1,森林への太陽光発電施設の設置について
【中川】9月議会で林地への太陽光発電施設設置についてお伺いしました。その際、「1ヘクタールを超える森林を開発する場合は、森林法に基づく林地開発許可制度に基づいて審査し、基準を満たす場合には県が許可をしている」「1ヘクタール以下の開発が複数個所で行われている場合も開発行為が一体と認められる場合は、林地開発の申請を行うよう指導をしている」という答弁でした。
県として適切な指導が行われることを前提としても、1ヘクタール未満の開発が複数個所で行われている場合でも、伐採届日が異なるときなど「開発行為が一体であると認める」ことが困難な事例があります。また、いったん太陽光発電施設が設置されると、森林計画対象の森林から除外されますが、その隣に1ヘクタール未満の太陽光発電施設を設置する時は、市町村への伐採届だけで開発が行われ、無秩序な森林開発が進行していくことになります。
森林には、木材の供給のほか、土砂災害や水害の防止、環境の保全、二酸化炭素の吸収源であることや、薪や炭の原料、山の草木を良質な有機たい肥とするなど、これらの多面的機能は山を持っている人の利益であるばかりでなく、公益的機能をもつものであります。
しかし、1961年(昭和36年)に、輸入木材の関税が撤廃されて以降、外国産の木材などが市場に出回り、最近では木材の国産自給率は食料自給率と同じ30%台後半の数字となっています。結果、森林を所有していても木材を売ることもできず、山の手入れもだんだんできなくなり、国の再生可能エネルギー推進方針に協力するため太陽光発電施設用地として山林を売る人が出てきていることは、決して売った人が責められるべきものでもないと思います。一方で、景観や土砂災害の危険性を重視する住民の方と軋轢が生まれていることも事実です。また、開発を担う業者も法に基づいた開発だと主張をします。つまり、森林が無秩序に開発されるのは国の方針が明確ではないからではないでしょうか。
こうした今日の森林を巡る状況を考えると、森林の持つ多面的かつ公益的機能を守るために公共投資が必要ではないかと考えますがいかがか。
【知事】県土の約8割を占める森林は県土の保全、水源の涵養、木材をはじめとする林産物の供給といった様々な重要な役割を果たしています。
また、今後2050ゼロカーボンに向けては森林が持つ二酸化炭素吸収の機能の発揮についても重要なものと考えています。
このため間伐をはじめとする森林整備や治山事業の実施等によりまして、森林の持つ様々な機能の発揮に向けた取り組みを進めているところであります。
今後も、国の予算等を活用し災害に強い森林づくりの推進や、森林資源の適正な管理に向けた取り組みを強化してまいります。
【中川】1ヘクタール未満の複数の林地開発が、一体的な開発であると認める基準があいまいであることから、こうした開発を回避するため、過去の開発まで遡ることで「一体的な開発行為」として認めるように基準に遡及性を持たせることはできないか。
【知事】同じ地域で1ヘクタール未満の複数の林地開発を行う場合は開発の時期、開発行為の共同性、集水区域によりまして、一体性を総合的に判断して1ヘクタールを超える場合は林地開発許可の手続きを行うよう事業者等に指導しているところであります。
しかしながら一定期間時期が異なる開発が行われた場合には、過去の開発区域は地域森林計画の区域から除くという形になりますので、現行制度においてはそれらを一体的な開発行為として判断することはできません。
【中川】国は地球温暖化対策推進法の改正により来年度から市町村は太陽光発電などの再生エネルギー生産設備等を誘導する「促進区域」を設定することができるようになり、県としては、除外すべき区域や配慮すべき区域に関する基準を示すことができることになりました。この基準に関し、山梨県の条例にように太陽光発電施設を森林に設置することは原則禁止したらどうか。
【知事】この改正地球温暖化対策推進法に基づく促進区域に関しましては、現時点では土砂災害の防止、水源の涵養、生態系の保全といった公益的な機能を有する森林の開発については、少なくとも促進区域から除外することが適当ではないかという風に考えています。
現在、庁内に連絡会議を設け検討を進めており、省令案を待って県の基準案を作成し県の環境審議会の審議や、市町村からの意見聴取、パブリックコメントを行って年度内をめどに決定をしていきたいという風に考えております。
特に大規模な太陽光発電の設置については、地域の皆様方からさまざまな懸念や課題の声が寄せられることが多いことから、防災面や環境面などにも配慮がなされた形で太陽光発電施設が適正に普及するよう、必要な方策を検討していきたいと考えております。
以上
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