こんにちは「中川ひろじ」です。

みんなのお困りごとが私のしごと

憲法ノート 前文その2

2016-10-01 22:12:28 | 憲法ノート

改憲草案Q&Aでは、現行憲法前文に「基本的人権の尊重がありません」と指摘しています。それでは改憲草案ではどのように書かれているでしょうか。「日本国民は・・基本的人権を尊重する」と書かれています。「憲法は、権力を縛るものである」という立憲主義の精神からすれば、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」として、権力からも守られていることを明確にしています。もっといえば基本的人権を尊重する義務は権力を持つ国の側にあるのです。それが立憲主義の精神です。

 ところが改憲草案全体につら抜いていますが、現行憲法の主語は「日本国民は」「われらは」であるのに対して、改憲草案は冒頭から「日本国は」と主語が変わっています。Q&Aでは「立憲主義の考え方を何ら否定するものではありません」「権力分立の構造は変わりありません」と、立憲主義の考え方を三権分立の問題とすり替えています。

 それでは現行憲法には、本当に基本的人権が書かれていないと言えるのでしょうか。前回も述べましたが「平和的生存権」は、日本国民だけではない、全世界の国民に有する権利としています。「平和的生存権」は、基本的人権の基盤的な権利と言えます。

 この他にも改憲草案24条(家族、婚姻等に関する基本原則)「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」と新たに付け加えられていますが、それを象徴する「家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。」と書き込んでいます。互いに助け合うという一般的な概念は否定しませんが、わざわざ前文に書き、条文として新たに書き起こす意味を考えざるを得ません。生活保護や介護などを、家族の責任に転嫁する根拠とすることもできます。また、「互いに助け合わなければならない」と強制すれば内心の自由を奪うものともいえます。

 「われわれは、・・活力ある経済活動を通じて国を成長させる」と、国民に経済活動を強制し、経済活動に従事できない国民を排除する意図が見え隠れしています。

 現行憲法の最後に「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」とありますが、私たちは一度でもどこかでこの「誓い」をしたことがあるでしょうか。また、「国家の名誉にかけて、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成する」ための努力をしているだろうか考えさせられます。

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第3回波田地区憲法学習会

2016-10-01 21:31:22 | 憲法ノート

9月30日波田地区憲法学習会で自民党憲法草案の前文について学習をしました。明治憲法(第日本帝国憲法)の前文も用意されていました。

憲法発布勅語

朕国家ノ隆昌ト臣民ノ慶福トヲ以テ中心ノ欣栄トシ朕カ祖宗ニ承クルノ大権ニ依リ現在及将来ノ臣民ニ対シ此ノ不磨ノ大典ヲ宣布ス
惟フニ我カ祖我カ宗ハ我カ臣民祖先ノ協力輔翼ニ倚リ我カ帝国ヲ肇造シ以テ無窮ニ垂レタリ此レ我カ神聖ナル祖宗ノ威徳ト並ニ臣民ノ忠実勇武ニシテ国ヲ愛シ公ニ殉ヒ以テ此ノ光輝アル国史ノ成跡ヲ貽シタルナリ朕我カ臣民ハ即チ祖宗ノ忠良ナル臣民ノ子孫ナルヲ回想シ其ノ朕カ意ヲ奉体シ朕カ事ヲ奨順シ相与ニ和衷協同シ益々我カ帝国ノ光栄ヲ中外ニ宣揚シ祖宗ノ遺業ヲ永久ニ鞏固ナラシムルノ希望ヲ同クシ此ノ負担ヲ分ツニ堪フルコトヲ疑ハサルナリ

つまり「天皇が国民に対し宣布したもの」である。現行憲法は、前文で「日本国民は・・・この憲法を確定する」と、形式上は国民が定めたものとしている。

自民党憲法改正草案も一応「日本国民は・・この憲法を制定する」としている。

日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。

*1この自民党憲法草案前文は、様々な問題点があるが、議論になったことは、まず「日本国は・・・国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって」とあるが、「天皇を戴く国家」となたのは明治憲法以降である。

*2現行憲法にある「不戦の決意と平和的生存権」に全く触れていない。

*3主語が、「日本国民は」から、「日本国は」と国家が主語に変わっている。

*4同様に主語が「われらは」から、「我が国は」に変わっている。

*5「国と郷土を誇りと気概を持って守り」と国防の義務をうたい、「基本的人権」を守る責務を政府から国民にすり替えている。

*6「家族や社会全体が互いに助け合って」と、道徳を忍び込ませ内心の自由を侵している。

*7国民が「自由と規律を重んじ」るように、国民が守るべき規範にすり替えている。

*8国家の目的を経済活動に矮小化している。

 

 

 

 

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