リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

Trinity College D.1.21

2024年01月08日 15時14分00秒 | 音楽系

昨日の日経新聞綴じ込み日曜版のNikkei The STYLEにアイルランドの「最も美しい本」を収める図書館が紹介されていました。

アイルランドのダブリンにあるトリニティ・カレッジ図書館です。実に美しい図書館です。ここにもっとも美しいとされる「ケルズの書」という中世の写本が収められているそうです。Wikipediaで調べてみましたら「ケルズの書」というのは、8世紀に制作された聖書の写本だそうです。

表紙です。

実はこのトリニティ・カレッジ図書館(Trinity College Library)にはエリザベス朝時代のリュート写本があります。写本の整理番号はTCD MS 408、Ballet Lute Bookと呼ばれています。実は50年以上前の1972年にこの図書館にBallet Lute Bookのマイクロフィルムコピーを注文したことがありました。当時の整理番号はD.1.21です。こんな美しい図書館だったんですねぇ。

その頃はまだ大学生で、大学の図書館にあるマイクロフィルムリーダープリンターで湿式のコピーをせっせとして、それをスクラップブックに貼り付けて冊子にしていました。当時はプリントや製本はとても手間がかかりお金もかかりました。湿式のコピーは1年もしないうちに退色していきます。写真の定着処理をすれば退色しないのですが、面倒なのでほとんど定着をしませんでした。残念ながら現在では読むのがほとんど不可能に近いくらい退色してしまっています。

これは一番ましなページで、まだ読めなくはないですけどね。すっかり乾燥しましたので、退色自体は止まっています。マイクロフィルムはネガではなくポジでもらっていますので、写真焼き付けをすると黒白反転します。

50年前は時間も手間もお金もかかりましたが、21世紀の現代では同図書館のHPから簡単にPDFをダウンロードができます。実際にアクセスしてダウンロードしてみましたが10分もかからずダウンロードが完了し、iPadのForScoreで読めるようになりました。実に便利な時代になったものです。

昔のやり方だと手紙を書いて封筒に入れ宛名を書く(20分くらい)→ポストに投函(往復10分)→返事を待つ(1,2ヶ月)→連絡が来て送金する(郵便局本局まで往復往復30分くらい)→マイクロフィルムが届くのを待つ(1ヶ月ほど)→大学図書館でハードコピー(2時間くらい)→スクラップブックに貼る(1時間くらい)とまぁこのくらいは手間暇がかかっています。でも半世紀前でも楽譜が手に入らないわけではなかったので、江戸時代の蘭学者よりはずっと恵まれていたと言えるでしょう。