薄日の差す道を行くと、これまでに見たことのない立派な「馬頭観
世音」の石塔があった。見知らぬ男性が寄ってきて「これはなんて書いて
あるんでしょうね」、「馬頭観世音と思いますよ」、「こんなのが多いですね
ここいらは」、「信仰心が篤いのでしょうか」、「この先の山腹に大きな仏
像があります。降りて見ようと思っても車の止め場所がなくて・・・」
どうやら車であちこち見て回っているようだ。歩けばいいのに。
昨夜降った雨はこのあたりでは雪になったようで、北斜面ではうっすらと
雪が積もっている。
馬頭観世音 山腹の石仏 うっすらと雪が・・・
道は少しずつ上り坂になりその先に「玉津島神社」がある。これは下野の
「境の明神」であり、県境を越えると陸奥の「境の明神」、「住吉神社」があ
る。
道は下り坂となり、途中に弘法大師が衣をすすいで着替えたという「衣が
えの清水」がある。池のようなものがあるが、芭蕉や曾良もここに寄って
休んだという。
玉津島神社 県境 住吉神社
衣替えの清水
(第4話終わり)
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