◇『逆風の街―横浜みなとみらい署暴力犯係―』
著者: 今野 敏 2003.12 徳間書店 刊
先日今野敏の『TOKAGE』を読んで、なかなか面白かったので、図書館でさらに一冊の
今野敏の作品を借りて来た。
今野敏の作品にはシリーズものが多いが、これは「横浜みなとみらい署暴力犯係シリーズ」
の走り。このあと「禁断」(2010.6)、「防波堤」(2011.11)がある。
ハードボイルドである。最後の諸橋が殺し屋笠松善三に殺されかかる場面が圧巻である。
ヒーローは決して死なないという鉄則が裏切られるのではないかと危ぶまれる始末。しかし
あわやというところで相棒が現れて救われる。こうした緊迫場面があって初めてハードボイ
ルドの醍醐味が味わえるのだ。
神奈川県警横浜みなとみらい警察署刑事第二課暴力犯係の係長(組織暴力班の班長?)
諸橋夏男警部。両親を暴力団に殺されたという過去を持つ。普通なら所轄の課長級なのだ
が反抗的で本庁捜査一課から飛ばされた。
寺川という中小印刷会社の主が資金繰りに困り街金から金を借りた。当然返済に窮し、暴
力団系のしつこい取り立てで身の危険を警察に訴えるがなかなか警察は動かない。取り立
ての厳しさは常軌を逸しているとしか言いようのないひどさ。それを聞きつけた諸橋はしぶる
寺川の証言をとりつけ暴力団那賀坂組に乗りこむ。・・・
そして潜入捜査官殺害事件が起こる。那賀坂組の組長の殺し関与を疑う諸橋は相棒の城島
と組に乗りこんだのだが、そこには不気味な大男がいて・・・。
「銀行はほんまの悪モンや、・・・トイチの金貸しも地上げやるヤクザも悪モンやけど、その裏
に必ず銀行がおる。銀行は手ェ汚さんと、汚い金を吸い上げるわけや。俺はなあ、銀行員ては
人殺しより悪い奴やと思うているんや」(『TOKAGE』p118)
「今の世の中、まじめに働いても運転資金に困ることがある。銀行がすべて悪い。黒字を出し
ている中小企業から貸し剥がしをする。・・・・」(本書p52)
「人殺しより悪い奴ら」とは口を極めて非難しているとしか言いようがない。今野敏は銀行に
余程恨みを持つようなあことがあったのだろうか。
ところで先日流山おおたかの森のTOHOシネマズで人気の「踊る大捜査線・FINAL」を観て
来た。テーマは警察庁の幹部による事件隠蔽。捜査の第一線と規則順守一点張りで捜査を指
揮する幹部との確執、反発。面白かった。
もっと続ければいいのに、青島もすみれさんも歳をとっていくから無理なのか…。
それはともかく、「警察官ひとりひとりは正義感と誇りを持っているかもしれないが、警察という
組織はいつもつまらないことばかりやっている。・・・」(本書p200)
本書も踊る大捜査線FINALもおんなじテーマだった。
(以上この項終わり)