リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ベニヤの翼(つづき)

2019年12月23日 15時21分50秒 | 日々のこと
第2次大戦中はイギリスの木製爆撃機モスキートがありましたし、日本でも陸軍四式戦闘機の木製版キ-106が試作されていました。いずれもジュラルミン不足に備えてあるいは既に不足していたので、木は代替素材として存在していました。もちろん「合板」を高性能な接着剤を使って接合するという新技術を使っていました。

件の記事から受ける印象は、日本の技術は全て遅れていた、あんな翼がベニヤのポンコツロケット戦闘機を作って、しかも試験飛行のパイロットを殺してしまってとんでもない人道無視の所業だ、だから戦争なんてしてはいけないんだ、というようなことです。

でももう少し冷静に考えてみて下さい。成層圏に届く高度まで上がり、時速800kmで飛び、巨大な30ミリ機関砲を備えるべく設計された戦闘機ですから、たとえ翼に合板が使われていてもヤワなはずがありません。ドイツから送られたロケット戦闘機Me163Bコメートの図面を元に作る予定が、図面を搭載した潜水艦が途中で撃沈され、撃沈される前に寄港したシンガポールから飛行機に乗り換えた技術将校が持ち帰った分しか資料がなかった中で試作された秋水は実質的には日本の技術で作ったものといえます。

(まだ続く)