リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ブラタモリ「島原・天草」編に出て来た・・・(1)

2020年03月16日 14時49分24秒 | ウソゆうたらアカンやろ!他【毒入注意反論無用】
ブラタモリは私が好きな番組のひとつですので、見逃さないようにといつも録画をして見ています。先日放送された「島原・天草~なぜキリシタンは250年も潜伏できた?~」編を見ていましたら、引っ掛かる内容が出て来ました。

番組の冒頭ですが、昭和9年に建築されたという教会の前に、ヴァージナル、リュート、ヴィオール、ハープ、歌の方々が並んでらっしゃって、同行している大学の先生の紹介で1曲披露していただきました。曲はジョスカン・デ・プレ作曲の「千々の悲しみ」という曲です。カルル五世皇帝が愛好したといわれていることから「皇帝の歌」という名でも呼ばれている曲です。ルイス・デ・ナルバエスが1538年に出版したヴィウエラ曲集にもこの曲が載っています。

その大学の先生は、この曲をヨーロッパから帰ってきた天正少年使節の面々が秀吉の御前演奏し、秀吉が三度もアンコールした、と説明されました。この話ですよねぇ、40年くらい前からよく聞く話です。よくできた話ではありますが、演奏した曲に関してはかなり怪しいと思います。

当時の記録では、秀吉の前で4人の少年使節が、ハープ、リュート、レベック、小型鍵盤楽器(オルガン?)を使って演奏し、秀吉は3回アンコールをした、とあるそうでここまでは史実です。問題はどういう曲を弾いたかということです。偉い先生が「ジョスカン・デ・プレ作曲の千々の悲しみ(皇帝の歌)」演奏した、と仰ればほとんど思考停止してそのまま受け入れてしまいます。

実はこの説の発信源は音楽学の大家MT先生だろうと思います。もう40年以上前でしたか、秀吉の御前演奏の曲はジョスカンの皇帝の歌だと最初に仰ったのがMT先生だったような記憶があります。間違っているかもしれませんが・・・

大家であらせらる氏が断言すれば、古楽をやっている人でも鵜呑みにしてしまう人が沢山出て来て、アルバムを作った人もいるようです。でもそれは何が根拠になっているのでしょう?

(つづく)