リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

リュートとの出会い (1)

2005年02月17日 07時36分45秒 | 随想
 私がリュートと出会ったのは中学生の頃だったからかれこれ40年近く前になる。もっともこの頃の日本の地方都市ではリュートというものを目にすることはまず不可能だったから、「リュートとの出会い」というのは正確な言い方ではない。実際の楽器に出会うのはそれからしばらくあとで、リュートの存在を知ったという程度の意味である。その「出会い」とは、ジュリアン・ブリームというギタリストの演奏するバッハのリュート組曲のLPレコードを聴いたときのことだ。焦げ茶色を基調としたヨーロッパの古い建物がジャケットにデザインされているそのLPから流れてくるその音楽は、威厳があったがそれと同時にとても甘美なものにも感じられた。そのLPの解説で、リュートは弦がたくさんありすぎて、サラバンドのような遅い曲にはいいが、速い曲では音がにごる。だから音のにごらないギターで弾いた方がいい・・・というようなギターで演奏することの正当性を謳ったくだりがあったが、逆にリュートに強い関心を持ったことを覚えている。