院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

女性医師の憂うつ

2006-10-18 06:38:00 | Weblog
 日本の大学生が勉強しないと言われて久しい。遊びやアルバイトにうつつを抜かし、大学はレジャーランドとまで言われている。だが、医学生はものすごく勉強する。医師国家試験が控えているからである。
 
 案外知られていないことだが、医学生に専門はない。医学生はすべての科を勉強する。内科も外科も産婦人科も精神科もすべてである。だから、医学生は膨大な知識をマスターしなくてはならない。本にして積むと、ゆうに1メートルは超えるだろう。

 さらに医学生には実習が課せられている。患者さんに馬鹿にされながら、打聴診、その他の手技を全部覚えなくてはならない。医者になる修行は生半可なものではないのである。

 医学部の6年間を終えて、首尾よく医師国家試験に受かったとしても、難関はまだある。国家試験合格者には、その後2年間の臨床研修が義務付けられている。これも、ほとんどの科を回って研修する。

 この2年間の研修を終えてから、やっと医師は各自の専門科に分かれていく。ストレートで行っても、歳はすでに26歳である。浪人や留年をしていれば、30代もざらである。

 専門科に入ってから、その科の専門医として通用するようになるには、さらに3年はかかる。医者の下積み生活は長いのである。

 私が医学生のころには、女子学生は1割程度だった。それが今や、女子が半数に迫ろうとしている。彼女らは大変である。生物学的に妊娠や出産に最適な時期を、勉強、研修に費やさねばならない。かわいそうである。

 それを承知で医学部に入ったのだろうという論もあろうが、16歳や17歳の高校生にそこまでの将来展望を持てというのは酷である。
 
 医者は過酷な仕事であるから、妊娠すると辞めてしまう女性医師が多い。出産しても子供の世話に追われるから、なかなか現場に復帰できない。
 
 かつて田中角栄内閣の時代に、一県一医大論が唱えられ、医学部が倍増した。しかし、倍増したのは女子学生であった。その女性が医療現現場に出られないのであれば、医学部倍増の意味がない。日本の医療界は、医師供給の面で、もうどうしようもないところに来ている。