さて件のBWV1003は平行調指向か属調指向か。リュートにとってはちょっと残念ですが基本的には属調指向です。第1楽章は2部形式ではないですが12小節目にホ短調のカデンツが出てきます。第2楽章のフーガは、フーガという形式そのものが属調に向かう形式です。第4楽章の前半部はもう典型的な属調指向で半分くらいはホ短調近辺で動いています。
この曲をイ短調に編曲すると頻繁に出てくるホ短調の部分で苦しめられそうです。ただフーガの終りの速いパッセージなんかはそのままで結構弾きやすそうです。速いので大変ではありますが。
一方一音下げてト短調にした場合は、属調はニ短調になりますのでこれはリュートにとってとても都合がよろしい。ただ音が低くなるので弾きにくくなる可能性もあります。音が低ければ弾きやすくなるとは必ずしも言えません。
イ短調かト短調か、どちらが弾きやすく(プレイヤビリティが高く)リュートにとって美しく響くのかは、部分的に見るのではなくトータルで判断する必要があります。そのためには実際に2つのタブを作り弾いてみて比較する必要があります。