A16 安価な医薬品が手に入りにくくなります。
確かに、すぐに「公的医療保険制度(国民皆保険)に関する変更は行われない」かもしれませんが、製薬大企業に有利なルールが盛り込まれました。アメリカの医薬品・医療産業がどれほど巨大かを考えれば自明のことです。各国の交渉で最後まで揉めたのも、薬に関する分野でした。協定文では、薬の特許期間やデータ保護についてのルールが定められました。
❶特許期間の延長:新薬は、特許出願から販売承認まで概ね10年かかります。その間に「不合理な短縮」とみなされる期間があれば、その年数分、特許期間は延長されることになりました。政府は、5年を上限とした延長制度が日本にもあると言っていますが、協定文に延長する年数は書かれていません。アメリカが相手では、5年以内に収まる保証はありません。
❷データ保護期間:新薬のデータというのは、料理のレシピのようなもので、公開されれば安価なジェネリック薬(後発薬)を製造できます。政府は日本もデータ保護が8年とされているので問題ないと言っていますが、協定文はデータ保護期間を「8年に限定することができる」という表現で、8年に限定しないこともあるという、あいまいな文言です。協定発効後10年で再協議も行われますので、さらに長期化する恐れもあります。
このように、TPP協定が発効すれば新しい薬の価格がなかなか下がらない恐れが強まっています。これは患者の負担に直結し、保険料の引き上げにもつながります。途上国は新薬のデータを早く開示することを求めていて、「国境なき医師団」も「医薬品入手の面で最悪の貿易協定として歴史に残る」と痛烈に批判しているほどです。(寺尾正之)
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